42 吸血鬼ハンター試験終了! (挿絵付き)
「なあ、あの着ぐるみ、居たっけ?」
「怪しいな」
二人組の男が熊の着ぐるみの頭をとる。
「よく私のことがわかったね!?」
「ノールだ。ヒントは?」
「桜の木の枝をよく見てみな」
ノールの言葉に周りの人が反応して、順応する。
「「「桜!」」」
ドドドド!
出入り口は人で溢れかえっていた。その群がりようはとんでもないほど言い難く、涼子達は一旦諦める。
「ウォレスト」
涼子の横にいた女性が武楽器を出した。手は宙を掴む。
すると、なんと、バニーちゃんの格好をした女性が姿を現した。
「カレーの寸胴鍋の底ですよー」
「ありがとう」
彼女らの話を聞き流した涼子は秘策に出る。
「すみません、シャインマスカットありますか?」
果物コーナーでヒゲの生えているおじさんに声をかける。
「あるよ。はい、ラスト一房」
「良かったー、ありがとう」
涼子は外に出る機会を伺う。
機会は意外と早くやってきた。それは桜の上の腕輪が誰かに取られたからだ。
甲板に出てきて、シャインマスカットを掲げる。
「シャーインマスカット! シャーインマスカット! 早く来ないと行っちゃうよー」
「涼子! マスカットほしいのじゃ」
リフレーンがヨウムの姿で涼子の目の前まで来て人に変わり、話した。
「来たな! ヒントは?」
「時計の上じゃ」
そういうリフレーンにシャインマスカットを渡す。
リフレーンはまたヨウムの姿に変身して、シャインマスカットをくわえて、キャビントップに行った。
涼子はパーティー会場に大きな時計があることに気がついた。
「あの上か、どうしよう」
金色の針の時計が進む。
「涼子! どうしたのかしら?」
眞子に声をかけられた。困っているように見えたのだろう。
「おばさん! 実はあの時計の上に腕輪が……」
「ウォレスト、遷移」
眞子のセルパンの鞭でぎりぎり届いたようだ。腕輪がキラキラと光っている。
「はい、涼子」
「いいんですか?」
「いいわ。施しよ」
「ありがとうございます」
涼子が受け取った腕輪はつけると銀色の腕輪と合成した。それと同時にカードをいれるようなくぼみができた。どうやらこの中に先程出てきた銀色のカードをいれるようだ。早速、カードをいれると、銀色から金色に変わってカードが出てきた。
『かくれんぼ、終了のお知らせです。もうすぐ着きますので準備のほどを宜しくお願いします。なお、腕輪は回収いたします』
放送が流れる。
「皆と連絡先交換してくる!」
「ええ、行ってらっしゃい」
眞子に見送られて、涼子は様々な人と連絡先を交換した。
少したち、船が振動して止まった。
ミャウカ達は先に降りていく。
「腕輪を回収します」
涼子は最後の最後で腕輪を渡し、船から順々に降りると、ローカが待っていた。
「あんたのお陰で助かったよ。ありがとう」
「んね! 俺使えるだろう」
「調子乗るなよ」
「海来れたね?」
「そうだな」
もうすぐ夕暮れ時だ。
「帰ろうか」
しばらく海を見てから涼子が言うと、ローカはいつものように反応する。
「呼んだ?」
「呼んでねえよ」
「こうも暴れまわったから、血がほしいな」
「あーどこかに寄るか、カラオケでも」
「いいよここでも」
「人目につくのは嫌だよ」
「結構歩くよ?」
ローカの問いかけに涼子は無言だ。黙ってついてこいと言いたげだった。
「夜になると、どこ歩いてるのかわからなくなるよ」
「だったらどうすりゃいいんだ?」
「血をくれ、そうしたら翔んでいける」
「わかった。その代わりあの林の中でな」
ちょうどよく、伐採されていない、林があった。
「うん」
「うんじゃねえよ」
「はい」
「足切るか」
涼子はコンパクトナイフを引っ張り出した。
「パース。ちゃんと救急道具持ってるんだ」
ローカは40センチ四方の軽そうな救急道具を出した。
涼子は頷くと、左靴と靴下を脱いだ。そして、左足の甲を切り裂いた。
「痛た」
「まいどまいど、すまんな」
「いいから早く舐めろよ」
「いただきます」
「つっ」
涼子はくすぐったくて声に出そうなのをこらえる。
流れている血が吸われている。
3分程たっただろうか。ローカが左足の甲に消毒液をかけてガーゼをあてて、包帯で巻いていく。一連の動作に誠意が込められていた。
「ご馳走様でした」
ローカは手を合わせる。
「吸い終わったらとっととこの場から離れようぜ」
涼子は気まずそうに靴下を履いて、靴を履く。
「せっかちだな、まあいいや。行こう」
ローカは涼子の脇に手を入れて、飛び立つ。
すいすいと翔んでいき、およそ5分で、灯台のあるところまで来た。
「ここからは歩いていこう。ババアに知られたら怒られる」
「言えばいいのにな」
「俺の行動の制限かけられるわ。無理」
ローカと涼子は歩き出す。
「そう言えば、ライセンスカード金になったよ。〜〜〜〜」
涼子は船での一件を詳細に説明した。
「へえ、お前も金か。修行するんか?」
「そりゃあ、先生次第だがな。今のとこ、するぜ?」
「ほう。長くて1年、早くて3ヶ月だな。修行達成は」
「そうなんだな。ふうん。何を修行するんだ?」
「まあ、武楽器の精度や体術になるな」
「そうか? 体術は合気道習っていたからある程度は大丈夫だが、問題は武楽器だな」
「ほお。お前なら強いし大丈夫だろ」
ローカは言い終えると、公園に入っていった。
「適当だな……ウォレット・ストリングス」
涼子も公園に入り、木の前でピアノの武楽器を出した。
「そのほうがいいだろ、ウォレスト」
ローカはビオラの武楽器を出現させた。
「せーの!」
♪
シチリアーノが数刻の狂いもなく弾かれていく。
涼子の練習の成果ははっきり出ていた。
神秘的な曲が終わる。
「あたしから行くな」
「うん」
「うんじゃねえよ」
「はい」
ローカと談笑しながら、涼子は緑の膜から出ていった。
来れた場所は日本の公園の土管の中だ。涼子は頭を低くしながら出ていった。
「やっと終わったー!」
「まだこれからだよ」
「うるさいな。今日はもう帰るからな!」
「俺も同じ方向だけどな!」
ローカと涼子はおどけあいながら帰路についた。
挿絵はskimaで梨と時雨様です。




