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春一つ、やり直せたなら  作者: タナカ


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27/80

悪役は誰かにとって、大切なヒーロー


「………ちょ、ちょっと待ってよ。未来から来た?柊が……死ぬ?」


「…頭が追い付かない……」


支離滅裂な言葉。

でも、それを語る寧々の目は、真剣だった。


信じたくない。だけど、嘘にも聞こえない。


「でも、そうか……。それなら、辻褄は合うのか……?」


「まさか……そんな……」


理解の早いランは、導き出してしまった。

もしも、その“答え”が本当なら――。


寒気が、背中を駆け上がる。

それでも、耳を塞ぐことはできなかった。


「……未来の柊が死ぬ理由、橘さんが関わってるのか?」


「……ええ、そうよ……」


「……マジか」


小さく、呆然とした声が漏れる。


「それなら、柊に嫌われて関わらないようにする……そりゃ、そうするよな……」



すべてが繋がった。

寧々のすべての行動に、一貫した“愛”があった。


好きな人を救うために、自分が嫌われる道を選ぶ。


近くにいたくても、遠くで見守るしかない未来を選び取っていた。



――だけど、柊だったら?


柊が同じ立場だったら、どうするだろうか。


間違いなく、自分で好きな子を救おうとする。


彼女の笑顔がなければ、世界はモノクロになるって知ってるから。

あいつは、この世界を鮮やかにするため、ヒーローになる。


でも俺も、橘さんもそこまで強くない。

だからせめて、強く“見せる”。


そうか。橘寧々のミステリアスさは、その“見せかけ”だったんだ。

夏木歩も同じだ。強すぎる光に焦がれ、それでもなれない自分を知っている。


それでも――。


「……そっか。橘さんって、俺と似てるね」


「え……?」


「強すぎる光に憧れて、その後ろを必死で追いかけてる」


「……でも、届かない。どれだけ走っても、触れられない」


「だから……俺らは、光になれないって思ったんだ。だったらせめて、悪役でいいやって」



「――でもさ。それでもさ、思わねぇ?」



「……俺たちだって、本当は……ヒーローになりてぇんだよ」


ランの声が、熱を帯びる。

胸の奥底に押し込めてきた感情が、今、噴き出した。


「好きな男のために、ヒーローになれよ!!」


寧々の目が、大きく見開かれる。


「……柊を、好きなんだろ?」


「……ええ。好きよ。あなたの比にならないくらいに!」


爆発するような告白だった。

この世界で、ずっと言えなかった。ずっと言いたかった。

それでも言葉にできなかった想いが、今やっと――声になった。


「好きだから……守りたいのよ!!」


震える声に、感情がにじみ出る。


「柊は、守られるような男じゃねぇよ」


「知ってるわよ!! 誰よりも知ってる! 強くて、まっすぐで、バカみたいに優しくて……!!

 でも……だからこそ!! あの人に、守られるだけの存在にはなっちゃいけないの!!」


柊がどう死ぬのかなんて聞いていない。

知る必要もなかった。


それより――。


「前の世界とか関係ねぇよ!」


ランの声が、まるで雷鳴のように響いた。


「だったら、今ここで、俺たちがヒーローになって、あいつを守ればいいだけだろ!!」



「……私たちで……?」



ようやく顔を上げた寧々が、震える瞳でランを見る。


「この世界の柊も……橘さんがいないとダメなんだよ」


「だから――俺らで守ってやるんだよ」


その言葉は、寧々の中に光を灯した。

長い暗闇の中に、一筋の朝が差し込んだようだった。


「……あなたが言うと、本当に……ずるいくらいに心強いわ」


「私、ずっと意地になってた。正しいって思い込んだ一つの道に、しがみついてたのかもしれない」


「――分かったわ。私、守愛を守る。あなたと一緒に」


そして、笑った。

涙のあとに咲いたその笑顔は、誰よりも眩しかった。



「……私を助けて、ヒーロー」



拳を差し出すその姿は、もう迷っていなかった。



「……ああ。ちょうど、ヒーローになりたかったんだ」



ランも、力強く拳を突き出した。


そして二人の拳がぶつかり合った瞬間、

未来を変える約束が、確かにそこに結ばれた。



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