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32 空の旅!

「多分、日本だと思う。箱出せる?」

「パース・ストリングス」


涼子の前には箱はでてこない。


「早速、神通力を使うか」

「え? おい?」

「パース」


ローカはコンパスを取り出して涼子に握らせた。涼子の後ろに周り、脇を抱えるように掴む。するとふわっと浮き上がる。


「お前どうなってんだよ?」と涼子が吠えるように聞く。


「俺がただ遊ぶために、クライスタルにいたと思うか? 俺は天狗の半月から力をもらったんだ」

「そんな事、どうやって?」

「もちろん血をもらってな」


広い森が広がっていく、道路が見えてきた。


「ローカ、道路の看板みろ!」

「んね! 読んでくれ」

「北海道野付郡別海町……」

「北海道ってことは南西にいけば良いんだな。コンパスで飛ぶ方向を指示して」

「ここから3時の方向だ、誤差があるかもしれねえから途中で止まれよ」


涼子の言うとおりにローカは翔んでいく。

とても速い。60キロ以上でていそうだ。電車と大差ない。


「待ってくれ! ここから2時の方向だ」


涼子はコンパスの針の動きを見逃さない。

ローカは方向を訂正するとまた翔びだした。


2時間経って、やっと関東地方についた。そして、埼玉を舞台に学校の屋上に到着した。


「ぜーはー、やっとついた」


ローカは肩で息をしている。


「それはこっちのセリフだぞ」


涼子はローカの肩を小突く。


「いってえ」


ローカは突かれた右肩を触っている。


「え? そんなに力入れてないんだけ…………ど?」

「ああ、いや別になんでもないから」

「もしかして、人を抱えて翔ぶの初めてだった?」

「俺の初めてを奪いやがって」

「いや、その言い方普通にキモいぞ。そうか、人を翔ばせるのは結構体力いるんだな」

「そもそも、お前がピアノをミスらなければあんな辺鄙なところ行かなかったんだぞ? 反省してるのか?」

「わ、……悪かったな。ごめん」

「いや、それを見破れず弾かせた俺もすまん」


ローカは素直に謝る涼子に心を入れ替えたように謝罪した。

和泉宏隆作曲の“宝島“だ。アゴゴの音がする。


「なにか、音楽聴こえないか?」

「吹部だな。吹部にも顔なじみがいてさ、そいつ等もテイアにいく事ができるんだ。なぜか俺のこと嫌っているけど」

「ふうん。なにかしたのか容易に想像つくぜ」


涼子は思う。

(どうせ血を吸わせてくれとせがんで嫌われたのだろう)


「帰ろうか?」

「呼んだ?」

「呼んでねえよ! 何回やるんだこの茶番」

「何度でもやるさ、呼ばれる限り……!」

「カッコつけんな! あたしは早く帰ってピアノが弾くんだ」


涼子は屋上のドアを開く。鍵はかかっていない。靴を脱ぎ、階下へと進む。


「太陽さんと勇とケシーに連絡しないとな」

「おう。忘れるところだったぞ。サンキュな」

「……うん」


ローカは安堵の息をつく。

涼子は電話を片っ端からかける。


『〜〜〜〜ありがとうございました』

『〜〜〜〜赤石に送ってもらった?』

『〜〜〜〜ホテルに待ってて、あたしもすぐ帰る』


3人に電話して、涼子はローカの手をつなぐ。


「もう勝手にいなくなるなよ!」

「うん」

「うんじゃねえよ!」

「はい」

「分かったんなら良いけど」


涼子は下駄箱まで着くと、手をほどく。


「あんた、ちゃんと栄養のあるもの食べてるのか? ほねほねした手だけど」

「俺のことは大丈夫。でも、ケシーに謝りに行きたい」

「気にしてないと思うが?」

「気まずいの嫌なんだ」

「じゃあ、来いよ」

「うん」

「うんじゃねえよ」

「はい、行かせていただきます」


ローカと涼子は自然と距離が近くなる。


「あたしのクラスにテイアのこと知っている人どのくらいいる?」

「原まゆらと勇とお前と俺くらいだな。俺等のクラスより他クラスに結構いるんだ」

「まゆらもテイアのこと知っているってことはクライスタル人? リコヨーテ人?」

「日本人だよ。至って普通の……!」

「そう、それなら別に詮索する必要もないな」

「それより、神通力の事を聞いてくれよ?」

「あー、空を翔べる以外は何があるの?」

「透視能力。白いブラつけてるお前のおっぱいが、人を駄目にするおっぱいってこととかかなー、痛いっ!」


ローカの耳を思い切り引っ張る涼子。


「あたしの胸はそんなに大きくないから」

「でも形は良いよな」

「まじキモい、誰が教えたんだよ」

「半月の天狗だよ、テイアに住んでいる」

「たった3日で何をしたんだよ」

「噛みついて血をもらい、後は修行だな」

「どんな?」

「木から飛び降りるのと目をつぶりながら生活をするのとかな」

「森でそんな事したら生きてられないんじゃないか?」

「半月の自己治癒力を舐めてもらっちゃならんよ」

「半月、つまり吸血鬼だけが覚えられるのか」

「まあ、苦行だけどな。昼間は太陽さんが月影が来ないように見張りしてもらいつつ修行して、夜はクライスタルの宿に泊まったけどな」

「ふうん。ケシーにはさせんなよ」

「分かってるって。半月の天狗は気に入った人の前にしか現れないし」

「なんであんたが気に入られるんだよ」

「王家の者だからかな?」

「王家の者だといいのか?」

「質問を質問で返すな。実際にミャウカとロサも神通力が使えるらしいよ」

「そんな……それじゃあ、吸血中毒を解く方法がなくなるぞ?」

「うーん、とりあえずナンバー1を探そう。いくつかの事件は頭のナンバー1から、任務と操作が行われている。まるで、人形遊びのように」

「……、時の手帳で見てみるか?」

「言っとくが、ミャウカもロサもナンバー1には会ったことはない。ボイスチェンジャーを使った声しか、わからなかった」

「じゃあどうやって操作されているんだ?」

「願い石で操作されている。BGの奴らはナンバー1から任務を聞く時には目隠しをされている。そこで俺が透視能力を使って視ようと思っている」

「え!? あんた、BGに入るつもりかよ」

「話が早いな。その通り! 俺がスパイとして紛れ込む。亡くなった夢野亜紀の抜け番5として」

「でも、願い石で操られたらどうしようもないぜ?」

「ナンバー1に操られる前に涼子に操られればいい」

「そううまくいくかな?」

「吸血鬼ハンターになってから決めて構わない」

「そうだな」


話し込んでいるうちにホテルについた。


「お嬢様、よくぞご無事で!」

「赤石! ケシーは?」

「部屋で待機しております」

「赤石さん。お邪魔します」

「ローカさん。お食事は食べていきますか?」

「いらないです。ケシーに会いに来ただけです」

「そうですか」

「その代わりにローカの肩にサポーターをつけてやってくれ」

「運動でもなさったんですか?」

「ああ、いやそうじゃないんだが。後で話すぞ」

「行こう」


ローカはズカズカと廊下を進む。


「待てって」と涼子。


コンコン。


「ケシー、入るぞー」

「はい、どうぞ。……ローカさん」

「ケシー、傷つけてすまんかった」


ローカは開口一番謝った。


「あー、僕は仲間が無事なら大丈夫です。ローカさんも無事で良かった!」


ケシーはにっこり微笑んだ。


「俺のこと許してくれるのか?」

「なんのなんの、気にしないでください。ボクも失礼なこと言ってごめんなさい」


「何だこの天使」と涼子が呟く。


「ケシーーー!」

「ぎゃーーー! ローカさん、くっつかないでください」

「ケシーーー!」

「涼子さんまで! ちょっ、ストップ!」


3人はじゃれ合い、抱きしめ合った。


「い、痛い」


しばらくするとローカは右肩を左手で包む。涙目だ。


「全くもう、無理して翔ぶから」

「もともと、曲が合わなんだな。あの曲は皆にバラすなよ」

「おっけい!」

「あの、翔んでいったってどういうことですか?」

「フェルニカまで、ルシュヘルに会いに行ってな、帰りの曲がチグハグになって日本の北海道まで飛ばされたんだ」

「次はミスするなよ。じゃあ、涼子とケシー、またな」

「じゃあな」

「はい、また!」

「ローカさん、肩のサポーターつけましょう。更衣室まで来てください。こちらです」

「はいはい」


ローカは赤石と一緒に出ていった。


「ルシュヘルってどんな人だったんですか?」

「人を殺せなさそうな良い人だった。アルトって金髪碧眼の少年を助けていたんだ」

「ボクのほうが上ですかね?」


ケシーの言うことで涼子は思案する。


「いやアルトの方が上だな。フェルニカでは仲間の人しか食料を売ってくれないらしいんだ。ありゃ困るな」

「祖母からフェルニカ兵は怖いって聞いたことがあります」

「ふうん。じゃあフェルニカは戦争などしたことがあるのかな?」

「あります、クライスタルとやって、フェルニカが勝って土地や人などを取られてもう駄目だという時にリコヨーテが戦って本土を取り返していったのです」

「それなら、なんでクライスタルの人に楯突くんだろう?」

「フェルニカ、核の開発が先進的なんです。下手に攻撃なんてしたら大変なことになります」

「リコヨーテとは敵対してるんでしょ?」

「はい、ですがリコヨーテは日本と協定を結んでいるので」

「ドンパチはできないってことか」


コンコン。

ノックに続き、赤石の声がする。


「お嬢様方、ご夕食は如何なさいましょう?」

「できたらなるはやで呼んでくれ」

「食前にぶどうジュースをお持ちいたしました」


赤石に返答するように涼子はドアを開けた。


「ありがとう」

「とんでもございません」


ぶどうに良い香りが部屋を包んだ。


「夕食ができ次第、お伺いします」

「ローカの肩どうだった?」


そういう涼子に赤石は影を見せる。


「赤く腫れていて、半月だからいいものの、治るのに2週間かかりそうなので、安静にしてくださいと言ったのですが」

「要領を得ないな。はっきり言ってくれ」

「右肩が脱臼しそうなほど腫れて、左肩はあざができていました」

「そんな素振り見せなかったけどなあ」

「ですねー」

「今度血を飲ませるか」

「いけません、お嬢様。吸血は岬浦家のメイドの棚田詩聖にお任せください」

「ふうん、まあ、考えとく」

「私と棚田詩聖の電話番号です、何かあればすぐに駆けつけます」


赤石は名刺を2人に渡してきた。

白地に明朝体で書かれた名刺だった。


「あのさ、BGに入るのって何か試験的なものあるのか?」


その問いに赤石は少し黙る。


「……BGの推薦と実力があれば。もしかしてお嬢様がBG入団に希望ということですか?」

「いやあたしじゃなくてな、まあ聞いただけだ、深く考えないでくれ」

「自分が言うのもなんですが、なかなか脱退できなくなりますよ。代わりを見つけないと」

「涼子さん、大丈夫ですか? あんなにBGを消してやるって息巻きていたのに」

「あたしはなんでもねえって。それより今日の食事は何だ?」

「オムライスです」

「……ケシー、あんたの提案だろ。そのような食事は普段並ばないぞ」

「あ、バレちゃいました? ははは」

「一流の料理人達が作るので、味は心配なさらずに」

「子どもの時しか食べたことないぞ」

「何を言うかと思えば、今も子供ですよ。ふふふ」

「赤石、あんた、あたしのこと舐めてるだろ」

「いや、他意はないです」




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