バスの夢
お題企画第九弾でございます
「うっわ、標識だらけ」
月華は周りの景色を見てげっそりとした。 本当は標識ではなくバス停だらけなのだが……。 月華はバス停を見た事がない為に標識にしか見えなかった。
――ペコン
いつものように頭上に現れるルールとクリア条件が書かれたパネル。
「えぇっと、ルール、バス停を倒すな。 ばすてい? クリア条件、出口へのバス停を見つけバスに乗る」
月華は読み上げながら首をかしげる。
「ばす? 乗るってことは乗り物……。 乗り物の停る標識って事か?」
推測で正解を導き出し月華は周りのバス停の違いを見比べた。
「……行き先が違うのと……この数字、時間? でもここって時間あんのか?」
そもそも乗り物が通れる道あるか? と月華はこの檻の景色、密集するバス停たちに道がなさそうと思い色々不安要素が出てきた。 だが悩んでいても仕方ないので月華は出口と書かれるバス停を探すことにした。
「これじゃねぇ。 これでもねぇ」
一体なんだってんだよと数時間は経っただろうか、月華はため息をつきながらバス停を蹴り飛ばそうとするがルールの倒すなという言葉を思い出して足を地面に叩きつける。
「あーいらつくっ」
くそっと吐き出してため息をつき月華はまた出口へ行くバス停を探す。 歩けど歩けど変わらない景色に苛立ちながらも根気よく探す。
「牢獄図書館行き……。 これか?」
月華はやっと見つけた。 黒塗りのバス停に白い文字で書かれた自分が戻るべき場所。 でも、出口とは書かれていない。 月華はそのバス停にワイヤーを巻きつけてまた探し始める。 どうしても出口のバス停が見つからなかった時用にワイヤーを弛ませながら歩き始める。
「お兄さんどこ行くの?」
何処からか声が聞こえた。 月華は気のせいかと辺りを見回して人がいない事を確認しまた出口のバス停を探す。
「どこ行きのバスを探しているの?」
「出口だよ」
自分の精神が磨り減っていたからなのか姿の見えない声の主に返すと声の主は笑った。
「お兄さんはもう見つけたよ。 ひっくり返せば出口行きは出るよ」
その糸が巻き付いているバス停をねと笑う声に月華はそうかと頷きワイヤーを手繰り寄せながら戻る。
「怪しまないの? お兄さん」
「怪しんでどうする。 こちとら、バス停バス停で頭が変になりそうなんだよ」
声は困惑したように問いかけるが月華はイライラとした様子で吐き捨てると押し黙った。
「それに、怪しまないかどうか聞くのは嘘をつこうとしてるやつだ。 嘘をついてるやつじゃないと俺は思ってるからな」
押し黙った声に笑いかけながら月華は牢獄図書館行きと書かれたバス停をひっくり返すと地面に埋まっていたもう一つのバス停が現れた。 そこには出口行きと書かれていた。
「よっしゃ。 誰だか知らんがありがとよ」
周りを見ると気持ち悪い程あったバス停がなくなり一台の灰色のバスが遠くから近づいていき、月華の目の前で停車する。 ブシューと音を鳴らしてバスは扉を開け月華はその扉に吸い込まれるように入っていった。
「お兄さん、これからも悪夢を見続けるよ」
その声は月華に届く事なくバスの動く音に消された。
バスの絵がある表紙の灰色の本を拾い上げて月華はまた本棚に戻し、記録し、その紙をカウンターにおいてまた本を探す。
=バスの夢 完=
お題:バス停
お題配布元:http://99.jpn.org/ag/
何が書きたかったんだっ!!
毎日更新とか言っておきながら昨日更新してませんでしたしね!
すいませんっしたぁ!
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます
もしよかったら感想なんかを頂けれると嬉しく思います