青春の夢
お題企画第五弾でございます
「なんで、なんでいっつもこうなんだぁぁぁぁぁ!!」
「うるせー!!」
「すんませんっっ!!!」
皆さんは花に嵐ということわざを知っていますか? 俺――冒頭で叫んでいた者はつい最近まで知りませんでした。 ここは平和な日本。 そこで高校生をやっている津森梟師。 まぁ、漢字が軽くDQNなのでタケルと呼んでください。 話がズレましたが俺はぶっちゃけ言って、ある程度の事は器用にこなせます。 ですが、最後の最後で大ヘマをしでかす大馬鹿野郎です。
「お前ってさぁ、花に嵐ってことわざがよく似合うよな」
「え。 俺花ないよ?」
「そういう意味じゃねぇよ。 良い事には邪魔が入るって意味。 まぁ、お前集中力切れかけてる時に大ヘマしてっから当てはまらないか」
「そんなことわざあるんだぁ……。 ニホンゴムズカシイ」
「この前の授業で出たけど」
「頭抱えないでよ」
そんな俺にそのことわざを教えてくれたのが小学校からの腐れ縁が続く田端義和。 名前に義という漢字が入ってるだけあって律儀な奴。 でも毒舌過ぎてあまり友達はいない。
「頭も抱えたくなるわ。 ま、タケルは集中力さえ切れなければ大丈夫なんじゃね? もしくは集中力がいらないとか?」
「集中力必要ない事ってなんかあんの? つか集中力切れさせられるの割とヨシの影響が「そうだ、お前隣のクラスの智秋気になるって言っただろ」明白に話ずらしたなぁ……。 恋とかしろって言うんじゃないだろうな」
「ご名答」
義和――いつもはヨシと呼んでいる――がドヤ顔をする。 うっわ、腹立つ。
「腹立つとか失礼な。 名案だろ? そこまで長い間集中しなくてもいいし」
「心を読むな心を。 そんな適当な理由でち、智秋さんにアタックできねぇよ」
智秋とはヨシも言った通り隣のクラスにいる智秋八恵の事である。 あまり目立たない子だがとにかく可愛いし綺麗だし優しいしと俺は惚れ込んでいる。
「お前ってホント奥手だよな。 顔真っ赤にして……」
「う、うるせー! だ、大体向こうは俺の事……忘れてるだろうし……」
「自信をなくすな。 もじょもじょ喋るな気色わりぃ」
「お、俺はお前と違って純情なんだよバカァァァ」
「ヨシタケうっせーぞ!」
「繋げて言うなよぉー」
教室で騒いでいるとクラスメイトからの苦情が来る。 俺とヨシがいつもいる事からヨシタケというあだ名が出来てしまって、ヨシも俺もほとほと困っている。 だって、ヨシタケって一人の名前っぽいじゃん。 ヨシは友達こそいないが一部の女子に人気がある。 まぁ、顔は男の俺から見ても整っていて黙っていれば悔しいがかっこいい。 笑いかけられて女子がキャーキャー騒ぐのはもう小学校の時からだ。 喋らなければほんとにいい男だと思う。 そう思っていたが高校に入ってからはその毒舌もいいという奇々怪々な感性を持った女子が多数いて何度か彼女を作っている。 それに比べ俺は……彼女いない歴=年齢のチェリーボーイである。
「とにかく、今度アタックしてみろよ。 覚えられてても忘れられてても!」
普段のヨシとは思えないほど押してくる。 ついこの間まで女なんて面倒だよと遠い目をして作らんほうがいいと吐かした奴のくせに。 だがしかし、その親友の勢いに気圧されて俺は話に乗った。
「……何で俺甘酸っぱい青春聞かされてんの?」
看守、月華の前にはニコニコと笑う青年、話の中でのタケルがいる。
「まぁまぁ、いいじゃないですか。 おっさんの与太話に付き合ってくれたまえよ少年」
『これでこの檻から抜け出せなかったら殺す』
「続き話すよ~」
「もう好きにしてくれ……」
それからというものの、俺はヨシの言う通り、智秋さんの所にちょいちょい出向き話をしていた。
「智秋さんって俺の事覚えてたりする?」
「覚えてますよ。 私のハンカチ木の枝からとってくれましたし、本の場所私が教えたりしましたものね」
少し話していたある日気になっていた事を問いかけると智秋さんはにっこり笑って俺が惚れた時の状況を簡潔に話した。 正直感動した。 もうどこのラブコメだという程のベッタベタの出会いが彼女のハンカチが風で飛ばされ木の枝に引っかかるという事を目撃し俺はヨシを待たせて木に登りハンカチを回収、そして彼女に手渡したのだ。
「そっかぁ」
自分でも分かる程頬が緩み彼女も俺に笑いかけてくれていた、そんないい雰囲気の時。
「タケルー。 ちょっと来ぉー」
いつもいつも、智秋さんといい雰囲気になると現れるヨシに俺は苛立ちを覚えるが、智秋さんに謝り俺はヨシの方へと行く。
「なんだよ」
「いや、大した用じゃないんだが「ならいい雰囲気だったんだから放っといてよ!」はっはっはっ、そして放課後カラオケ行こうぜ」
「ホントに大した用じゃないな! 「まぁまぁ、聞けって。 三人で行こうぜ」は? 誰と誰と誰?」
「俺と、お前と、智秋」
「はぁぁぁ!? おっま馬鹿なの!? お前まで来たら俺勝ち目無いじゃん! 智秋さん完璧お前に行くじゃん!」
「大丈夫だって。 智秋そんな奴じゃないから」
「なんでそんなん分かるんだよ……」
「あれ、言ってなかったか? あいつ俺の従兄妹なんだよ」
は? 突然言われた事実に俺の思考回路は停止した。 アホヅラとか言われてる気がするけどそんなことはどうでもいい。 え、智秋さんと? ヨシが? 従兄妹?? 血縁? え? あの? 優しい? 智秋さんが……。
「嘘だろォォォォォォォォ……」
「おっまえ分かりやすいリアクションだな。 そんなに落胆するなんて」
「だって、おまっ! お前優しさの欠片もない! それなのに智秋さんと!? 血縁! ありえねぇ」
「一気に素に戻るなよ。 失礼な奴だな」
「あれ……? 義和と津森くんって知り合い?」
あんまりに俺が騒いだせいなのかひょこっと俺達の方に来てヨシを見ると意外そうに問いかけてくる。 普通に呼び捨てだァァ……。
「前から話してだだろ? 小学からの幼馴染がこいつ」
「そうだったの。 津森くんこの人面倒でしょ~? 私も従兄妹じゃなければ多分苦手なの」
な、なんですとぉ。 本当のことだったのかヨシ。 まぁ、よく見るとヨシと智秋さんは割と顔の作りが似ている、かもしれない。 まさか従兄妹だとは……。 そしてヨシは俺のことなんかおかまいなしに智秋さんの苦手発言に文句を言い智秋さんは俺の事気にしつつも従兄妹のヨシの相手をする。 なにいちゃいちゃしてんだよぉぉ!!
「あ、放課後三人でカラオケ行かね?」
「私は大丈夫よ。 でも男の子同士の方が面白いんじゃないの?」
「だってさぁータケルー」
「智秋さん行こう」
我に返り俺は智秋さんとヨシと三人でカラオケに行くことになった。
それからは基本的に三人で行動する事が多くなった。 告ろうとは思わない。 学生の間だけはこの状態でいいのかもしれない。 告るのは卒業する時でいい。 俺はそう思っていた。
「付き合ってください」
「はい」
卒業式の日はヨシという名の邪魔は入らず――というか女子にヨシが囲まれていて邪魔できなかった――無事告る事ができ彼女はふんわりと笑って頷いた。 天にも舞い上がる気分だった。 そして人生初の彼女をゲットしたわけだが……。
「タケルー」
「義和だ」
ヨシは変わらず俺と智秋……いや、八恵ちゃんの間に入ってくる。 まぁ、それは別によくはないけど、譲歩しよう。 ヨシは俺にとっても親友だし、幼馴染だし。 八恵ちゃんにとっても同い年の従兄妹だし。 俺達二人――八恵ちゃんと俺――にとってヨシは大切な人間だから。 そうその日が来るまでは……。
無事に成人した俺達は三人で酒を飲んでいた。
「タケルゥ~、愛してる」
「は??」
「ヨシタケマジおいしいです。 ありがとうございます」
酔った時の悪ふざけなのか、ヨシは俺に愛の言葉を呟き抱きついてきた。 あっけにとられている俺の耳に入ってきたのは愛しい彼女の腐った言葉。 いや、八恵は腐女子――つまり男同士の恋愛が好きな女の子――ということは知っていた。 付き合い始めて数ヶ月の時に暴露されたから。 それでも、ヨシのホモ疑惑は驚愕の事実だ。 まぁ、八恵の三次元は無理っていう言葉とは正反対のおいしいという言葉も驚く所だけれども。
「義和は昔っからタケルの事好きだって言ってたわよ?」
何でヨシと同じようにこの子も俺の心読んじゃうの? 俺が酔った勢いかと納得仕掛けた時に投げかけられる言葉に肩を落とす。
「で、今は三人で暮らしてるのさ」
タケルはニッコリと笑って月華を見た。 月華は辟易としていてそうかとか細い声で答えた。 この世界のクリア条件は人生を語ってもらう、だった。
『なんで最近こんなのばっか』
話を聞くだけのクリア条件の多さにげっそりとしながら月華は《牢獄図書館》に戻る。
記録をまとめあげ、願わくば次の《ドリーミー・ケージ》は話を聞く類ではない事を強く思いながら。
図書館を歩く。
=青春の夢 完=
お題:花に嵐
お題配布サイト様:http://99.jpn.org/ag/
お題が活きてないのと、なんか訳わからなくなってしまった。
というか話を聞く流れマジ多すぎてもう^p^
明日は月華くん多めにしたいです
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます
よろしかったら感想などをいただけると嬉しく思います
お疲れ様でした