47 涼子の為の日!
次の日。
この日は早く起きてあるものを作った。
パーン!
教室のドアを開けた瞬間、クラッカーが鳴った。
「「「ハッピバースデーテューユーハッピバースデーテューユー、ハッピバースデー、ディア涼子ー、ハッピバースデーテューユー!」」」
「あ、ありがと。朝から賑やかだな」
ローカ、龍海、勇、まゆら、紗奈が歌う。
「「「涼子誕生日おめでとう」」」
「皆からのプレゼント、紙袋の中に入れといた!」
ローカは涼子に大きな紙袋を渡す。
「変なものじゃないだろうな」
「またまた、そんな事言って、嬉しいくせに」
「特にあんたのは要注意だからな、ぬいぐるみにカメラとか仕掛けそうだぞ?」
「まあひどい、そんな事俺すると思う? この顔を見てくれ! そんな事しないぞ!」
ローカは唇を噛んで涼子を見る。
「怪しさマックスだぞ? 今ので、怪しさの値、カンストしたぞ」
「どの辺りが怪しいんだよ。こんなにイケメンなのに」
「あんたさあ……、いや、もういいや。とりあえずありがとう、皆」
「「「どういたしまして」」」
「昨日はホットケーキタワー作られて大変だったんだよ、写真見る?」
「見たい」とまゆら。
「ほら」
「やば」
「えげつないな」
ローカとまゆらは素直に驚いている。
「水臭いな、呼んでくれれば食べ行ったのに」と勇はポツリとつぶやいた。
「あ。確かにな、今度あったら呼ぶぞ」
「うん」
「ローカ、うんじゃねえよ」
キンコンカンコーン
朝のチャイムが鳴った。
「おはようございます、今日の欠席は無しと、それでは毎日ノートを集めてください。皆さん中だるみしないように」
恒例のノートを集めると、担任はさっさと出ていった。
時間が過ぎていき、お昼休みになった。
「あんた、いつも購買でおにぎりとかパンとか買ってるよな?」
「んえ? そうだけど」
「お弁当、ローカの分を作ってきたから、どこかで食べようぜ」
「不味くなければいいよ」
「ひっどーい、そんな言い方ないよ。涼子が一生懸命作ってきたっていうのに!」
まゆらが話に入ってくる。
「絶対うまいから、大丈夫だ!」
「とか言ってるやつ、自己流で味付けしてそう」
「あ、卵は食べれないんだよな?」
「うん」
「うんじゃねえよ。行こうぜ」
ローカは人さらいにあったかのように引っ張られていく。
ついたのは家庭科室。
「はいお弁当」
「んね、ありがとう」
ローカは白いお弁当を開けた。
1段目には唐揚げ、レタス、赤ウインナー、ブロッコリー、鮭などが入っていて、2段目はわかめご飯が入っている。お弁当特有の匂いがした。
「美味しそうな匂いだな」
「うまそうだろ」
「「いただきます」」
涼子は自分で作ったお弁当を食べる。
「味見してないけど、まあまあだな」
「めちゃくちゃ美味い!」
ローカはがつがつと食う。
2人はすぐに食べ終わった。
「「ご馳走様でした」」
2人はお米1つも残さず完食した。
「今日、涼子の家行ってもいい?」
「断る。きららちゃんが来るし、遊びは禁止なんだよ」
「きららちゃんはいいのになんで俺はだめなんだ?」
「きららちゃんはケシーに会うついでにピアノの練習を一緒にするんだ」
「ほーん」
「まあ、あんたは学校で話せるしいいだろ?」
「いいけどさ、修行頑張れよ」
「あんたに言われなくてもやるからな」
会話が途切れると、涼子は立ち上がり窓辺に近寄る。窓の外を見る。
「おりゃ!」
ローカは足音を立てずに涼子に近づくと、バックハグをする。
「わわ、ばか、やめろって」
「誕生日、おめでと」
チュ!
頬から体が熱くなるのがわかる涼子。頬を触る。
「く、口にしろや! このボケ!」
「んえ? やだよ」
「一体いつまでこの掛け合いを続けるんだよ」
「んね、そろそろ戻ろう!」
「……そうだな」
涼子は激昂状態から冷静になった。
がたん。
室内の入口の方から物音がした。
たったった。
音の主は走って逃げていく。
「のぞきか?」
「いけない感じになると期待してみてたのかな」
「なんで、学校でそんな事するんだよ。普通、度胸はあってもそんな事しないぞ」
涼子とローカは会話しながら、教室に入った。
「今日から昼休みに少しずつ、文化祭の準備するよ。ドーナツは知り合いの人と一緒に買うから、売上金は皆で平等に分けるから。そのつもりで。買い物係、看板係、風船装飾係、バイトで働いている子は接客係」
龍海が指示を出す。
「名前はどうする?」
「吸血鬼ドーナツでいいんじゃね?」
そう提案したのは、勇。
「俺しか要素ないけどな。あとまずそう」
「いいんだよ。決定! 吸血鬼ドーナツ!」
ゴン!
涼子はローカに頭突きする。
「いってえ」
「いいね、吸血鬼ドーナツ」
キンコンカンコーン
龍海がしゃっべているのとチャイムが被さった。
しばらく時が経ち、学校が終わると、今日は赤石のノアが迎えに来ていた。
「学校の前で待つのやめてくれるか?」
涼子は車に入るなり、赤石に注目した。しかし、それにはあえて触れずに言った。
「すみません、逃げられないようにと取り決めが行われてまして」
赤石はパーティー用の帽子を被って、付け髭をつけている。
「なんだよ、それ。きららちゃんの迎え、絵空が行ったのか?」
「はい、禁止事項を伝えるのに適切かと言ってました」
「大丈夫かな?」
「無口なだけでいい男ですよ。大丈夫です」
「あいつが帰ってくるまでは、家でくつろげるな。ラッキーなことだ」
涼子は幸せを噛み締めて笑った。
「宿題を終わらせるべきだと思いますよ」
「そうだな」
しばらく車で走って家までついた。
パーン!
クラッカーの音がする。
「「お嬢様(涼子さん)、誕生日おめでとうございます」」
たなたんとケシーは明るく出迎えてくれた。
「ありがたいけど、デジャヴュなんだが」
「前にもあったんですか?」
「いや、学校でな。まあいいや。あたし宿題やるから入ってこないで」
「待ってください、誕プレです」
ケシーは大きな袋の包みを涼子に持たせる。
「これは私からです」
たなたんは小さい包みを手渡した。
「私もこれを。こっちは絵空からです」
赤石は2つの小さな包みを涼子によこした。
「皆、ありがとう」
涼子は部屋に入ると、まずケシーの大きな包みを開けた。
カエルのワンポイントのブランケットだ。
他は10分間の砂時計、青いグラス、ハンカチ、入浴剤、ネックレス、お菓子などだ。砂時計以外はクローゼットの中に一旦隠しておいた。
「勉強、勉強っと」
涼子は自主学習のノートと数学の教科書を取り出した。公式を書いて、どんどん当てはめて解いていく。時々、わからない応用問題があり、赤石に聞いていた。また、呼び鈴を鳴らした。
「おう、赤石、この問題の公式がわからないんだけど」
涼子は、鼻メガネをつけた赤石に突っ込まずに聞く。
「ここはこの公式ですね。応用です、頑張ってください」
赤石もいつもと変わりなく教えてきた。
「ありがとう、下がっていいぞ」
「いいえ、ではでは」
◇
それから約2時間後。
こんこん。
誰かが部屋をノックする。
「お嬢様、きらら様がご来宅です」
赤石の声だ。
「あたしの部屋に通してくれ」
「はい」
「こんにちは!」
「こちらでお嬢様がお待ちです」
こんこん。
「どうぞ」
「こんにちは、涼子さん」
「赤石、ケシーは?」
「ここにいます!」
赤石はケシーの肩を掴んで現れる。
また、ケシーはタキシードに身を包んでいる。
「きららちゃん、その、久しぶりです」
ケシーはドアから半身を出して話す。
「ケシー! こんな広いお家に住めて、良かったね」
「ボクはきららちゃんの家のほうが安心ですけど」
「どういう意味だよ」
「お嬢様方、ケーキをお持ちしました」
星型のサングラスをかけているたなたんは優しくもてなしてくれている。フルーツケーキを持ってきた。
「ケシー入るんだったら入ってくれるか?」
「は、はい」
「今日、なんかあるんですか? 皆、浮かれた格好してますけど」
「いやいや、なんでもないぜ?」
「そうですよ、別に涼子さんの誕生日だからって浮かれてませんって」
「ケシー!」
「え? 今日誕生日なんですか?」
「ふう……そうだ、あたしの誕生日だ」
「おめでとうございます、チョコのお菓子持ってきたんで良ければ!」
「うわーい、ありがとうございます」
ケシーは無遠慮にコーンフレークをチョコで固めたお菓子を食べていく。
「あんた、さっきのハニカミはどうした?」
「吸血鬼って基本チョコが好きなんですよ」
「鉄分を含んでいるからね。それでさ、きららちゃんは一体どう演奏の練習しているの?」
「見て、聴いて、弾いての連続です。そろそろ練習始めますか?」
「おう! あたしも聴いてインプットして、ピアノにアウトプットしている感じだぜ」
◇
防音室にて。
「ウォレスト」
アップライトピアノが出てきた。部屋が狭くなると同時に涼子は興奮してきた。
「よしまずは10分間、適当に弾いてから合わせるぞ」
涼子は近くにあった砂時計を逆さにする。
「適当ってどんなですか?」
「音出し、指が回るようにしたいから適当に基礎練習でもなんでも。教本は棚の中、好きに使ってくれていいぞ」
♪
♪
涼子は適当に基礎練習の曲を弾いたり、クラシックの教本の練習曲を弾いたりする。
きららはハッピーバースデーの変奏曲を弾く。
涼子は気恥ずかしかった。




