34 吸血鬼ハンター試験の前日!
次の日から9月の2日まで穏やかで平和な日常を迎えつつあった。
涼子はケシーとは気まずいながらもぽつりぽつり話すようになり、そのうちに普通に会話するようになった。何度も何度も時の手帳を使い観た記憶や未来視やBGのことを調べ尽くした。ハズレの記憶が多かったが。
BGは基本何人かで固まって行動する。
1? 2ミャウカ 3ロサ 4ルシュヘル 5(死亡) 6千夏 7赤石
1の親分の姿は誰だかわからない。血は輸血パックに入れて、親分のすみかに届けられているようだ。
「9月の6日から学校か」
「そろそろハウスクリーニングも終わってお家に帰れるよ。涼子」
朝陽が涼子に声をかける。
「明日以降にしてくれるか?」
「明日なにかあるの?」
「明日は吸血鬼ハンターの試験日なんだよ」
「そうなの? 頑張ってね」
朝陽は放任主義である。
いつものように食事を食べて、ローカに会いに行こうと外に出ると、木に止まっていたヨウムが飛んできた。半月のように赤目と黒目のオッドアイだった。
「明日は試験場まで案内する」と半月のヨウムは喋った。
半月のヨウムが風をなびかせて人間の姿に変わった。
黒いゴスロリ姿の長い白髪の少女だ。ケシーと同じくらいの身長だ。
「Kita harus bangun awal pagi」
「ごめん、ちょっと待って」
涼子は言葉がわからないので彗星証を耳につける。
「なんて?」
「明日は朝早く起きなければならない、と言ったのじゃ」
「何時?」
「そうじゃのう、6時には会場に行きたいところじゃ」
「ってことは5時台に起きなきゃってこと?」
「そうじゃ」
「きっつ。起きれるかな」
「起きるんじゃ、リコヨーテに着いたらまた案内するんじゃ。今日は泊まってもいいかの?」
「ちょっと待ってくれ。……お母さん! 1人空き部屋あるか?」
「このホテルは貸し切りだよ。1人でも2人でもどうぞ」
近くにいた朝陽は鍵を事務室に取りに行って、すぐに戻ってきた。
「はい」
鍵は涼子の隣の部屋の鍵だ。
「ありがと」
「恩にきるのじゃ」
「あんた、名前は?」
「わしはリフレーン」
「あたしは岬浦涼子。よろしく頼むぜ」
「別に、長に言われてきただけだから」
リフレーンはツンとした態度でまるで反抗期のようだ。
「ご飯も食べてくんだよな?」
「そんなこともわからないのかの? 食べていくに決まってるのじゃぞ」
「聞かなきゃわからないだろう!」
「生意気な口じゃな。一生開けなくしてやろうかの?」
「誰が生意気だと? 宿無しの分際でよく言えるな」
「案内、しなくてもいいんじゃが?」
「すみません、案内してください」
「シャインマスカット」
「え?」
「わし、食べたいんじゃ。持ってきてくれるか?」
「赤石ー」
涼子とリフレーンははダイニングに入っていった。
「シャインマスカットあるか?」
「申し訳ないのですが、ございません。すぐに買いに行きます」
「明日まできらさないでくれるかの?」
「ええと、この方は?」
赤石は彗星証を耳へ。
「案内人。明日の吸血鬼ハンター試験の」
「名前はリフレーンじゃ」
「赤石です」
「よろしく」
リフレーンは赤石と握手する。
「わしもついて行っても良いか?」
「構いませんよ」
「赤石、恩にきるのじゃ」
リフレーンの変貌具合に涼子は開いた口が塞がらなかった。
「まあいいや、ケシーは眠っているだろうから、ローカの家まで行くか。いや、待て、リフレーンのことケシーに伝えておかないとだな」
「お嬢様、お出かけですか?」
今度はたなたんが声をかけた。出勤してきたようだ。
「リフレーンって明日の会場までの案内人が来ていて、今日泊まるらしいんだ。変なことされないようにケシー起こすの手伝ってくれないか?」
「鍵かけて寝てるんんですよネ?」
「どこからか知恵をつけたな、ケシーのやつ」
「マスターキーが事務所にあったはず。それで開けましょう」
「そんなのあったんか」
涼子が喋っている間に、たなたんが鍵を取りに行く。
5分後、ケシーの部屋の前まで来た。
ガチャガチャ、カチャ。
コンコン。
鍵を開け、ドアをノックしてから部屋に入る。
「ケシー、朝だぞー」
涼子はずかずかと部屋に入り、カーテンを開け、薄い布団を引っ剥がす。
「きゃあああ」
ケシーが眩しそうに、目の上に手をかざす。
「何だその、おばけでも見たかのような叫びは?」
「鍵はどうしたんですか?」
「こんな時の為にマスターキーがあんだよ、ほら」
「卑怯ですよ」
「それでさ、今試験会場の案内人のリフレーンが来てるから。会ったら挨拶しとけよ」
「リフレーンさん? わかりました」
「今日はローカに来てもらおうか?」
「そのへんは自由でお願いします。では、おやすみなさい」
「待てぃ、勝手に寝るんじゃない!」
涼子はケシーのマイ枕を抜き取る。
「返してくださいよー」
「シャインマスカット食べたいだろう?」
「あるんですか?」
「今買いに行ってる」
「帰ってきたら起こしてください」
「あんた、そんな態度だと、リフレーンにボコられるぞ?」
「わかりましたよ。起きればいいんでしょう、うーー」
ケシーは身体を起こすと伸びをする。
「油断も隙もないんじゃから」
後ろで少女の声がした。
「そうだな、まったく。って、リフレーン!?」
涼子は2度見する。
「リフレーンさん、ボクはケシーと申します」
「ケシーね。ふーむ、なかなか可愛いんじゃな」
「ボクも半月です」
「見れば分かるのじゃが? ケシー、わしの下僕になるか?」
「いえ、一応マスターは涼子さんなので」
「断るんじゃなー。ふーむ」
「そういう事は置いといて、ボクのシャインマスカットは?」
「食べた。鳥の姿のほうが早く帰れるから早く帰ってきたんじゃ」
「そういうことな! あたしピアノの練習あるからリフレンちゃんのことよろしく頼むぜ」
「ローカに任せましょう」
「ローカってリコヨーテ国王の息子のローカティス?」
「お知り合いですか?」
「あいつ、わしのことを吸血した挙げ句不味いって言って捨てやがったクソ野郎の、ローカティスじゃ!」
「やっぱり呼ばないでおこう」
「そうですね」
「わしな、日本を観光したいんじゃ」
そういったリフレーンはケシーをガン見する。
涼子とケシーは顔を見合わせる。
「行ってきな、お小遣いあげるから」
涼子はポケットから財布を取り出しお札をケシーに握らせた。
「わあ、10万も、いいんですか?」
「朝食もそれで食ってきな。ケシー、リフレンちゃんの事頼むぜ。行ってら」
涼子はケシーとリフレーンを見送った。そして、自室に戻るとピアノの蓋を開けた。
ちょうど19時になる頃だった。
「ただいま戻りました!」
「ケシーさん、リフレーンさん、お帰りなさいませ」
「おかえり」
涼子はダイニングでくつろいでいた。
「ただいまです」
ケシーとリフレーンはホクホクしたような顔で帰ってきた。
「何処まで行ってきたんだ?」
「川越で鰻を食べてきました。お土産もあります」
ケシーは福蔵と書かれた紙袋を手渡した。
「ご飯は?」
「はい、舟盛りと天ぷら、コンソメスープでございます」
「そんなに食べれませんよ、買食いしちゃったから」
「ケシーはあたしと半分こにしようぜ?」
涼子の言葉にケシーは明るく笑う。
「はい、お願いします」
「あと1時間でできるから、部屋で休んでな」
「はい」
「ふむ、わしも部屋で休むとするかの」
リフレーンはそれだけ言い残して廊下を歩いていった。
「ケシー、リフレーン、どんな感じだった?」
「普通の高飛車の女の子でしたよ」
「大丈夫だった?」
「はい」
「ふーん」
涼子達は1時間話し込んでいると、夕食がセッティングされていった。
マグロを初め、サーモン、ウニ、いくらととても豪華な舟盛りだった。天ぷらもさくさくしててとても美味しかった。
涼子達は食事を食べ終えると、リフレーンと一緒に入浴する。
「あたし、リフレンちゃんに負けた……」
「何の話じゃ?」
「なんでもねえよ」
「胸の話かの?」
「この! ロリ巨乳!」
「ひっひっひ。残念じゃったの!」
「ムカー!」
そして、2人は浴室から出て、着替える。
「明日早く起きなきゃだから寝るぞ」
「そうじゃの!」
2人が喋っていると横から赤石が参加してくる。
「何時に起こしましょうか?」
「5時までにだな」
「承知しました」




