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4 吸血鬼との対面!

その疑問は即座に判明する。

すでに科学室の一角は人でごった返していた。

涼子も覗き込むと、知っている人がいた。

(しありちゃん!)

しありの隣で話しているのは一目見ればかっこいい、道をすれ違えば誰もが振り返ってみるような男子高校生だ。茶髪に高身長、中肉中背で、目が大きく、焼けた肌がよく似合っている。


「松村しあり、B型、体重55キロ、身長169センチ。スリーサイズ上から、90、66、87」


早口で言うのはクラスメートの林七靖(はやしななやす)というメガネをかけた小さな男子が手帳を片手につぶやいている。


「個人情報を漏らすなよ! いつの間に調べたんだよ。キモいな。日原くんは?」

「日原将太、陸上部、おおよそ168センチ……」

「それだけかよ! 女しか興味なさそうだな」

「あ、帰っていった」


七靖の言うとおり、2人は離れていった。


「なんであの子なの? 去年から猛アタックしてるのに」

「まあまあ、好き好きだよ」


涼子は隣にいる井上菜由(いのうえなゆ)の肩を慰めるように叩いた。


「涼子には彼氏がいるもん、わからないよ」

「何その顔? あたし、あなたの前でマウントとったことないんだけど」


涼子は当てつけに食らいつくように返事をした。

菜由は知らず知らずのうちに睨みをきかせていたらしい。涼子の我の強さに火がついたようだ。


「こら、涼子、もうちょっと人のことを思いやりなよ」


今度は髪の長い優等生の桜沢紗奈(さくらざわさな)が涼子に軽くチョップする。


「菜由も、目が怖いよ」

「だってー」

「涼子、科学委員だったよね? 先生が器具運ぶの手伝ってほしいって」


紗奈は菜由をなでながら言った。


「うん、わかった」


涼子は実験器具を運ぶことになった。



放課後

涼子は校門の近くの電信柱の裏で、ある人を待っていた。

(来たな、しありちゃん)

しありは男連れで校門から出てきた。

涼子は少々慌てる。

(日原将太と付き合ったのか?)

しかし、しありはつまらなそうな顔で相槌を打っている。

2人の身長は同じくらいだ。

涼子は2人を追いかけることにした。

すると、コンマ数秒のことだった。将太は半ば強引に、しありにキスをした。

涼子はいきなりのことでびっくりした。

しありは恍惚とした顔になった。


「えー」


涼子はこの現象を知っている。

(彼は、もしかすると)

将太は路地裏にしありを連れ込む。


「待ちなよ! 吸血鬼!」


涼子は路地裏に入ると、スカートのポケットからコンパクトナイフを取り出した。


「おやおや、君は、ローカティスの血液パックか」

「はぁ? 誰が血液パックだ!」

「その危ないものをしまってもらおう、この女がどうなってもいいのかい?」

「なぜしありちゃんに近づいた?」

「面識があるのか? たまたまさ。恋をしている女なら誰でも良かった。柑橘系の甘い匂いがするんだ。なんなら君からもね。ああああ、噛みたいな〜噛みたいな〜!」


将太は手を大きく広げると腰を左右に降る。

「きも!」

「まずは君からいただこう」

「わああ」


涼子は近づいてくる将太を見て、講座で習っていた合気道の段位を思い出した。


ダン!


「あたしは合気道3段だ!」


涼子の入り身投げが決まった。後ろに回って、斜め45度に導いた将太を落とした。


「しありちゃん、逃げよう!」


涼子の呼びかけが届いていないようでしありはぼうっとしている。


「しありちゃん!」

「無駄だよ。僕の唾液が入ったら自動的に下僕と化す」


将太は何事もなかったように起きると、背中をはらった。


「しあり、捕まえろ」


将太の言葉にしありが頷いた。

しありは涼子の身体を羽交い締めにした。


「さあ、仕上げだ」

「く、来るな!」


そういう涼子の身体を舐めるように見る将太。


「ん? 何かいい匂いがする?」

「パース」


ガン!


姿を見せたのはローカだった。

成人サイズの銀色の6面体の長方形の箱を出し、中に入った将太は壁に思い切りぶつかった。

箱には糸のようなものが巻き付けられてあった。下側から3分の2は金色、後は白い色をしている。


「ローカ!」

「これは吸血行動を抑えられるようにできる願い石。一族がためていた石を使うときが来たようだね」


ローカはズボンのポケットから拳くらいの大きさの金色に光る石のようなものを出した。箱も消える。


「願い石って?」

「願いが叶う石のことだよ」

「何それ? どんな願いも叶うの?」

「願いの大きさや石の大きさによったりだね。俺は吸血鬼ハンターなんだ」

「吸血鬼のくせに?」

「敵を知り、己を知れば百選危うからず。……孫子の言葉だよ! さあ、願い石、日原将太の身体を血を吸わなくても血の乾きが起きないようにしてくれ」


ローカは軽く石に口づけた。

倒れていた男子高校生の周りが金色に光り、その光は霧散していった。

石がサラサラと砂に変わっていく。


「おいこら、金出せや、こちとら慈善事業じゃないんやぞ?」


ローカはふざけたように将太を蹴った。


「ローカ、止めとけ。何が食いたい? 奢るよ」

「吸血鬼仲間に言っておいて? 今度、俺達や一般人に手を出したら、俺がのした後、ただの人に戻してやるとな。……おいで、しありちゃん」

「しありちゃんはこいつの下僕になったんだって」

「ごめん、涼子、ちょっと後ろ向いてて。俺がいいって言うまで」

「え?」

「ほれ、早く」


ローカに言われて涼子は仕方なく後ろを向いた。

チュ!

唇を吸う音のような音がした。

しありは両手で口を抑えている。


「今キスしてなかった?」

「さてどうかな? でも、しーちゃんには気付け薬飲ませたから大丈夫、それとまだ、俺、いいと言ってないんだけどね」

「あ、あたしにもしろよ」


涼子は恥を偲んで勢いづけた。


「んえ? やだ」

「何故に?」

「3人でラーメン行こうよ」


ローカは明るく言った。


「いいですね! 行きましょう」


しありは感情を取り戻したように微笑んだ。


「しありちゃん大丈夫? あたし、横浜家系ラーメン食いたいかも」

「2人とも、今日はありがとうございました。もう大丈夫です。ローカ先輩はうちを下僕にしたわけじゃないんですよ。勘違いしないでください」

「そうそう。まあその話もしたいから、とりあえずここを出よう」


そうして3人は近くのラーメン屋に向かった。

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