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春一つ、やり直せたなら  作者: タナカ


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13/80

気持ちの雨雲は晴れない


じめじめとした梅雨も、そろそろ終わり。

生徒たちの気持ちを沈ませていた定期テストも、ようやく最終日。



「終わった~~!!!!」


「おわったaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」


「オワタ」


阿鼻叫喚。悲鳴も歓喜も入り混じるこの瞬間は、大人になれば味わえない。


“テストさえ頑張ればいい”──そんな学生の時にしかない贅沢を、彼らはまだ知らない。


「まあ、100点かと言われたら無理だけどね」


「ん?柊君何か言った?」


「いや、独り言だ。 古谷はテストどうだった?」


「まあまあだね、対策したところは予想通りって感じだったよ。柊君は?」


「俺も同じくだな、あそこにいる奴は死んでそうだけど」


指さした先にいたのは、テスト用紙よりも白い顔をしている涼香がいた。


「おーい涼香、生きているか?」


「……………………」


「だめだ聞こえていない、おもしろすぎる」


少し席が遠いため声をかけてみたが、聞こえていないのか、死んだかの二択だろう。


「柊君、今日長会議だよね?」


「ああそうだ。 あの状態の涼香連れてな」


「それは大変だね…… キャンプファイヤーはどう?できそう?」


「そうだなー、ぶっちゃけ難しい。

 でも任せろ。”ありえない”なんて”ありえない”からな」


「あはは柊君が言うと本当にそんな気する」


古谷お前ってやつは………。


「そんないい奴の古谷に頼みたいことがある」


「なに?僕ができること?」



「お前にしかできない」



「き、緊張するね」



「   ―――――――――――――――。    」



「そんなことでいいの?」


「ああもし嫌じゃなきゃやってくれるか?」


「もちろんだよ!!僕も好きだし」


「助かる、これは保険になるけど成功したら、大逆転打になる」


「責任重大だ………」


そうした男二人の秘密の会話をしていたら、わかばちゃんが教室に入ってきた。


「おいお前ら、テストが終わったからって浮かれるなよ」


「いや、浮かれてんの先生じゃん」


サングラス、短パン。Tシャツに斜めがけバック。今にも遊びに行ける大学生みたいな恰好をしていた。


「うるせえ。私は今から野外学習の下見だ。しっかりと先に遊んでくるからな」


「「「  おい   」」」


生徒から総ツッコミを受け、満足そうにサングラスを外して、終礼の挨拶をした。


――

「にらみつけても、点数は上がらないぞ」


「うるさい。スズは今、念じているんだ」


涼香と長会議に行くために、話しかけたのに返ってきたのはアホな回答だった。


「次な。次頑張ろうな」


「やめて!!まだ悪い点って決まってない!!」


「諦めろ。うちのテストに選択問題なんて優しい問題は少ない」


「分からないよ!テスト中の私のこのゴットハンドがスラスラと答えを書いている可能性もあるよ!」


「そうか、じゃ良かったな。よし行くぞ」


「ひどーーーーーいいいいいいいいいいいいい」


何故か少し不貞腐れた涼香と長会議がある教室に入った。


前と同じ要領で席に座り、会議が始まるのを待っている間、クラス間でのかかわり方を観察をする。


これが何かに使えるといったわけではないが、人間観察をすることは、関係はじめたてでは大事だと思っている。


なぜなら、好きな話題、されたらいやな話題は人によって違うからだ。


これから意見を通す際に自分の事を知っている人とそうでない人では受け取り方が微妙に違うからだ。



「てか柊、本気でキャンプファイヤーする気なの?」


暇を持て余した涼香が、唐突に問いかけてきた。


「ああ、本気だ。どんな形でも行おうと思ってる」


「好きな人に嫌われても??」



「―――なんだそれ 何か聞いたのか?」


「ううん、ちょっと聞いた噂で。

 柊は寧々のしてほしくない事をしようとしてるの?」


何故か今日はぐいぐいと聞いてくるな


「まてまて、俺はあの子の嫌がることはしていない………はずだ」


「寧々はキャンプファイヤーあまりしたくないみたいだよ」


「そう、だな。でも俺は、絶対にする」


「なんで?クラスのため?」



「       俺のためだ     」


「え……?」


クラスのためとか好きな女のためとか、かっこいいことを言うのではないかと踏んでいた涼香は思っていない回答が返ってきて拍子抜けした声を出した。


「寧々と仲がいい涼香には、嫌な奴、変な奴だと思うかもしれないけど、変える気はない」


「俺の目的のためにキャンプファイヤーは必要なんだ」



「…そっか。分かった。

 私も嫌なこと言ってごめんね。

 少し勘違いしてた」


「勘違い?」


「女の子にだらしないチャラチャラした人だと思ってたから。

 自分の芯もっててかっくいいじゃん」


「そんなこと思ってたのかよ……でもありがと」


――

柊と涼香が話し込んでいたのを遠目で見ていたある男は、少しハラハラしていた。



「言ってくれてたんだね、橘さん」


「ええ。あなたが『少しずつ蝕め』っていうから」


「すっかり悪役サイドだね、俺たち」


「  ―――まあ悪役はとても似合うわよ私には  」


「え?」


悲しそうにペアを見つめながらぼそっと言う橘は、今にも枯れ落ちてしまいそうな花だとランは思った。



――

「では、長会議を始める」


だらだら話していたら定刻になっていたみたいだ。


この会議は野外学習前最後になる為、大事な会議になる。


「今日は全体の流れを確認し、各クラスとの認識の齟齬をなくす最後の会議になる」

「―――――――――――――――――」

「―――――――――――――」

「――――――――――――――――――」


「では、自由時間は夜八時から十時までの二時間。十時までに自室に戻れるよう各自行動をするようクラ   スメイトに共有をお願いします」


「長は男子と女子が全員自室に戻っているか確認ののち、担任の先生に報告後戻ること。十時半までに終わらすことを目途に動くようお願いします」


「なにか質問のある者はいるか?」


恒例の質問タイムになった為、いの一番に確認事項を確かめることにした。


「はい1組の柊です。自由時間の範囲は、このアスレッチックの場所以外の広場なら外で集まっていいいということでしょうか?」


「そうですね。外に出れる場所は広場のみで、後は室内の体育館のような場所も貸し出しております。

 室内のほうが集まれるスペースが多いのは、なるべく外に出ないよう誘導したいためです」


「危険だからですか?」


「そうですね。広場は街灯がある為、見晴らしがいいですが、それ以外は暗いためあまり推奨したくないです」


「承知しました。そのようにクラスメイトに共有いたします」


質問したのは一人くらいだったため、そのまま二日目の流れと帰りの流れの説明に移った。


「では、これで全体の会議を終了させようと思います。事故の無い様お願いいたします」



――

「よし話しかけに行くぞ」

会議が終わってぞろぞろと帰りだす中、涼香を連れて向かった先は園田のところだ。


「え?帰らないの」


「ちょっと仲良くなる作戦だ」


「すず、寧々と帰る約束してるんだけど…」


「ちょっとだから、大丈夫。はいいくぞ」


そういって無理やり連れてく


「急にごめんね。園田さん、結構クラスの仲がいいって聞いたけど、何か工夫してるの?」


「え?柊君? ……う、うん結構仲いいとは思うけど特別なことは……」


「そうなんだ、よく涼香が「園田さんはクラスメイトをまとめるのがうまい!」って言ってるから、何か 意識してるのかと思って」


「ちょ ちょっと柊、恥ずいからやめて」


少し大げさに言ってるため、恥ずかしさと申し訳なさで俺に対する叩きが強い。


「そ、そうなんだ。涼香ちゃんがそんなこといってくれてるんだ……うれしい。」


「かおりん、柊は変な奴だけど良いやつだからそんな緊張しなくていいよ」


「おい、」

次は俺が涼香をたたく番になる。



「一組は自由時間、外の広場で集まろうと思ってるんだけど、五組の子たちもどうかな?」


「自由時間か……私だけじゃ決めれないからクラスメイトに提案してみるね!!」


「ほんとか、ありがとう。せっかく集まるんだし、持ち込みで盛り上がれる道具をもっていかない?」


「道具?トランプとか?」


「そうだな、大勢で楽しめるものにするつもりだから、俺が考えとくよ」


「いいね、すごく楽しそう!!それも提案してみる」


「じゃ他のクラスも誘えるだけ誘うつもりだから、四組をお願いしてもいいかな?」


「うん!任せて!」


「じゃまた連絡して、他は任せて」


とりあえず五組とのコネクションを作ることができたため、後は1クラスくらいこちら側に引き寄せれたら、もうこっちものだな。


「柊~~終わった?帰っていい?」


「ああいいぞ、ただ一つ頼む」


「なーにー?」


「寧々に『キャンプファイヤーは諦めた』って言っといてくれ」


「ほう?  分かった!言っとくね。」


「あと、自由時間に広場に来れたら来てほしいとも伝えてくれ」


「分かった!!柊、寧々仲良し作戦だね!」


「最高の作戦名だな」


「でしょ、じゃまたね!!」


「またな」



――

その光景を、親友と一緒に帰るために待っていた女の子は冷たい目で見ていた。


「ねえ、夏木君」


「私さ、柊君は周りを取り込もうとしているんじゃないかと思うんだよね」


「そうだね、あいつが自分から行く女子は、だいたい打算だ」


「だよね。じゃあ………私たちがしないといけない事って一つだよね」


「ああ、一つだ」


「「     ――蝕むしかない      」」


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