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3 団らん!


涼子は門扉を開いて、庭の道に入っていく。

雨は止む気配を見せず、降り続いている。

涼子は家の扉を開いた。

(ローカ1人暮らしのはずだけど、こんな雷のなっている中1人で怖くないのかな?)


「「「おかえりなさいませ、お嬢様」」」


家の中に入ると、3人のメイドと1人の執事が出迎えてくれた。全員20代と若い。厳かに部屋から半身で様子を伺ってきたのは父の康介だ。


「ただいま……。お父さん」

「おかえり。雨に濡れただろう、暖炉で暖まるといいよ」


康介は身体を引っ込める。3年前まで警察官だった康介は1年前から統合失調症の休息期の経過中で心に不安があるのだろう。白髪頭に白い眉毛に痩せ型の身体をしている。昔はテニスプレイヤーで県の大会に出て優勝した経歴を持つ、昔と変わらないのはプライドだけだ。あとはかつての面影はない。精神科に通わせるのも母や執事やメイドの力を借り、ずいぶん骨を折った。

涼子は周りを見渡す。広い玄関にこれまた広い部屋。白を基調としていて調度品が飾られ、とても豪華な家だ。


「お母さんはいつ帰るんだろう?」

「朝陽なら多分今頃フライトで忙しいのだろう。仕方がない、なにか食べたいものがあるかい? メイドに作らせよう」


康介は毎日、母の朝陽のことを心配している素振りを見せている。朝陽はキャビンアテンダントの仕事をしている。


「お母さんが帰ってから食べるよ。パスタがいいな、あたしは」

「ペスカトーレにしようか」

「そうだな」

「僕も腹が減った。今から作らせるかい?」

「お父さんは先に食べてて。あたしはお母さんと食べるから」

「僕も家族が揃ってから食べよう」

「服が濡れてるから、風呂入ってくる」


涼子は会話を終わらせ、風呂場に直行した。

(明日はしありの監視をしないと)

朝陽が帰ってきたのは9時過ぎてからだった。

夜食を家族で囲んで食べた。



次の日。

雨の次の日は晴れることが多い。そして今日は空に虹がかかっている。猛暑日を記録している。


「おはよう!」


涼子は学ランを着崩したローカを見つけた。


「あー、なんだ涼子か、はよ」

「喧嘩売ってるの?」

「いや、眠れなくてさ。あ、はい、傘」


ぶっきらぼうに言いながら傘を涼子に返した。きれいに畳まれている。

涼子はそれに違和感を覚えた。


「ローカセンパーーーイ!」


この声は、と涼子が振り向くと、駆け寄ってくるのは後輩のしありだった。


「おはようございます〜」


しありは凉子とローカの間に割り込んできて、ローカの腕をとって胸を当てる。

涼子は自分の胸を見てため息をついた。まな板胸に寸胴ウエストだ。

それに比べて、しありはEカップはありそうな胸でローカの腕を抱きよせている。


「しーちゃん、おはよう」


ローカは平和ボケしているかのように鼻の穴を膨らませている。


「ローカ、くっつきすぎじゃない?」

「しーちゃん、ちょっと離れて。歩けん」

「ローカ先輩、この人誰ですか?」


しありは涼子を指差す。


「あー、岬浦涼子だよ、同級生」

「岬浦先輩こそ、ローカ先輩に近いんですけど」

「あたしは彼女なのだが?」

「彼女ですか? ローカ先輩の?」

「うん。ローカにちょっかい出すなよ」

「もしかして、こんな熊さんみたいな人が?」

「おい」

「あの時、血を吸われていた……人なのですね? 思い出しました。確かにこんな声と口調でしたね。ローカ先輩、岬浦先輩と、別れなくてもいいですが、うちとも付き合ってください」

「んえ? 昨日は血を吸われるだけでいい、この身長を低くしたいって言ってたよね?」

「ローカ先輩、近いうち、岬浦先輩よりも美味しい血になるので、覚悟しててください。それでは失礼します」

しありが1年の玄関に行き、嵐が過ぎ去ったように静まり返った。


「あの子、170センチくらいだけど低くできるの?」

「あー。聞いてみたら169センチだったって」

「そうなんだ。美味しい血になるのかな?」

「恋をしている女の子の血は格別美味しいよ」

「あんた、それを知りながら、あたしとしありちゃんをやきもきさせたな?」

「んえ? なんのこと?」

「昨日、血を吸われ隊だのなんやかんや言っときながら、あたしの血に飽きたらあの子に依存する気だな」

「そんな事ないよー、涼子は大切な女の子だよ」


そういうローカよりも先を行く涼子。


「おはよう」

「おはよう」


涼子は教室に入るなり、女子の群れに入っていった。


「ローカ、おはよ!」

雨水(うすい)、おはよ」


雨水龍海(たつみ)。このクラスのリーダー的存在のようだ。萎縮されているローカに話しかけるほどの熱い男だ。


「おはよう、ローカ、お前、いい匂いするな」

「そうかな? 柔軟剤かな?」

「まあ、そんなことより、昨日の子、オーケーしたのか?」

「別にさっき告白はされたけど、重たいノリじゃなかったし」

「岬浦と付き合ってるんだろ?」

「あー、バレたか」

「今日も一緒に登校してたしな」

「偶然一緒になったの!」


キンコンカンコーン


チャイムがなったので、全員席に着く。

担任が教室に入った。


「今日も暑いので熱中症に気をつけてください。今週の課題を集めます」


担任がそう言うと1番後ろの席の人が立ち上がり、ノートを集めていった。


「明日から連休に入りますが、羽目をはずしすぎずに過ごしてください、今日も全員登校と。それではショートホームルームを終えます」


担任は出ていった。

1時限目は科学で移動教室だ。


「渡り廊下で悲報なんだけど!」

「呼んだ?」

「星野輪は呼んでない。クラスで1番イケメンの日原(ひはら)君が後輩の女子呼んで告白してるみたいなの!」

「確かなの? 私達の日原将太がそんなのする?」

「見に行こう!」


ローカは女子たちに混ざり駆けていった。

ちなみに渡り廊下は科学室から見える。

涼子はゴシップや噂を信じないほうだが、なんとなく嫌な予感がした。

(日原くん、一体誰に……?)


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