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玩具の夢

お題企画第六弾でございます


 見渡す限りのジャンク品。 何処かが壊れた無機物達が積み上がりいくつもの山を作っている。 汚れ綺麗であるはずの人形なども小気味悪い雰囲気を醸し出している。


 「悪趣味な《ドリーミー・ケージ》だな」


 ため息をつきながらそんな小気味悪い《ドリーミー・ケージ》に突然現れたのは看守、月華(ユェファ)である。 元々いた《ドリーミー・ケージ》の記憶は乏しいがその黒を基調としたチャイナ服は変わらず着ている。


 ――ペコン


 軽快な音と共に頭上に出現したパネル。 どこまで悪趣味なのか、パネルはおかっぱ頭の着物を着た少女の人形が持っていた。


 「えぇっと、ルール、この世界の子を傷つけてはならない。 子?? クリア条件、とある悪人を殺す……え」


 月華は呆気にとられる。 そんな月華を見てパネルを持った人形はケタケタと不気味な笑い声を響かせパネルと共に消えた。 最初から最後まで怖い人形だったなと月華はバクバク言っている心臓を抑えて呟いた。


 「さて、とある悪人……とりあえず、子っていうのは……」


 「ここに捨てられた子達の事よ、看守さん」


 疑問を口に出し整理しようとしていると、何処からともなく少女の声が聞こえた。 クスクスと笑っているようで声がやや上ずっているようである。


 「こっちこっち。 お兄さんの右腕の近くよ」


 声の主を探し辺りを見回すとまたしても笑いながら告げる。 声を頼りに見てみるとそこには少女のぬいぐるみが置いてあった。


 「……ぬいぐるみ?」


 「ここはね、玩具の世界なの。 子供達と一緒に遊び子供達に捨てられる運命の人形やぬいぐるみ、玩具のね」


 ぽかーんと呆ける月華にぬいぐるみは説明をする。


 「私は一応案内役よ。 ヒントだけあげるよ、看守のお兄さん」


 月華はその言葉を聞いて了解と辟易しながら少女のぬいぐるみを腹の所を掴み持ち上げる。


 「お兄さん意外と優しく持ってくれるのね」


 「残念ながら俺はガキを乱暴に扱う趣味はねぇんだ」『それに傷付けてはいけない。 それがここのルールだからな』


 本当に驚いたような声を出すぬいぐるみに月華はぶっきらぼうに答えた。 内心ではルールの為と思っていた。 傷つけないというルールの傷は精神面でもありえる可能性もあるのでぬいぐるみを気遣う月華。


 「とある悪人って一体どんな奴なんだ?」


 「んー……私達を捨てた人かな?」


 「一人の物じゃないだろ、この量」


 歩きながら小脇に抱えたぬいぐるみにヒントを求めると曖昧過ぎる答えにえぇ……と見渡しながら言う。 ぬいぐるみはクスクスと笑うだけだった。


 「じゃあ、そうかそうじゃないかで答えてくれ。 この玩具のない道辿れば解決するか?」


 「途中まではね」


 「そうかい」


 ぬいぐるみからのヒントを得て道から外れる為に上を見上げる月華。 ぬいぐるみはそんな月華の行動を不思議に思っていた。


 「少し揺れるぞ」


 そうぬいぐるみに言うと(すそ)が広くなっている(そで)の中からワイヤーフックが飛び出し高く(そび)え立つガラクタの塔にフックをかけ飛び上がった。 ぐらりと揺れる塔だが崩れる感じではなく月華はぬいぐるみに一応動かないでくれよと言った。


 「動きたくても動けないわよ」


 少し拗ねたように声を出すぬいぐるみに月華は笑いながら出来るだけ遠くを見つめ怪しいものはないか探す。


 「見つけた」


 ニタリと笑って月華はワイヤーを伸ばしてガラクタの山ギリギリまで下がり少しずつ揺らしていく。


 「な、何をする気なの!?」


 慌てるぬいぐるみに月華は大丈夫だってと笑って更に揺らせていき90度の高さになり何かがある方向に飛ばされるようにフックを取る。 ガラクタの山を飛び越えて行く月華とぬいぐるみ。 少女の悲鳴が響き渡る。 空は曇天に包まれていて眼下には汚れて黒々とした玩具達。


 スタッ


 「器用なことするわね、看守のお兄さん……」


 やつれたような声を絞り出すぬいぐるみ。 月華は何か――一つだけの建築物――の上に着地した。 余程怖いと思ったのかぬいぐるみは心なしか震えているようにも思えた。


 「玩具を傷付けてはいけないから、道以外は越えていけないなって思ってな。 怖い思いさせて悪かった」


 「もういいよ……」


 「そうか、そしてまたどっちかでいい。 この小屋にいるのか?」


 「その質問は答えを聞いてるじゃない。 どうかしらね、手がかりはあるかもね」


 「それだけ聞けばいいわ」


 ぬいぐるみの言葉を聞いて月華はやや乱暴に扉を開けた。 中は意外と広くなっておりテディベアや、兵隊の形をしたくるみ割り人形で溢れかえっていた。


 「ようやく来たか。 ディア」


 カタカタという音を響かせながら一体のブリキの人形が動き出す。 その声はしわがれていて老人がしゃべっているようだった。 ブリキの人形はただ少女のぬいぐるみを睨みつけディアと呼ぶ。


 「私は何もしてないじゃない」


 「子供ゆえの狂気というものもある。 看守。 その者を殺さぬと出られぬぞ」


 「私は何もしてないってば!! 私はお兄さんにヒントをあげたんだよ!?」


 「では、お主はどちらを殺す? わしか、少女。 どちらかを殺しても良いぞ」


 「何でそんなめんどくさいの……。 とりあえず、まずは、ディアっつったか? この子は確かにヒントをくれた。 そして手がかりはあるという言葉でこの小屋に入った。 そしたらあんたがいた。 あんたは手がかりか? それとも惑わし役か?」


 ブリキの人形とぬいぐるみは言い合い、不意に月華に振るブリキのじいさんに、月華は肩を落としながら整理していき問いかけた。


 「そんな事は聞いておらぬ」


 「……じゃあ悪人は何をしたから殺されなければならないんだ?」


 「その者は玩具を壊して遊んでいたのだ。 ここは壊れた玩具、言うならばガラクタの世界じゃ。 悪人であろう?」


 「お、おう。 ディアは? なんで殺されなければならないと思う?」


 「…………壊れるのは仕方ない。 形あるものは壊れていく。 でも、そのモノ達をガラクタと呼ぶ事は侮辱していると思うから」


 「……はぁ、ルールと条件がむずいな。 まぁ、俺は決まった。 死ね」


 二人の言葉を聞いて月華は少し眉間にシワを寄せて唸るがワイヤーを片方に巻きつけ勢いよく引く。 ワイヤーと金属が擦れる音が響き渡り叫びながらそいつは死んだ。


 「どうして私を殺さなかったの?」


 ペコンとまた不気味なおかっぱ人形とパネルが出てきてクリアと書いてありディアと呼ばれていた少女の人形が問いかけた。


 「勘だよ。 生憎俺は嘘をつきすぎるほどついてきた。 だから嘘の匂いは分かるんだよ。 お嬢さん」


 ニッと笑って月華は消えた。


 「人形は人間の形代をしているから命が入りやすいって事だよ、看守のお兄さん」


 その言葉が聞こえたのかどうかはわからないがぬいぐみは少し笑ったようだった。










 「命ね」


 いつも通り《牢獄図書館(プリズン・ライブラリー)》に戻った月華は優しく笑いながら傍らにあった本を拾い上げ本棚に戻した。






 玩具は何も言わない。 子供が成長するにつれて扱いは雑になっていく。 だがしかし、人の形をしたモノは命を入れやすい。 だから人形などはただのモノとしては見てはいけない。 もしかしたら恨みを買ってしまうかもしれない。








 「ガラクタも侮るなってか?」






 =玩具の夢 完=


 お題:ガラクタ

 お題元サイト様:http://99.jpn.org/ag/

何がしたいのか全くわからない……

とにかく物は大事にしましょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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