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坊ちゃんの夢

お題企画第十一弾です




 「毎日毎日……レッスンレッスン。 嫌になるよ」


 「お坊っちゃまの為でございます」


 「僕の為というより、母様達の為じゃないか」


 とある屋敷の一人息子が愚痴る。 それに答えるは執事長である老人。 少年はもっと普通が良かったよとため息を吐く。 今回はそんな世界のお話。


 「ルールは人を殺さない事。 クリア条件は……レッスンに進んで行かせる事、かぁ……。 めんどくさそうだな」


 街の風景は洋風。 だが一人だけ中華系の服を着た少年が頭を押さえていた。 月華(ユェファ)は最近面倒な《ドリーミー・ケージ》に当たるなと思いながら数分前に見たクリア条件を頭の中で巡らせていた。


 「レッスンってこたぁ、いい所の嬢さんか坊ちゃんだろうな……。 この辺でいないか聞いてみるか」


 月華は肩を落として近くにいる人に話を聞いてみることにした。


 「レッスンを嫌がっている人? あぁ……。 グランドール家の坊ちゃんだと思うよ。 執事さんとかがいつも愚痴っているよ」


 「グランドール家。 それはどこにありますかね?」


 「あそこの小高くなってる丘に屋敷が見えるだろう? あそこがグランドール家のお屋敷だよ。 兄ちゃん執事さんに雇われてきたのかい?」


 「まぁ、そんな所ですかね。 ただレッスンに進んで行かせる様にする事と言われただけですので」


 八百屋の店主に問いかけると親切に教えてくれて月華は愛想笑いを浮かべながら頷いて向かってみますと告げ屋敷へと向かった。


 「グランドール家の坊ちゃん……ね。 ガキ相手は面倒そうだ」


 屋敷に続く石畳の道を歩きながらげっそりしている月華だがその足取りは重くなる事はなかった。


 『でも、クソガキを精神的にめっためたに出来るチャンスかもな』


 心の中で恐ろしい事を考えながら楽しみにしている為なのかどうかは分からないが、月華はほくそ笑みながらずんずんと屋敷へ向かっていく。


 ――ビーッ


 玄関に備えられたベルを押すと重低音の音が響いた。 少しして燕尾服を着た初老の男性が顔を覗かせた。


 「どちら様ですか?」


 「坊ちゃんのレッスン嫌いをどうにか直す為にきました。 ユエという者です」


 「これはこれは、あなた様でしたか。 どうぞ、旦那様からお伺いしております。 わたくし、執事長のルッフェンという者で御座います」


 「早速で申し訳ないのですが、坊ちゃんとお話したいのですが」


 「大丈夫で御座います。 ではこちらに」


 執事長、ルッフェンは深々とお辞儀をして月華を通す。 月華は早速坊ちゃんと会う事が出来そうでにやりと笑った。


 「坊ちゃま。 失礼いたします」


 「なんだよ。 レッスンならちゃんと行っただろ。 面倒だったけど」


 「レッスンでは御座いません。 こちら、旦那様のお知り合いのユエ様で御座います。 今回は坊ちゃまのお話相手としていらして頂いたのです」


 「お初にお目にかかります。 坊ちゃん。 ユエと申す者。 旦那から話は聞いている、レッスン嫌がってるってな」


 茶髪の我侭そうな可愛い顔を顰めている坊ちゃんにルッフェンはお辞儀し月華を紹介すると月華も仰々しいお辞儀をしてニヤリと笑った。


 「父様が。 僕の話なんかしてる訳ないじゃないか。 どうせルッフェンから聞いたんだろう?」


 「そんな事はないですよ。 坊ちゃん。 ルッフェンさん、ありがとうございます。 坊ちゃんと二人きりにしてくれませんか?」


 「承知致しました。 何か御用がありましたらお申し付けください」


 そう言い残しルッフェンは部屋を出ていった。


 「あんたは何しに来たんだよ」


 「君のレッスン嫌いを直してやろうと思ってな。 甘えたお坊ちゃんにな」


 二人だけの方が話しやすいだろと笑う月華に坊ちゃんはちょっと警戒心を出す。


 「あ、甘えた坊ちゃんってなんだよ」


 「甘えた坊ちゃん以外の何者でもねぇだろうが。 レッスンなんで嫌なんだよ」


 「みんな、僕の事をグランドール家のお坊ちゃんとしてしか見ていないし、母様も父様も、僕の事……見てくれないんだ。 レッスンで上手く出来ても褒めてくれない。 もっと、ちゃんと、やらないとって。 立派な当主になれないって。 僕は当主になる以外に認められないって言われてるみたいで」


 「そうか、それは辛かったな……。 なぁんて言うと思ったのか? 馬鹿だろお前。 だから甘ったれたガキなんだよ。 当主になる以外認められない? 当主になれば認められるだろうが」


 月華が問いかけると坊ちゃん、ファルディア=グランドールはホロホロと涙を流して吐き出すと月華は最初は優しくだが途中から嫌悪感を出して眉間にシワを寄せて言い放った。


 「だけど! 僕個人じゃないじゃないか!」


 「てめぇより不幸な奴なんかいっぱいいるぜ? 例えば、生きている事自体を後悔するような、生まれた時から自分を持てずに生きていく奴。 あとは、どんなに頑張っても自分の存在を認められない奴。 そんな奴もいんのにお前はまだ当主じゃない自分も見てもらいたいとか()かすのか?」


 「っ…………。 だって……。 悲しいじゃないか。 僕はそこにいるのに……」


 バンッとテーブルを叩きながら怒鳴るファルディアに月華は鼻で笑いながら問いかけるが涙をボロボロ流しながらファルディアは呟く。


 「……じゃあ、お前は何か出来るのか?」


 「え……?」


 「レッスンもろくにやってない。 飯だって着るものだって困った事すらねぇ。 そんなお前に今何が出来るんだ?」


 「な、何って……」


 「何も出来ないんだろ? ただ親に揃えて貰ったモノを使い、気に入らなければ周りを困らせてる。 そんな奴だもんなぁ? 何も出来るわけがない」


 「お、お前だって! 口ばっかじゃないか!」


 「ほう? 口ばっかねぇ。 確かに俺は貴族のうんたらかんたらは分からねぇよ。 だがな、俺は守ってくれる奴なんかいなかった。 それ所か、俺を利用する奴しかいなかった」


 「親は……?」


 「さぁな。 野垂れ死んだか、それとも、子供なんか育てていけないと捨てていったかは分からねぇが俺にはそんな奴はいなかった」


 「……僕は、変われる?」


 「さぁな。 それはお前次第だ。 レッスンをこれまで通りやらずにいるのも。 レッスンを真面目に受けるのも」


 月華はぶっきらぼうに言い放つが顔を上げたファルディアは少し覚悟を決めた顔をしていた。


 「変わるよ。 ユエ。 僕は、ちゃんと当主になって、認められる」


 「あっそ。 じゃあ、俺の仕事は終わりだ」


 ――ペコン


 【クリア】


 坊ちゃんが力強く月華にいうと力を抜いたように肩を落とすと頭上に現れたパネルを見てニヤリと笑った。


 「じゃあな、坊ちゃん」


 「僕は、ファルディアだ!」


 「そうか、ファル。 俺は月華だ忘れろよ」


 月華が手を振るとファルディアはがたんっと立ち上がって怒鳴ると驚いたように笑って消えた。


 「口の悪い。 いい奴だったな」


 ファルディアの言葉は月華に届く事なく部屋の外にいる心配で聞き耳を立てている執事やメイド達の耳に入っていった。








 「あー、やっぱガキ相手は嫌だぜ全く」


 そう呟きながら本を元に戻し、笑いながら記録をまとめあげてカウンターに放り投げる。






 =坊ちゃんの夢 完=


 お題:lesson

 お題配布元:http://99.jpn.org/ag/

なんかちょっといつも通り訳が分からない事に……

いやいつもどおりなんですけどね!?

とまぁ、こんな感じで終わります。

ここまで読んでいただき誠にありがとうございます

よろしかったら感想なんかを頂けれると嬉しく思います

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