表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春一つ、やり直せたなら  作者: タナカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/80

親友との決別


「嘘だろ…嫌いって…………。今回はまだ、そんなしゃべってもいないのに………」


サッカー部の練習が始まり、ランニングで体を温めていたときだった。

先ほどのこと――橘寧々の思惑が、ランから伝えられた。


俺を“長”から降ろすために、キャンプファイヤーを潰そうとしている。

その目的が「嫌いだから」。それを聞いた瞬間、心臓を直接殴られたような衝撃が走った。


「正直、俺は決めかねてるんだよな。橘さんが言うように、お前一人の案が“学年の案”になるのは、おもしろくない。俺が関わってたら話は別だが……。


 でも――友達のことを“嫌い”って言う女に協力する気にもなれねぇ」




「………そうか…………寧々が、俺のことが嫌いなのか」


「聞いてたか? 橘さんはお前の案を、本気でつぶそうとしてるんだぞ。どうすんだよ?」


「……案かよ。そんなの、どうでもいいだろ。問題はそこじゃないんだ」


「おい?」


「……俺が“長”を降りたら、寧々に嫌われなくて済むかもしれない」


「……はあ?」


ランが動いた。

勢いよく俺の胸ぐらを掴み、顔を寄せる。


呆然自失の俺はされるがままだ。


「ふざけんなよ、お前」


「なんだよ…………ラン。」


「お前、女に”嫌い”って言われただけで、自分がしようとしてること辞めようとしてんのか?」


「…………それの何が悪いんだよ」


「は? 曲げんのかよ、自分を! 女の言葉一つで!」



「   ——好きな女だぞ!!     」


柊の声が割れる。怒鳴ったわけでも、叫んだわけでもない。

でも、魂の奥から絞り出されたような声だった。



「俺の知ってる柊守愛は、そんなやつじゃなかった!」

「嫌いを好きに変えられるやつだった!」

「自分のやりたいことを貫いて、相手の心をまるごと動かしちまう、そういうバカだったろ!!」



ランの叫びが、真っすぐ俺の心臓を撃った。



気づけば、グラウンドの真ん中で睨み合っていた。


「それでも…………それでも嫌われたくねぇんだよ。もう…」


ランの手が離れ、俺はそのまま突き飛ばされた。



「……しょーもねぇ男だな、お前」



冷たい声。まるで興味を失ったオモチャを見るようだった。


「しょーもない女に嫌われて、しょーもないお前には、お似合いだわ」


そう吐き捨てて背を向けた、ランの背中に――



「おい……!」


「寧々を……“しょーもない女”って言うな」


「語んなよってお前。まだ出会って数週間だろ? 自惚れんなよ」


確かにまだ出会って数週間だ。

でも、それがなんだっていうんだ。



「   この気持ちに、時間なんて関係ねえんだよ   」



今回とか前回とかどうでもいい。俺は、あの一目惚れから全部賭けてるんだ。


人生、丸ごと賭けるって言ってる男が、時間ごときを気にしてる場合じゃないんだよ。



ランの背中にゾワッと鳥肌が立つ。


ついさっきまで、女々しくて頼りなかった柊は、どこにもいなかった。


瞳には火が灯り、全身から立ち上るような“覚悟”が立ち上がっていた。


こっちを見る柊は、俺の知っている柊だと思った。



「あ?口だけではなんでもいえんだろ。嫌いって言われてすぐ諦めるお前に何が出来んだ」


煽る。


「どうせ”長になるのも俺の意志じゃありませーん”とか思ってんだろ?」


更に煽る。


「そんな意志も熱意も軽いお前が、”気持ち”とか語ってんじゃねーよ!!」


とどめを刺す。



「うるせーな!!」


グランドに響く。


「お前だけは許さない。寧々を馬鹿にするだけじゃなく、俺の気持ちまで踏みにじりやがって」


そして――胸を張って叫んだ。


「やってやるよ!嫌われようが関係ねぇ。俺は”長”をする。つまりだ。

キャンプファイヤーをする!

止めたきゃ止めてみろ!」


空気がピリッと震える。


「嫌われても、最後に好かれたら俺の勝ちだ」


その言葉に、ランの口元がわずかに緩んだ。



ああ――戻ってきた。

俺が倒したいと思っていた“本物の柊”が、ここにいる。



「いいね。 じゃ、俺は橘寧々とチームになって、お前を”長”の座から引きずり降ろすからよろしく」


そう言って、ランは背を向けた。


アップで並んで走っていた俺たちは、バラバラになり、会話もなく、黙々とボールを追い始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ