ハロウィンの夜の夢
またまた一人語りです
今回主人公の月華はそこまで登場しません
友人からのお題「猫だった男の子」で書きました
早いですがハロウィン小説!←
一匹の白猫がある街に居た。 白猫には友人がいた。
友人はいつも一人の女性だった。 女性は人から魔女だと言われ気味悪がられていた。
魔女狩りが行使されてから数百年が経ったが未だに壊滅していないとされていて、魔女はひっそりと暮らすようになった。
魔女と呼ばれていてもただ彼女はただの眼の色が非対称だったのだ。 青と紫の虹彩を持った両の目は何やら見透かすような眼力があった。
それを見て人は落ち着かない気分になりそして彼女の事を魔女だと恐れて彼女を人として見なくそんな一人ぼっちな少女の家に一匹の仔猫が倒れていた。
そんな仔猫に元々一人暮らしだった少女は適切な薬草を仔猫の体に塗り込み付っきりで介抱した。
介抱を初めて5日後仔猫は初めて鳴いた。 それは仔猫が死の淵から帰ってきたことを意味しその開かれた目は少女と同じ、青と紫の両の眼を持っていた。
仔猫は自分を癒した彼女に懐き彼女もまた初めて自分を怖がらない存在、自分を必要としてくれる存在を受け入れた。
そんな日々。 彼女は若くして病に伏せた。 白猫はどうしたらいいのか分からず、彼女の言う薬草を彼女の手元に持ってきて辛そうに体を動かし薬を作る彼女を見る事しかできなかった。
白猫は切に願った。 ―――人間になりたい。 と……。
赤い月の夜、ハロウィンの夜に少し離れた村からは子供の声が聞えていた。 そんな猫の願いをハロウィンの神――といっても悪魔なのだが――は聞き入れたのか白猫は白い髪、白い肌、そして青と紫の眼を持った少年へと姿を変えた。
それに驚きながら喜び猫は急いで彼女の元へと向かい、長い長いハロウィンの夜、彼女に寄り添い彼女に教わりながら薬を作りたどたどしい口振りで沢山話した。
彼女も青白くなった顔、細かったが今では骨と皮しかなくなったその手を動かして少年の話を聞き時折笑ったり泣いたりとしていた。
二人は幸せだった。 だが、ハロウィンの発端となった悪魔は幸せを許しはしない。
彼女が寝た後に元々夜行性である少年の前に悪魔が現れ問うた。
―――猫だったお主を人間などにしたのは私だ。 代償としてお主の大切なモノ……。 魔女の短き命を貰い受ける。
そう言われた猫は必死に悪魔に縋った。 ―――あの人だけは許して、僕がそう望んだのであの人が逝ってしまうのなら僕を連れて行って!
少年がそう叫んでも悪魔は聞き入れずにそのまま彼女の魂と共に悪魔は消えた。 そこでむせび泣くは一人の少年。 ハロウィンの祭りの夜が終わり朝日を迎えてもその姿が猫に戻ることはなくなった。
村はずれに居た魔女。 ある年のハロウィンの夜、魔女が消え魔女と同じ目を持った少年が魔女の家に住んでいた。 彼は化け物と呼ばれ始めた。
―――哀れな猫。 変わらずに無力を続けていたらもう少し生きられたかもなのにな。
月華の冷酷な声が暗い中ジャック・オ・ランタンが光る世界――ハロウィンの夜の《ドリーミー・ケージ》――に響いた。
今回の《ドリーミー・ケージ》のクリア条件は彼と彼女の一生を見守りそして後世に遺す事だった。 メモを取りながら笑う月華の嘲笑が響き夢は覚め月華はいつもの図書館、《牢獄図書館》に戻ってきていて表紙がかぼちゃから作られたジャック・オ・ランタンの本を本棚に戻して司書のいるはずのないカウンターにメモを置き果てしなく多い本――その一つ一つが違う世界でそこには囚人たちが本が檻となって存在する――を見上げて罪深き人間は俺も同じかと笑い次の呼ばれる本を探しに足を動かした。
=ハロウィンの夜の夢 完 =