53 クライスタルの大滝へ!
しばらく翔んでいるとゴブリンの大群が出てきた。
1戦交えるわけでもなく迎合されている。
供物のように果物が並んで置かれる。
ローレライはお面を少し外し、巨峰を皮ごと食べた。
その後、何かを大柄なゴブリンに言うと、右に曲がり、一直線に進む。
湯気が上がっている。温泉のようだ。
ローレライはスーツやお面を全て脱ぐと、温泉に入っていった。
涼子がローレライを通して見ている、お湯に映るその姿は童顔で、目が大きく、美しかった。バキバキの筋肉にも驚く。
何語かはわからないが、後からきたゴブリンと会話している。
風呂から上がり、青い清拭布で水気を取ると、黒いズボンに黒色のシャツとアーガイルチェックのケープに着替えた。お面をつけた。
体1つで、テイアを巡回しているように思える。しかし、違った。ルシュヘルと出会ったのだ。
「天狗様お元気ですか?」
「ぼちぼちやってるよ。もう少しで、吸血鬼の国が出来るところだ」
「それは楽しみです」
「君には感謝をしている。クライスタルのすぐ側の大滝は枯らしてはいけないよ。知り合いがそこに来る目印になるからね」
「はい、仰せつかりました通り行動いたします。では」
「君は壮健だね。またね」
ローレライはルシュヘルに別れを告げる。そして岩山へと戻り、岩穴に入っていった。何時間もそこで瞑想をしているようだった
涼子は目を開けた。
「あたし、行かないと。クライスタルの大滝はどこなんだ? そこにローレライはいる」
「わたくしが案内しますわ。ですが、ローカ様も来なくてはなりませんわね」
「それなら赤石にたなたんを任せるか」
涼子は目を閉じて、ローカにテレパシーを送る。
『ローカ、赤石に預けて今すぐクライスタルの大滝にこい』
『俺の記憶見たのか?』
『天狗の方の記憶を見た』
『誰だかわかったのか?』
『ローレライ・スターリングシルバーだ』
『それは本当か?』
『赤石にたなたんを任せて来い』
『今リコヨーテのどこにいる?』
『城の中だ。先に大滝に行ってるから。あんたはあたしの血を受けた仲間と一緒にこいよ』
『了解!』
『あんたさ、あんなことがあったんなら言えよな』
『涼子に、何かあったらと思って』
『連れてこいと言っただけで、何も殺すとはいってないだろ』
『うーん。んだけどー』
『このバカ、あんまり遅いと許さないからな』
『なるはやで行くよ』
ローカの声を聞き、涼子は安堵の息を漏らす。
「喧嘩しないでくださいよ」
「2人は仲いいですわね」
「ある意味な!」
涼子はテレパシーをケシーとネニュファールに共有しているようだった。
「さっさと、行くぞ」
「九条先生大丈夫ですかね?」
「あの雨に触れなかったから大丈夫だよ」
「九条先生、出してもいいですか?」
「ああ、その代わりにケシーを箱の中に隠しておくか。切り札として」
「切り札には程遠いですってば、ボクそんな力ない」
「出します、えい」
宝箱から光がでてきて、封印していた九条が出てきた。
「先生、どこか痛みはないですか?」
「バッチグーだ」
「古いですね」
「我にツッコむとはお主は痛い目に合わされたそうだな?」
「嘘です嘘です、かっこいいです」
ケシーは必死で取り繕う。
「ケシー、カエルになれ」
「分かりましたよ。きららちゃん、これお願いします」
ケシーはきららに銀のナイフを渡すと、風を吹かせて小さなカエルの姿に変わった。手乗りカエルだ。小さな宝箱の中に入っていく。
きららは箱の中に銀のナイフを一緒にしまった。
「今度こそ行くぞ」
「おー!」
「ネニュファールさんお願いします」
「九条さん、お久しぶりですね」
「積もる話は後だ」
「それではある曲を弾きます」
ネニュファールは中庭に到達するとそう言った。
「もしかして」
「はい、ジャズで、”Moanin’”ですわ」
「どこに行くんだ?」
「弾いてからのお楽しみですわ」
ネニュファールは中庭の赤い膜で囲われた大樹に入っていった。そして全員が膜の中に入っていく。
「どうする? 連弾する?」
「しましょう」
「「ウォレスト」」
涼子のピアノと九条のトロンボーンが出てきた。
「ウォレスト」
きららは椅子だけを出した。
「行くぞ、せーの」
♪
ジャズ特有のスイングを肌で感じる。
気持ちいい演奏だった。
紫色の濁流が大樹にできた。
「我が先に入る」
九条が一番に入っていった。
涼子も続く。
「ここは?」
クライスタルにかなり近いところに出てきた。30メートルほど先に検問所があった。
「実はフェルニカ兵から聞き出した、魔法曲なんだ」
九条が小さな声で話す。
「最近わかったってことか」
「ローカが来る前に行くか?」
「そうだな、そうするか」
「ささ、皆さんこちらですわ」
ネニュファールはフェレットのアクセサリーのついたヘアゴムで髪を斜めに結ぶ。
そこから歩いて5分ほど、大きな滝が見えてきた。
「ローリ様、逃げも隠れもいたしませんわ。ローリ様も姿を現してください!」
「その声はネニュファールじゃないか、いけない子だね。僕の記憶を見たのだろう? お仕置きが必要のようだね」
大滝の中から黒いオーラのようなものに包まれた少年が出てきた。着けているお面は天狗だ。
「待ってくれ。あんたが用があるのはあたし、ローカティスの恋人の岬浦涼子。記憶もあたしが見たんだぞ」
「はっはっは、ローカティスの恋人がいよいよきたか。そうか、君がローカティスの。匂いでわかるよ、美味そうだね。こんなに美味そうな匂いを放っているのに先の雨で取殺されないなんて運がいい」
「やはり、雨を降らせたのはあんたか。勘違いをしているがあたしの運は5段階のチャートで言う2だ。たくさんの動物と昆虫に襲われたんだぞ!」
「顔が割れているなら仕方ない。パース」
ローレライは箱の中にお面を入れる。カッと光り、非常に大きな、だるまほどの願い石ができた。顔は童顔でただ、目の下に傷跡があった。
「あなた本当にローリ様? お止めくださいませ」
「ネニュファール、か。君も世界の吸血鬼の仲間のはずだ、欲望を解き放て。出来るだろう。君は僕と吸血鬼の社会の創設者となるんだ」
「わたくしはお慕い申しておりますわ。ウォレスト」
ネニュファールはニッケルハルパを出した。
「おい、どうするつもりなんだ」
「願い石、テイアに吸血鬼を飢餓状態にさせる雨を振らせてくれたまえ」
ローレライは金の願い石にキスをする。
「九条さん、危ない」
「問題ない、パース」
九条の頭上に大きな箱が出てきた。茶色と赤色の縞々の箱だ。
うおおおおおおおお!
滝の中から吸血鬼達が現れる。最後に出てきたのはサラスだった。黒い柔道着にロングヘアーなのは変わらない。
「猪口才な」
九条が咆哮した時、ネニュファールはすでにローレライに銃口を向けていた。
ドン! ドン! ドン!
3発ともローレライの肩に当たった。
「ネニュファール? 吸血鬼なのに何故好きに動ける?」
ローレライは半月の力を使い、体を治している。
「これで終わりです」
ネニュファールは銃弾を装填する。
「サセルカ!」
サラスの斧を投げる攻撃でネニュファールの肩に斧が突き刺さった。
「きゃああああ」
「ジユウニ、ウゴケルモノ、クッテイイ」
サラスはネニュファールに近づいてくる。
「やめてえええ」
きららは宝箱をサラスにぶつけた。
「ナンダ?」
サラスは宝箱に興味を持った。開けた瞬間、銀色に光り、ケシーが出てきた。
ケシーはナイフをサラスの首元に突き刺した。血が溢れる。
ローレライはケシーに近づき、思い切りアッパーをした。
「ケシー!」
「サラスは人なんだ、傷は治らない。ケシー君、無事だったら君をBG6にしてあげるね」




