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44 修行の時間!

「明日から学校かー」

「そうだな、ところで時の手帳でロサ君の様子を見てくれるか?」

「多分悪いことは何もしてないと思うけど。ニーベルング」


ローカはロウソクの光をあてにして俊敏に手帳を書き込む。


青い炎がローカの周りに浮き出る。

ローカは目をつむる。


1分後、炎は消える。


「ハズレ! 特に悪いことはしてないよ、今本読んでる」

「次はルシュヘルさんだ」


ローカは再び、時の手帳に書きこみ、青い炎を出す。まるでガスコンロのようだ。


「ルシュヘルおじさんもパトロールしているよ」


炎がなくなりローカはポツリと告げた。


「そうだ、ミャウカちゃんに今度、ナンバー1から司令受ける時に透視能力で見てもらえばローカが入る意味無くないか?」

「ミャウカは慕っているようだよ、ナンバー1を。だから、それは無茶さ。それに変なこと言ってモグラがバレたら大変だ」

「ミャウカちゃんとロサ君の吸血中毒をなくすべきだったのか?」

「そんな事したら俺がババアに怒られるよ。それはできない。じゃあ、俺帰るね」

「じゃあな」

「ローカさん、気をつけて帰ってください」

「ありがとう、ケシー」




次の日。

ある人にとっては憂鬱、またある人にとっては楽しみな、学校のリスタートだ。


「芽川先生が亡くなった」


そうつぶやいたのは担任だった。

教室は静まり返る。


「はい、それでは毎日のノートを回収してください」


先生がいなくなった。

「焼身自殺だったらしい」と七靖が触れまわっている。


涼子は思う。

(やはり死んでいたのか。BGの人たちに殺されたか?)


「涼子、大丈夫?」


勇が涼子に声をかける。

当の涼子は変な汗が吹き出していた。

(自分の不注意で千夏を死に追いやった)

そう思うと震えが止まらなかった。


「おう」


涼子はかろうじてそれだけ言った。

(赤石が殺ったのか? どうなんだろう)


始業式が行われるので皆、移動した。


キンコンカンコーン


チャイムがなって、静まり返る。涼子は断頭台に送られていくような感じがだった。


校長の長い話しを聞く。

芽川千夏の哀悼の意を表して黙祷した。

その後、しばらくボーとしていると、話は終わり、教室に帰ることになった。


キンコンカンコーン

休み時間中に過呼吸になりながら悟られないように寝たふりをしていると、チャイムが時間を知らせた。


「きりーつ、きょーうつけ、れーい」

「「「お願いしますー」」」


英語の授業が始まった。


「夏休みの宿題から集めます」


授業は効率よく進められている。

ボキィ!

涼子のシャーペンの先がすぐに折れる。


1日が長かった。


「もしよかったら、一緒に帰らない?」


勇から声がかかった涼子は承諾して、帰る準備をした。


「あれ? あの外車って?」


クラスメートの何人かが窓の外を見やる。

涼子も加わった。


「涼子の家じゃない?」

「ほんとだ? 何しにきたんだろう?」


涼子はその外車――ミニクーパーから降りてこちらの教室に手を振る、絵空に怒りを覚える。


「何か用があるのかな? 涼子は車で帰るよね。ごめんね、私、まゆらと帰るね」


そういう勇に涼子は手も足も出せずにいた。

涼子は赤いリュックを背負って、教室をでて、学校を出た。急いで絵空の元に向かった。


「こんな目立って、何しに来たんだよ?」

「お嬢様、修行のお時間です」

「は? もしかして、リコヨーテから来た先生って」

「はい、坂城絵空です」

「マジかよ」


涼子はショックを受ける。

氷のような目で涼子を見る絵空。


「それで、修行って何するんだ?」

「私は猛獣の類の半月でしたが薬のお陰で、半月化も月影化もしなくなりました」

「会話のキャッチボールができてないぞ?」

「修行場へ参りましょう」

「おい、いきなり、何を言い出すんだ。何をするのか言えよ」

「そして人々を恐れおののかせてきた私でも、血の乾きに耐えられませんでした。師範代になり、音を上げる子分ができたら欲望のままに生きようと思ってます。もしも修行の段階でお嬢様が逃げ出したり、倒されたりした場合は吸血する予定です」


絵空は駐車場に車を止めた。


「ああ、わかった、教えられないんだな。今の段階では」

「修行の内容ですが、1番目に行うのは、音感テストです。ついてきてください」


車を降りると、2人は倉庫に入っていった。

中には段ボール箱や大きな大黒柱や跳び箱などがあり、狭く感じた。


「音感なら自信があるぞ」

「ウォレスト」


アルトサックスが出てきた。弾く人が大柄なので小さく見える。


「今から弾きますので答えてください」


♪、♪、♪


「ド、ソ、シャープのファ、か?」


♪〜♪


「ファ、ソ、ラ、ファ、ドー、ラ、ソ、ド、ソ」

「絶対音感を持ってますね?」

「こんな簡単な問題で修行になるのか、否、ならん! さて、さっさと帰ってゲームでもしよう」

「待ってください。レベル2です。武楽器を出してください」

「? ウォレスト」


涼子は家で弾いている黒いグランドピアノを出した。


「セッションしましょう。皆さん」

「「あいよ!」」


段ボール箱や跳び箱の中から人が出てきた。


「誰?」

「私の生徒たちです」

「絵空ってすごい人だったんだな」

「私も皆さんも音楽を志すものです」

「この娘、高校生? セッション難しそうだな」


カバのような顔をした顔の男性が段ボール箱から出ながら言う。


「あたしはジャズでもなんでもどんとこいと言う者だぞ」

「何弾く?」

「Bobby Timmons作曲の”Moanin'”は?」

「いいね! 挨拶代わりにチューニングしよう。ウォレスト」


先程のカバのような顔の男性はコントラバスを出す。


「ちょっとこれ出られないんですけど!」


まだ若そうなヨーロッパ系の少年が喚く。カバの正反対の整った顔立ちだ。跳び箱から出られないようだ。


「1段ずつ外せばいいだろ!」

「あ。そっか!」


その場の全員がしばらくその様子を眺めていたが、思い思いがチューニングし始めた。


「えへへ。おまたせしました。ウォレスト」


少年はドラムのセットを出した。スネアドラムを軽く叩いてボルトで調整している。

音は止んだ。

涼子は目線をベーシストへ向けて、許可をもらい、音を出し始めた。

(この曲はアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーの来日の際弾かれた曲で、ピアニストがボビー・シモンズなのだ。暗譜に少しの不安が残るが、やるしかない)

1つの音が新しく2つ、3つと増えていく。そして重なり合う。ピアノ、アルトサックス、コントラバス、ドラムだ。

いきなり、フリューゲルホルンを吹く赤石が小屋に入ってきた。


「っ! 赤石!」


涼子がびっくりしていると、いきなり演奏が終わった。どうやら涼子の手がピアノから離れているからだ。


「それはお嬢様、粗忽者ですよ」

「いや、赤石、え?」

「お嬢様の修行のための礎になりに来ました。お嬢様のためならえんやこら!」

「あんた、良いやつになったな!」

「時に、お嬢様、しばらくジャズをサボっていましたね。まるで火の吐かない火竜、そしてジャズならぬクラシック音楽のようでしたよ?」

「ジャズは弾けるはずなんだ、だけどな、だけど、頭が追いつかない、手もだ。どうなってるんだ」

「お嬢様、しばらくの間、この曲を完璧に弾きこなした後、ジャズに変換しましょう」


絵空が言った後、涼子は悔し涙を飲む。


「お嬢様ならできますよ」

「できる、早く帰って練習しよう! 今の気持ちを忘れないうちに」

「では、送りますよ」


赤石が微笑む。


「つーか、なんで赤石がいるんだよ」

「買い物のついでに呼ばれたもので。お嬢様の好きな胡麻煎餅も買っておりますのであしからず」

「あたしの好きな煎餅のことばらすな! もう、絵空、ピアノ頑張るから、次はいつ合わせる?」

「1か月後です。次は違うメンツです」

「ジャズはレベルを上げるのか? 例えば速くなったりとか」

「あのジャズが弾けたら、クラシックに入ります」

「はあーーあ(深いため息)、じゃあどのクラシック曲かを教えてくれ」


涼子は噛み合わない会話にため息をつく。


「過程を飛ばしてはなりません」

「わかったけど、1か月後楽しみにしとけよ! 泡拭いて倒れるなよ! 覚悟しとけよ! 行くぞ赤石」


涼子はピアノを消して立ち上がり、そして絵空に食ってかかるように述べると、小屋の扉を軽く開ける。赤石のノアの後部座席に乗り込んだ。


「赤石、あんた、わかってて絵空を入れたな」

「はて? 何のことでしょう?」


赤石は隠しきれない笑みをする。


「だから、先生だって知ってて」

「生活圏内に先生がいるというのは素敵でしょう」

「全く、良い迷惑だ。家にいても休まらんぞ? クビにはできそうもないし。愛想が良ければ良いものの、無愛想だしな」

「1人の性格と割り切ってください」

「あたしは良いけど、ケシーが怖がるんじゃねえのか?」

「ケシーさんは温厚だから大丈夫ですよ」


赤石の声を聞きながら、涼子はふてくされる。

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