意地でも
「あ~~楽しかった~~!!」
班活動を終え、風呂に向かう途中で涼香たちの笑い声が響いてきた。
「涼香たちは何してたんだ?」
「水鉄砲!!」
「うわやってそー」
「でしょ!!」
「柊は?」
「森林伐採」
「え?なんて?」
「 森林伐採 」
「「にあわね~~~~」」
うるせえなギャルども。
「ふるやっちはなにしたの~?」
「僕はアクセサリー作りだね」
「え、かわいいんですけど」
いやそれな。かわいいなこいつ。
「てか、柊君。橘さんもアクセサリー作りにいたよ」
「え?マジ? めちゃかわじゃん」
「「きも」」
お前らも今古谷に可愛いとかいってただろうが!!
「でも寧々が涼香と別行動でアクセサリー作りか」
「いや、一人じゃなかったよ?」
「そっか、クラスに友達位いるか」
「え?あの柊君と仲良い……夏木君?といたよ」
――ドカッ。
突然の浮気報告に、俺は膝から崩れ落ちてしまった。
「え、え、どうしたの柊君」
「……あれだろ。たまたま班が一緒とか、そういう……感じの……」
「ち、近い。うーん、でもなんかそんな感じでもなかったよ」
「違う? 違くないよな涼香? な、涼香?」
「なんでスズにきくの」
呆れ顔の涼香をよそに、俺は思わず古谷に詰め寄る。
「二人で作ってたから、多分たまたまとかではないと思う」
「……あ~ふるやっち言っちゃった。柊には隠そうと思ってたのに」
おい、涼香知ってたのかよ。やってらんねえよ。
「てか、柊。付き合ってないのに、束縛とかきもいからやめた方がいいよ」
えげつないくらい尖った言葉で切りつけきたのは、涼香と水鉄砲をしていた篠田である。
「そ、束縛じゃねーし。ただの、確認っていうか……」
「”確認”ねぇ。
あの夏木君?爽やかだし、同クラだし、好きになっちゃうんじゃない?」
「…大丈夫、それはない。と思う」
「「なんで?」」
「なんでもだ」
……あいつは俺を煽ってるだけだ。
ランを知らない者から見れば、まるで俺と女を取り合っているように見えるかもしれない。
でもあいつの初恋は、高校二年生だ。
しかも俺と好きなタイプが真逆。
それがちょっと同じ一緒に長をしただけで、運命を捻じ曲げてまで恋をする男ではない、はずだ。
……少なくとも、そう信じたい。
でも、あいつは俺の中学時代のすべてを知っている。
チャラくてどうしようもなかった過去を、なまなましく。
もし、寧々が一気にそれを知らされたら――俺は、ただのクソ野郎に成り下がる。
前回は、時間をかけて少しずつ免疫をつけてもらった。
でも今回は、そんな余裕はない。
だから。
「涼香、絶対に自由時間、寧々といてくれ」
「ちょ、ちょっと近いし怖いわ」
「でもできるだけ、がんばってみるよ」
決して束縛じゃない。
これは、危機管理だ。
ランと寧々を二人きりにさせるわけにはいかない。絶対に。
俺は静かに、けれど強く、心に誓った。
あいつと寧々を引き離す。
意地でも。




