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40 空翔ぶパーカッショニスト!

涼子は目覚めると木に寄りかかっていた。


「あれ、あたし、何を?」

「涼子さん、大丈夫ですか? ローデの”操り人形”で操られるところでしたよ。あの曲は吸血鬼以外の普通の人を操る曲です。僕は耳栓を持っていたので、何とか平気でした。今は少し離れたところで戦ってます。相手は手強いです」

「あたしは大丈夫、ローカとミャウカちゃんとロサ君は?」

「3人は1時間以上、戦っています。見ます?」


アルトは見たことのある望遠鏡を涼子に手渡した。


「どれどれ」


涼子は彼らの戦っている姿を見た。

(何だこれ、人間業か?)


サラスはローカの剣を斧で防ぎながら、ロサに斧で攻撃しつつ、ミャウカの攻撃を避ける。味方の3人は空を舞っているにもかかわらずだ。


「え? あの車、浮いてるんだけど」


涼子は動揺する。

不意に、サラスの車が空中へ浮いた。


「あ、サラスは20分位前に願い石を使用してます。おそらく、車を浮かせられるのもその影響でしょう」


アルトの説明の中空飛ぶ車がミャウカへぶつかりそうになった。


「ミャウカちゃん!」


涼子は立ち上がる。


「涼子さん僕らはここで見てましょう。ん? テレパシーだ。さくらさん、コチドリの月影に逃げられたらしいです」

「大変じゃねえか! どうするんだ?」


涼子は喚いた。


「ああ! 見てください!」

「黒い信号弾だ」


サラスの分身が月影を討ち取って信号弾をあげたようだ。

まるで泣きっ面に蜂だ。


「サラスも逃げているぞ!」


涼子は指を指す。

信号弾の方へ森の上から逃げていくサラス。そう思いきや、突然止まって、ミャウカに斧を投げて攻撃した。

ミャウカは受け身をとるもサラスの斧で腕を負傷した。ミャウカの血がぼたぼたと落ちている。

味方の3人は何かを話している。

サラスはその間に逃げ去っていった。


「何かを話しているぞ」

「追いかけるのを止めたようですね。涼子さん、風車小屋まで歩けますか?」

「もちろんだ。ぼちぼち行くか」

「はい、案内します」


アルトの手を掴んで、涼子は険しい道のりを歩いた。


「あ、さくらさんがコチドリの月影を倒したそうです」


空に青色の信号弾も上がってきた。


「さっき逃げられたんじゃなかったのか?」

「コチドリの羽根をくわえて、コチドリの姿で近づいたようです」

「見たかったなぁ」

「先を急ぎましょう」


アルトと涼子はどんどんと進み、風車小屋までたどり着いた。


「よう! 涼子、アルト」

「よう! あんた等の失態見たぞ! 逃げられていたな」


「何だと? ミャウカが怪我してんだから、傷治すのが先決だろ」とロサ。


「あのう、さくらさんが、討伐に成功したっぽいんですが」

「あ! そうなのぉ? 良かったぁ」

「ミャウカちゃんの傷は?」

「もう治したよ。さーて、青い信号弾か。空から行ったほうが速いか?」

「また翔ぶの? 元気だね?」

「うっさい、早く行くぞ、信号弾の位置がわからなくなる」


ロサは喧嘩腰で言った。


「うるさくないだろ」

「涼子は俺が運ぶから。ロサはアルトを運んでくれ。ミャウカは先を行って周りを警戒してくれ」

「了解」


ロサがアルトの脇を抱えて翔ぶ。


「怖いなぁ」

「だったら目をつぶってな。俺様は落とさない」

「涼子も行こう」

「おい、落とすなよ、絶対に落とすなよ。フリじゃなくて」

「わかってるよ、ハニー」

「マーライオンのように吐いてもいいか?」

「そこは、ありがとうダーリン、だな」

「うええ、きもい、ミャウカちゃん助けて」

「んおい、あばれんな」


空を行くこと5分青い信号弾のあったところに到達した。


「さくらちゃーーん!」

「ローカ、大声出すな」


周りの葉っぱが揺れるたびに生きた心地がしなかった。


「今、テレパシーを検知してます」


アルトは背伸びをする。


「浜辺で待っているそうです」

「ここからならそう遠くないな」

「やっとこさ着いたのにな」

「そう思うならチームから出てけよ」

「あん? あんたの方こそ出てけよ」

「まあまあ、そういがみ合わなくても、もうすぐゴールですよ」

「行こうぜ」

「兄ちゃん、怖いよ」


ミャウカはそう言うと押し黙った。

そして、5人は歩き出した。

「ファーーン』

また耳障りな音が森中を駆け巡った。

『ただいま、受験者の1人がリスの月影の討伐に成功し、船に戻られました。棄権した人が10人で残り18人、残りの月影は2体となりました。なお、吸血鬼ハンター試験の棄権も認められています! 以上吸血鬼ハンター試験からでした』

「アルトさん! 皆さん」

「1時はどうなることかと思ったよ」


アルトは宝箱の中の例の青い銀箔の腕輪をつけた。


「俺様とミャウカは金色だな」

「好きにしてくれ」


涼子は銀箔のついた腕輪をつけた。

さくらとミャウカとロサとアルトと涼子は腕輪をつけると腕輪からカードが出てきた。


「何だろう」

「吸血鬼ハンターライセンスカードだ。俺も持っている。じゃあ、リコヨーテ付近の海辺に送り届けられるだろうから、涼子は俺と帰ろうな。あと、アルト、さくら、ミャウカ、ロサ。ありがとうな。パース。これ連絡先な。涼子ともケータイの電話番号交換しておいてくんね?」

「ローカさんが言うなら」

「僕も」

「俺様はいらない」

「じゃあ、あたいが交換しとくね」


ミャウカに頷くとローカは船と反対方向に翔んでいった。


「もう吸血鬼ハンター試験も終わりか。早かったな」

「サラスの野郎、今度あったらタダじゃ済まさねえ」

「ローカさん帰れるのかな」

「大丈夫だ、安心してくれ」


10分かけて船まで各々好き放題だべっていた。


「受験者5人組ですね」

「コチドリの討伐をしました」

「船内へどうぞ」


タラップで船に渡ると船内に通された。まるでパーティーでも開いているかのような料理や、デザートビュッフェに人が群がり、賑やかだった。数えてみると33人だ。棄権してる人も贅沢なこの世界で舌鼓を打ち、皆と会話している。もっとも誰が棄権したのかはわからなかった。


『ファーーン』


あの放送は船内ではバイオリンの音に切り替わっていた。


『ただいま受験者の5人がコチドリの月影の討伐に成功し、船に戻られました。先ほど棄権した人は4人。残り9人、残りの月影1体となり大詰めを迎えております。なお、吸血鬼ハンターの棄権も認められています! 以上吸血鬼ハンター協会からでした』


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