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6:ずっと好きだったんじゃないの?

 とある日の午後。

 魔道書を読み漁って力尽きた私は、気晴らしをしようと図書館から離れて王城内を散歩していた。


 シュゼットが学園に来てから周囲の興味は彼女に移ってしまったので、今は廊下を歩いていてもお声がかかることは殆どない。


 前作ヒロインなんてそんなもんよね。私にとってはその方が気が楽だけど。

 

 渡り廊下にさしかかった時、中庭の東屋で殿下とセシリアを見かけた。遠くからでも仲睦まじさが分かる。幸せそうで羨ましい。


 私なんてここ最近完全なる推し不足だというのに……


「いいなぁ(セシリアは)」

「何がいいんだ?」

「え……? うわっ!!」


 いつの間にか隣にカイルがいた。


「カイル!? あんた何で1人なの、メインズさんは――」

「あー、今聖女研修で宮殿に行ってるからその辺巡回してた」

「そうなんだ……」

「で、何がいいって?」

「別に、な、何でもないわよ!」

「ふーん……」


 暫く続く沈黙。な、何? 怖いんだけど。


「――なぁ、殿下のことはもういいのか?」


 沈黙を破る第一声がそれ!?


「は? いいに決まってるでしょ。私はセシリアを友達だと思ってるし命の恩人に対して今更どうこうなんて考えてないから」

「命の恩人?」

「あ――っ、こっちの話! それよりあんたこそどうなのよ、セシリアのこと……ずっと好きだったんじゃないの?」

「俺はセシリアが幸せならそれでいいんだよ。元々気持ちの整理はついてたしな」

「そう……なの?」

「何だ、気になるのか?」

「べ、別に!」


 こんな風に話したの久しぶりかも。もう少しこの時間が続けばいいのに。でも現実はそんなに甘くない。


「なあ、ユウナ。俺――」

「え……?」


「カイル様ー……きゃああああっ!」


 私とカイルの間にシュゼットが転がり込んでくる。そう、割って入ってではなくリアルに。この設定、ちょっとドジっ子が過ぎるんじゃないか?


 呆れ顔のカイルがシュゼットを助け起こしている。素直で明るいシュゼットと面倒見の良いカイル。端から見ると凄くお似合いの2人。


 あ、またモヤモヤしてきた。


「研修は終わったのか?」

「はい。宮殿の入り口で殿下の側近の方にお会いして。執務室まで来て欲しいと伝言を受けたので、私、カイル様を探しに来たんです」

「そうか、悪かったな」


 モヤモヤを超えて胸が苦しくなってきた。思わず2人に背を向けてしまう。


「ユウナ? どうした――」

「カイル様。早く行かないと間に合いませんよ。あ、ユウナ様も途中までご一緒しませんか?」


 背中越しに聞くシュゼットの声。口調は丁寧なのにやけに冷たく聞こえる。


「私、もう少し散歩してから戻るから。2人共急いだ方がいいんじゃない?」

「……分かった。じゃあまたな、ユウナ」

「うん」


 振り返り、シュゼットに腕を引かれて遠ざかるカイルを見て、モヤモヤの原因が分かった。

 ――私、カイルのことが好きなんだ。


 胸の奥がチクッと痛む音がした。

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