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45 血の契約!

涼子は家に着くと、防音室でピアノに向かい、好き放題弾いた。実を言うとジャズを弾くのは3年くらいブランクがあいている。

(悔しい、まるで、弾けない。いや先ずは言われたとおりにクラシックとして弾こう)

涼子は棚からファイルを出し、中にある楽譜を持ち出す。

楽譜を見ながら、規則的に弾いていく。

(何か、違う。聴いたほうがいいな)

CDを楽譜の裏から剥がすと、ラジカセに入れて、スイッチを押した。

部屋が暗くなっているのにもかかわらず夢中でピアノを聴いた。

(そうだ、これこそジャズだ)


「お嬢様、お食事の時間ですよ」


赤石が防音室に入ってきた。


「赤石が芽川千夏を殺したのか?」

「千夏さん、死んでいたんですね。いえ、私は手を下してません」

「本当か?」

「はい、誓って嘘じゃありません」

「誰が殺したんだろう?」

「ボクも何もしてないですよ!」


赤石の後ろから小さなケシーが顔を出す。


「うーん、とりあえず飯にするか」

「今日のご飯、ボクが作りました。そばめしです」

「そばめし? 食べたことがないな」

「きららちゃんの家でしょっちゅう作らせてもらったんです。熟練してます」

「ふうん、楽しみだな」

「お嬢様、しばらくの間、遊びが禁止になりそうですよ」

「え? 何故?」

「絵空は毎日学校帰り出待ちするようですよ。だから、必然的に遊ぶ時間はなくなります、後、2日に1度は指導もするって言ってました」

「嫌なんだけど」

「絵空を怒らせたら、完膚なきまで吸血されますって」


赤石はニコニコ笑いながら喋る。

それに涼子は不信感を抱く。


「あんたも、昔は愛想ない方だったけどな」

「そうしたら、絵空も無愛想じゃなくなるんじゃないですかね?」

「ご飯が冷めてしまいますよ! 涼子さん!」


ケシーの呼ぶ声でダイニングに向かう涼子。


「「いただきます」」


涼子は席に着くなり、手を合わせる。

もちもちした焼きそばのような米のような、ともかく美味しいご飯だった。


「「ご馳走様でした」」

「お嬢様、プロの吸血鬼ハンターになるには血の契約をしなくてはなりません」


ゾッとするような声だった。

いつの間にか、絵空が横にいた。


「血の契約?」

「この巻物に、一滴血をたらすのです」


古そうな巻物をテーブルに広げた。中心が円状に白くなっていて、黒い怪しげな文字列が気になった。


「これでプロになれるのか?」

「いえ。まだまだ半人前のハンターですが、この契約のお陰で吸血鬼ハンターの人名簿に記載されます。あと、能力値が分かります」

「ふうん」


涼子はコンパクトナイフをポケットから出すと指先を切る。

中央に血を垂らすと金色に文字が光りだした。

ボン!

ドラムを叩くような音がして静まり返る。


「どれどれ?」


能力値は筋力、体力、精神力、体格、敏捷性、度胸、知性、幸運の8項目でレーダーチャートによって表されている。筋力、体力、精神力は5段階の3でそこそこ、体格、敏捷性は1であまりにも低い。度胸は5で抜群にいい。知性も5段階の4、それとは逆に幸運は2だ。


「一滴の血で何がわかるっつうんだ」


涼子は納得いく様子もなく巻物をつかもうとする。

しかし、ケシーが巻物を先取する。


「涼子さん落ち着いて! 破ったら絶対怒られますよ」

「鈍臭くて、運のないお嬢様。この巻物は破ることはできません。結果も真っ白に戻るので、私達以外の人には見られる心配はないです」

「燃やすぞ?」

「大事な巻物なので、後でリコヨーテに返しておきます」


絵空はケシーから巻物を受け取る。そして、丸めた。


「あんたってジャズ吹けるし、フェルニカ兵じゃないのか」

「生まれはリコヨーテで育ちはフェルニカですが、成人してからはリコヨーテのお城で使えています」

「複雑だな」


涼子の目は悲しそうに絵空を見た。


「明日も学校終わったら迎えにいくので、毎日ピアノ最低3時間は練習してください、それと2日に1度は指導するので明日は俺の琴線に触れるように頑張ってください」

「赤石のほうが捗るんだが」

「先生は俺です」

「あんたも嫌々、指導に来たんだろう?」

「いえ。そんな感情は持ち合わせておりません、生活のリズムは多少狂いますが、なんとも感じておりません、こういうお仕事なのですし」

「仕事だから逆らえないんだろ」

「いえ。俺の中にあるリミッターは当の昔から乾ききってますので、逃げ出したり、やめたりしたら吸血、という罰も提示しました上でのことです」

「ああ言えばこういう! もう、ケシーからもなんか言ってやって」

「いいなー、ボクも先生ほしいなー」

「そうじゃねえよ! もういい、今日はもう風呂入って寝る! ケシーそろそろ一緒に風呂入ろう?」

「ボクにセクハラするのやめてもらっていいですか。ローカさんに悲しまれますよ」

「マジな話なわけないだろ」

「お先お風呂どうぞ!」

「一番風呂だ。しゃあ!」


涼子はカラスの行水のごとく、さっさと風呂に入り、すぐに上がる。お気に入りのパジャマに着替えた。指先に絆創膏を貼る。宿題をこなす。2時間後、歯を磨いた後、眠りについた。




土日は自主練習してたので特に何も言われず、次の月曜日。


「おはよぅ」

「おはよう、まゆら!」


涼子は下足箱の所でまゆらと仲良く挨拶をした。


「今日から、文化祭の準備だよー。吹部でも練習があるし大変だよー」

「あたしも今、ピアノの修行が大変でさー」

「そうなんだー、ピアノはコンクールでも受けるの?」

「あ、いや、そうじゃないんだけど、吸血鬼ハンターたる縁でな」

「あ、そうなんだ! 吸血鬼ハンターになったんだね。すごいじゃん!」

「ありがと」


2人は教室に入る。


「まあな、段階を踏んでプロになりてえんだ、いや、なる」

「応援するー」


まゆらはそれだけ言うと、女子の集まっている方に行ってしまった。


「おはよー、涼子」

「おう、おはよ、ローカ」


涼子は振り向きざまに眠たそうにしているローカを見た。小さな声で話す。

朝のショートホームルームまでまだ時間はまだ早い。


「どうしたんだ? クマができてるが?」

「昨日、ババアに怒られてさ」

「なんで?」

「吸血鬼ハンター試験に行ったことがバレてて、ちょっと野暮用でリコヨーテに行ったら、2、3時間説教食らったんだよ」

「あたしのことなにか言ってた?」

「精進なさいとだけ言ってたね」

「ふうん」


涼子は教科書を机に入れているとポケットの中のケータイが鳴った。

知らない番号からだったが、臆することもなく電話に出る。


『もしもし?』

『おはようございます、涼子さん』

『その声はきららちゃんか?』

『そうです! きららです』

『あー、悪いんだけど、最近修行が始まって、会えそうもない。いや、ケシーに会いに来る分はいいんだけど、長い時間は滞在してもらいたくないんだ』

『そうですか、私も今、修行をしていて長居はできないのですが、両親に少しの時間ならケシーに会いに行ってもいいって言われました』

『もしかしてジャズの、Moanin’って曲?』

『そうです! なんで知ってるんですか?』

『あたしも今その曲を練習してるんだ! じゃあ、一緒に練習しないか?』

『私が弾くとクラシック調になってしまうんですよ』

『あたしもそのことで悩んでいるんだ。今日はまずいから明日来れるか? そういや家までどうやって来るんだ?』

『行き先を教えてくれたら、電車で行きます』

『いいや、こっちから迎えにいかせるぞ。居場所を明日までにメールしてくれ』

『わかりました、明日の夕方の19時に着いて、20時に帰る算段でいいですか?』

『おっけい! じゃあメールよろしくな』


電話が切れると、早速住所の書かれたメールが送られてきた。猫の絵文字がキラキラと光る。


『ありがと、遠いな。そっちに17時頃に着くからな。明日、楽しみにしてるよ!』と涼子は返信する。


キンコンカンコーン


チャイムが鳴った。

担任が入ってくる。


「欠席はゼロと、はいそれじゃあ、毎日ノートを集めて」


自習学習のノート集めると担任は退出した。


「涼子。移動教室行こうよ」

「おう」


涼子は勇と次の授業に備えて、移動した。

授業は涼子にとって退屈そのものであった。

実のところ、涼子は科学の実験も先を見越して、教科書をみて、空想の中で行っていて、結果もわかっていた。


退屈しのぎの1日が終わった。



絵空は赤いミニクーパーで迎えに来ていた。


「絵空、実は〜〜〜〜」


涼子は明日のきららの訪問のことを話した。


「いいですよ、その代わり、明日の20時から3時間きっちり練習してください。基礎練習からですよ? 1時間基礎練習したら残りの2時間の内1時間はクラシックを弾き、もう1時間はジャズを練習してください」

「わかった、とりあえず今日は基礎を固める練習をする」

「指示は俺が出します」

「やなやつー」

「ごほん!」


絵空は涼子の言葉に咳払いをする。

運転席がいつもと逆だと目があってしまう。

(ゴツい身体で小さなミニクーパーに乗るのは対比していてある意味すごいな)


「もう着きますよ」

「おー、車で帰る意味あんのかな」

「逃亡防止に役立ってます」

「あーそうか、今日の指導よろしく頼む」

「おまかせを」


鍵を開けて家の中に入ると無音の光景が広がっている。


「絵空、たなたんと赤石は?」

「調理場にいるのでは?」

「今帰ったぞー」

「お帰りなさいませ、お嬢様」


たなたんの消え入りそうな声が帰ってきた。


「どうしたんだ、なんか元気なくないか?」


涼子は調理場に足を運んだ。


「うおお! 何やってるんだよ、ケシー!」


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