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43 夏休みの終わりに!

ホテルに着くと涼子はノートを取り出した。

1? 2ミャウカ 3ロサ 4ルシュヘル 5故人につき空き番号 6故人につき空き番号 7赤石

メールが1件、きららからだった。


『こんばんわ。夜遅くにすみません。愛川きららです。ケシーのことなんですが、今までお世話してあげてありがとうございました。そのついでで申し訳ないのですが、私がひとり暮らしできる高校生になるまで見ていてくれませんか? 不躾で申し訳ありませんがよろしくお願いします。今度、お家に伺いますね。その時はお電話します。おやすみなさい。返信は不要です』


涼子はスーツケースに荷物を詰めながら物思いにふける。現在の時刻は21時。

(サラスはBGなのだろうか?)

チープな音がして電話がかかってきた。

ローカからだ。

サラスのことを聞いたが、BGなのかは不明だ。

更に、電話は続く。


『6日から学校だけど、宿題やった?』

『やってなっしんぐ』

『明後日うちに来いよ。明日、引っ越すんだ。もちろん、岬浦の邸宅に』

『んえ? おばけとかでない?』

『あんた、失礼なこと言うな。怖いなら来るなよ。ケシーもきららちゃんがひとり暮らしを許されるまで邸宅に住むんだからな』

『そっか。じゃあ行こうかな』

『赤石が迎えに行くから。何時にする?』

『11時』

『お昼食べること前提かよ。厚かましいな』

『お前が作るわけじゃないんだろ』

『ちなみに使用人はいるけど、母はいないぞ』

『それってラブ・ハプニングを期待してる?』

『なわけ無いだろ! ケシーもいるしな』

『じゃあ5日の11時な、よろぴく〜』

『じゃな、おやすみ』


涼子は電話を勢いよく切った。赤くなった顔を仰いだ。そして、毎日の生活のルーティーンをこなして、眠った。




次の日は忙しかった。大きなスーツケースなどをトラックに乗せて運んだ。

岬浦邸はピカピカになっていたので、涼子はほっと息をついた。

父、康介の書斎も一応見てみたが本がそのまま残っていて、後は綺麗にハウスクリーニングがされていた。

次に防音室を見る。ピアノなどに血痕はなく、あの頃のままだ。

SEKAI NO OWARIの”Fight Music”を弾いてみる。

涼子の大好きな曲の1つだ。

ピアノは調律されていて美しい音色を奏でる。

ピアノではない、電子音が鳴った。ケータイが着信を教えてくれていた。

涼子はケータイを操作する。

(知らない番号? ローカではないな? きららちゃんか?)


『もしもし』

『川田だ』

『ああ、川田さん。吸血鬼ハンター試験合格しました』

『おめでとう』

『それで今なにか出来ることはありますか?』

『先ずは吸血鬼と戦えうるかどうかだ。おそらくそのための訓練が必要だろう?』

(ゴールド)のカードなんで、先生を差し向けてもらってその修行を行います』

『修行が終わり次第また連絡をもらおうか』

『わかりました。あたしでも役にたてるように頑張るので、そのつもりで考えていてください』

『使えるようになるまでの期間、いや、その後も、絶対に無理はしないでくれ』

『はい、ありがとうございます』

『それじゃあ、また』

『失礼します』


涼子は手の汗をハンカチで拭いた。

(修行はどんな物になるのだろう。誰が、いつ、来るのだろうか? そもそも、住んでいる場所はわかるのか)


「ちょっと、涼子、まだ荷物片付いてないじゃない? 何してるの?」


朝陽がやってきた。機嫌が悪そうだ。


「今やろうと思っていたとこ!」

「ちゃちゃと片付けなさいよ!」

「はーい」


涼子はピアノに布をかけて蓋を閉めた。それから椅子の向きを正すと、立ち上がり、伸びをする。


「もう一息だ!」


涼子はひた歩き、自室の物を片した。

そして今日は片付けに追われて、夜を迎えた。


「お母さん、吸血鬼ハンター試験受かったよ」

「すごいじゃない! 今日はもんじゃ行く?」


朝陽の機嫌は良くなっているようだ。


「いいぜ」


赤石の車でもんじゃ焼きの店までいって、ケシーも加えた4人で外食をした。




次の日。

家にローカがきたお昼時の事。


「じゃあ、俺はBGに入って、ナンバー1探しに一役買うよ」

「辞められなくなるんじゃないのか?」

「そうですよ、危ないです」


ケシーは心配そうにローカを見つめる。

当の本人のローカはクリームシチューとフランスパンを交互に頬張る。

涼子達はローカが来る前に食事を終えていた。


「大丈夫! だって俺、吸血鬼だし」

「なんか噛ませ犬みたいじゃねえか」


涼子は手で顔を覆う。


「俺の事、気になる?」

「別に、あんたに何かあったら、後味が悪いだけだ」

「そんな事、黒い下着つけているお前に言われてたまるかよ」

「あんた、人が心配してやってるのに」

「涼子さん、落ち着いて! 今はまだ我慢の時ですよ。例え叩いても服が汚れるだけですって」


そういうケシーの頭を撫でる涼子。


「……言っとくけど。あたし、宿題もう終わってるから」

「いつの間に、終わったんだよ。時間全然足らねえだろ?」

「時間なんて山ほどあったじゃねえか」

「もしよかったら見せていただいても」

「だめだ。自分のためにならんから。宿題の解き方なら教えてあげてもいいが?」

「どうせスパルタだろ」

「そうだが?」

「教えてください、……よし、油断させといて絶対おっぱい揉む」

「思ったことが声にでてるが? 剣山を胸につけとくべきか?」

「うーん……、いいよ、剣山ごと揉むからいいよ」

「部屋が汚れるからやめてくんない?」

「じゃあ、すみません、変なことしないんで普通に教えてください」

「初めからそう言えば良いのに」

「だって、今日の下着エロいんだもん」

「うるせえな。あんたに見せるために着てるんじゃないぞ!」

「わかった、わかった。ご飯、ごちでした!」

「それならついてこい。言っとくがケシーに日本語の書き方を教えるついでだからな」


涼子はケシーに日本語を教える体で、部屋にローカも入れた。


テーブルを出して3人で囲んだ。

涼子はケシーの学習に対する飲み込みの速さに驚かされる。ローカにはノート一冊分みっちり数学を叩き込んだ。

11時から6時間が経とうとしていた。


「少し休憩するか、ところでいつ帰るんだ?」

「宿題が終わるまで」

「あと2時間真剣にやれば終わりそうだな」

「夕食も食べていってもいい?」

「あんたな! ご飯食べにきたのか、宿題しにきたのか、わけわかんないな!」

「両方じゃないですか?」

「うん」

「うんじゃねえよ! 宿題終えてからだな、飯は。さっさと食って帰れよ」

「今日何にするんだろう」


ローカが呼び鈴を鳴らす。


「お、赤石さん、今日のご飯何?」

「青椒肉絲です。召し上がりますか?」


赤石はアセロラジュースをコップに入れて持ってきた。


「食うそうだ! ジュース、サンキュ」

「杏仁豆腐もあるといいな」

「またあんたは!」

「買い出しに行く時に買ってまいります」

「赤石、別にこいつの言う事聞かなくていいんだぞ?」

「私がいない時のために新しい執事も用意しました。紹介いたします。坂城絵空(さかきえそら)さん」


赤石の呼びかけで入ってきたのは仏頂面の執事だった。


「こんばんは、坂城絵空です。よろしくお願いします」


茶髪の長身で影のある人に見える。顔のパーツがすべて大きめだ。


「首の裏を見せてくれ」


涼子はケシーを抱擁しながら言った。

何も書いてないようだ。


「これでいいですか」

「ああ。うちの家に入ったからには赤石の言う事をよく聞いて、使えろよ」

「不束か者ですがよろしくお願いします」

「うん」

「うんじゃねえよ。入ってくるな」

「涼子さん、ボクは抱き枕じゃないですよ、離してください」

「あー、悪い」

「とりあえず、絵空に家のこと任せますが、何か不備があれば、私にお電話ください。夕食は18時からです」


赤石と絵空は部屋を出ていった。


「あと1時間か、勉強するか」

「勉強好きだね」

「いいから、2冊目のノート出せ」


涼子はローカのリュックを漁る。


「おいおい、なんだこれ」

「あ、それは――」


ローカは慌てて、涼子から奪う。

それは、涼子の写真集だった。


「今日絶対使わねえだろ! 何余計なもん持ち込んでんだよ!」

「いつおかずが必要になるかわからねえだろ? な、ケシー」

「……」


ケシーは動揺した目で口をパクパクしている。


「ケシーが困ってるぞ! この変態! これは没収な?」

「そんなあ」

「どうせまだあるんだろうけど、……ん? なんかちょっと濡れてて汚いんだが」


涼子はつまんで奪い返すと、ジップロックにしまい、鍵の閉まる机にしまい込んだ。


「汚いとか言うなよ」

「はあ、あんた、次は英語の時間だよ?」

「はい、先生!」


ローカは英語のノートと教科書を出した。

それから1時間きっかり勉強した。


「夕食の時間だ」

「もうか、早いな」

「集中してましたもんね」


ケシーはドアを開ける。

美味しそうなご飯の香りがしてきた。

料理メニューは多岐にわたり、青椒肉絲、ニラ玉、麻婆豆腐、杏仁豆腐など、中華風だった。


「「「いただきます」」」


3人は並んで座り、ぱくついた。すぐに食べ終わり、皆は手を合わせた。

「「「ごちそうさまでした」」」


その後、ローカの宿題は無事終わった。


「花火やろうぜ?」


涼子は花火を赤石に持ってこさせた。


「いいね」

「もちろんボクもやります」


夜空に火の花が咲いた。線香花火が落ちて、夏の終わりを感じた。


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