39 兵、現る!
「ココダ」
サラスの分身は開けた場所に来ると、どっかり座り込んだ。
「俺様が行く」
「あたいも。コンビネーションを見せてあげるよ」
「2人でもいいのか?」
「カマワナイ」
「「ウォレスト、遷移」」
ロサとミャウカが武楽器を出す。
「いっくよー」
ミャウカは空を高く翔びながらサラスの分身に長くしたオーボエを放った。
ロサは地上からサラスに剣を投げる。そのバイオリンの剣はくるくると回る。
サラスの分身はオーボエを避けて蹴りながら、剣を掴んだ。
「ウォレスト」
ロサは急いで剣を回収する。
その時、サラスの分身が勢いよくタックルしてきて、ロサは吹っ飛んだ。
「パース」
ローカが下向きにしてサラスを箱に入れた。
ドガン! ドガン! ドガン!
上から下に、下から上に、地面に叩きつけられるサラスの分身。
「マイッタ! オレノ、マケダ!」
「本体はどこにいる?」
「サラス、ハ、フウシャゴヤ、二、イル。ニシノ、ハマベノ、フウシャゴヤ」
「さて、皆に分身の消し方を伝授する。パース」
ローカは腰に手をあてて、箱を消した。そして、ボロ切れのようになっているサラスのおでこにデコピンした。
「分身を消す方法は対象にデコピンすることだ」
ローカの目の前で実証された。
サラスの分身は煙になって消えた。1本の髪の毛を残して。
「あのさ、サラスの分身ってなんで武楽器が使えるんだ?」
「本体と切っても切り離せない縁があるから、本体が武楽器の一部を持っていれば分身も使えるようになる。まあ、力や運動神経は圧倒的に悪くなるんだけどな」
「相当な曲者だな」
「倒さなきゃならないのでしょうか? コチドリの月影か狸の月影を狙えばいいんではないでしょうか?」
アルトは逃げ腰のようだ。
「別れて探索するほうがいいですかね?」
「さくらは単発でコチドリを追え」
「俺、涼子、ロサ、ミャウカ、アルトは作戦通りサラスを狙う」
「そうそう、さくらがいない時にコチドリに浜辺で会ったんだ、森の方に飛んでいったけど」
「多分いる場所は河川だな。さくら、犬になって探せるか?」
「豆柴になって探してみます。見つけたらどうしますか?」
「もちろん撃ち殺してほしい。パース、この弾を信号拳銃の中に、信号弾の先に装填してくれんか? このショットガンなら狩猟に向いている。射撃できる強度と機構を備えている」
ローカは銃弾の入っている袋をさくらに渡した。
「わかりました、でも連射はできないようですが」
「そこは1発で決めなよ。その後にアルトにテレパシーを送って、信号弾を上に打てば、迎えに行くから」
「はぁ、わかりました」
「じゃ、そういうことだから。何かあったらアルトにテレパシーを送らせるよ」
「はい」
「それ行け、さくら号」
ローカの声とともにさくらは子犬に月影化した。
「ワン」
「行ってきますと言ってます」
「行った行った。冷やかしはお断りでい」
「くぅん」
ダダダ!
さくらは走っていった。
涼子達は西の風車小屋を目指した。海辺側から歩行する。砂に足を取られた。
そうして、風車小屋を見つけた。風車は回っている。
「たのもー!」
ローカが木でできたドアをバーンと開けた。中から明かりがこぼれた。
「ローカ、あんた緊張感持てよ」
涼子の声は反響した。
なかなか広く、コンクリート造の風車小屋のようだ。
トン、トン、トン。
階段を降りてくる音が聞こえる。
少し待っていると、赤い柔道着の男が降りてきた。長い黒髪に目つきの悪い目、サラスの顔と一致する。
「あんたが本物のサラス?」
「イカニモ!」
サラスは望遠鏡のようなものを持っている。
「それで覗いてたのか? 悪趣味だな」
涼子は目線を下げる。
「パース」
ローカが人1人分くらいの箱を出して、サラスを閉じ込めた。
ガン!
「ウォレスト!」
ドーン!
サラスの出したマラカスのような斧が箱の縁に食い込み箱をふっ飛ばした。
「少しは腕が立ちそうだな」とローカ。
「箱を弾いたのか?」
「うん。箱を唯一どかせるのは、武楽器だけだ」
「ウォレスト!」
サラスが今度出したのはパーカッションの材料で作られた車だった。バギーの、大きめなタイヤの車だ。ティンパニをあしらった渦巻き模様のタイヤ、ドラムセットで操縦できるようになっているように見える。椅子はドラムセットの椅子だ。上の屋根にについているのが木琴だ。パーカッションのあらゆる楽器が一部に集約している。マラカスの斧も操縦席に装備されている。
ライドシンバルが鳴り、スネアドラムの叩く音とバスドラムのキックペダルの叩く音がして、車は前に進み始めた。
「オラァ、キッスイノパーカッショニスト!」
ドドドド! ドカーーーン!
風車小屋に穴が開いた。車が突っ込んだのだ。
「ヒャハハハ!」
ハイハットが鳴ると同時にハイハットペダルを踏んだようで車が一時停止する。
「小屋が壊れちゃいますよ! 皆さん出ましょう!」
♪
木琴の音が聞こえてくる。
「この曲は?」
「いかん! 早く、耳を塞げ!」
「え? ……あ」
ドン!
涼子は首をローカに手刀で攻撃された。意識が飛んでいった。




