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5:新ヒロイン、動く

 嫌な予感は当たるもので……


 数日後。シュゼットの案内兼護衛役としてカイルが任命された。本来なら陛下直属の騎士団から専属の護衛が付く筈だったんだけど……


『陛下、私の護衛にはカイル様を付けていただけませんか?』

『うーむ……カーライルはまだ学生の身。メインズ嬢の身の安全を守るためにも騎士団から人選したいのだが』

『カイル様がいいんです! 今後の展開もあるし……お願いします!!』

『うーむむ……』


 シュゼットがどうしてもカイルがいいと懇願、彼女の力を解明したい王族側が半ば折れる形で決まった。


 まあ、同じ学生なら校内でも違和感ないし結果オーライかなー、とセシリアに翻弄されたあの陛下なら思ってそう。


 それからシュゼットとカイルはいつも一緒……護衛だから当然なんだけど。


『2人の出会いイベント? 学園内だったわよ。偶然廊下でぶつかってカイルがシュゼットを助けるっていうありがちなものだけど』


 セシリアに聞いてみたらやっぱり転入初日のあれがカイルとシュゼットの出会いイベントだった。


 え、偶然……か? 私にはわざわざ廊下に出て行って全力で体当たりしたように見えたけど。


 今のところカイルの様子に変化はない。でもシュゼットの好意がカイルに向いているのは一目瞭然だった。  


 カイルを護衛に付けてからのシュゼットは、他のメインキャラクターそっちのけでカイルにべったり。あらゆる方面から彼の好感度を上げにかかっている。


 いや、これ絶対ルート開けようとしてるでしょ! っていうのが丸わかり。


 シュゼットは今や無双状態なので、多少の我が儘は許容範囲内、むしろ彼女の振る舞いを好意的に見ている人が殆ど。


 そしてシュゼットがカイル狙いだと分かってから、私の中ではある変化が起こっていた。



※※※※※



 講義終了後。

 机に突っ伏していると隣の席からセシリアに声をかけられた。


「ちょっとユウナ、あなた大丈夫なの?」

「うん……何かこの数日ずっとモヤモヤしてて。疲れが溜まってるのかも」


 セシリアが私だけに聞こえるようにそっと耳打ちする。


『カイルのことなんでしょ?』

『へ……?』

『ごめんなさい、アラン殿下が無茶な任務を押しつけるから……』


 殿下をチラ見してウチの子がごめんなさいポーズのセシリア。その隣に座っている殿下がバツの悪そうな顔をしている。


『やめてよセシリア。これは殿下の所為じゃないでしょ、王命なんだから』

『え? あ、ええ……そうだったわね』


 何か歯切れの悪いセシリア。彼女のフォローの甲斐あって、私はようやく殿下から警戒されなくなってきた。


 ―もう絶対迷惑をかけません! 助けてくれてありがとうございました!!―


 セシリアで見切れている殿下に心の中で合掌する。


 そういえばセシリアと殿下は同じクラスなのに、シュゼット至上主義の空気に影響されていない。いつも通りだ。もしかしたら元ヒロイン効果で私に近しい人には影響がないのかも……


 そんなことを考えながら何となく廊下側に目を向けると、カイルの姿が見えた。私に気づき「よぉ」と口パクで言っているような……え、これ私も何か返した方がいいやつ?


 頑張って手を振ろうとした直後、カイルに駆け寄るシュゼットを確認、慌ててその手を引っ込めた。


「カイル様、お待たせしました」

「おう、じゃあ行くか」

「はい!」


 私に目配せをし、シュゼットと一緒に歩いて行くカイル。


 っていうか、何でいちいち腕を組む!!!?


 シュゼットは至る所で躓いたり転んだりするので見かねたカイルが毎回助けてるんだけど、最近は腕を組むスタイルが定着していて……モヤモヤする。


 カイルがシュゼットの護衛に付いてから、私とカイルの会話は激減した。私への監視も継続中だから毎日の様子伺いはあっても、ほぼ顔を合わすだけでまともに話は出来ていない。


 そんな状態も私のモヤモヤに拍車をかけていた。

 


※※※※※



「ユウナ」


 学園内の階段でカイルに声をかけられた。いつも通り隣にはシュゼットがくっ付いている。


「これから殿下のところに定期報告なんだけど、途中まで一緒に行くか?」

「ユウナ様、私もご一緒したいので是非!」


 と言いつつシュゼットの目は笑っていない。これ絶対「ついて来ないでよ!」って言ってる……


 新旧ヒロイン同士、同族嫌悪なのかどうも私とシュゼットの相性は悪かった。


 ふと2人の姿が目につく。シュゼットとカイルは腕を組んだ状態、だけどカイルがそれを嫌がっている様子はない。長身のカイルと小柄なシュゼット、身長差もばっちり。

 

 あ、またモヤモヤして来た。早くここから離れたい。


「……いい、行かない」

「は? 何でだよ」

「メインズさんの定期報告なんだから私なんかに構ってないで早く行きなさいよ。じゃあね」 


 それだけ言ってその場から離れた。静かに笑みを漏らすシュゼットの横でカイルがぼそっと呟く。


「何だよ、あいつ……」

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