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21 嵐の前の静けさ!

「ご馳走様でした」


涼子は逃げるように部屋に戻った。

ローカからの電話は来ない。


「芽川先生のこと調べとけって言ったはずだが」


涼子は苛立ちながらローカに電話をかける。


『もしもし。ローカ? あんた芽川先生のこと調べておいてって言っただろ?』

『もっしー。涼子? おはよう。宇都宮の殺人事件に芽川は関与していないよ」

『3日前はなにしてたんだ?』

『事件のあった日、芽川は授業終えた後、帰り際にハンバーグの具材買って、夢野と作っていたけど。後は普通に風呂に入って歯を磨いて、小説を書いて寝てたらしい』

『この辺に吸血鬼の集まる会館とかないのか?』

『BGのアジトのことならわからん。多分公にされてないだけで会館くらいはあるだろうけど、眷属を持っている真面目な人達が集まっているんだろう』

『小説は一体どんな小説を?』

『ミステリー小説だよ』

『芽川の事を探ってくれ』

『うん。もう一度見てみるよ』


ローカとの電話が切れると、涼子は荷造りをした。

新しいホテルは学校から近いらしい。

涼子は朝陽と部屋をチェックアウトした。キャリーケースを転がす。

赤石の車に物を詰め込み、出発した。

そこは見慣れている街にある、綺麗な大きいホテルだった。

ベッドもスプリングがきいてて、ピアノもある、最高の部屋だった。

2階の窓の外から学校の様子を探ることもできる。

涼子はグランドピアノを弾いてみた。

鍵盤の一つ一つが重く感じる。

まるで吸い込まれていくようだ。

(やはり本番はこちらのほうがいいだろう)

練習して1時間たった頃、小腹が空き呼び鈴を鳴らす。


「お嬢様、いかがなされました?」

「腹がへって、なにか食べ物あるか?」

「はい、メロンでも切りましょうか。お昼は12時に作り終えることにしておりますので。お昼に新しく入ったメイドを紹介します」

「構わないぞ。頼む」

「少々お待ちください」


赤石は引き下がっていった。やがて、みずみずしいメロンをのせた皿を持って戻ってきた。

「今日の昼飯は?」


涼子は爪楊枝でメロンを食す。


「カレーライスです」


赤石はいつも通りクールに言う。


「この部屋に友達呼んでもいいか? あと、1時に学校に送ってもらう必要、無くなったから」

「いいですとも。カレーはどういたしますか? 多く作ってもらっているので振る舞えることはできます。それから送らない代わりに私もお供します」

「おう、わかった。食べるかきいてみる。メロンありがとう。下がっていいぞ。もし食べるようだったら、2回呼び鈴を鳴らすから」


涼子はメロンを食べ終えると、手を合わせた。


「はい、何かあれば何なりとお申し付けください」


赤石はいなくなった。

涼子は電話する。


『もしもし、ローカ?』

『もしもし、涼子、どうした?』

『実は、あたし、引っ越しまして、学校のすぐ側なんだが、今出てこれるか? 深夜まであたしの部屋で待てばいいからな?』

『ケシーと行くから、俺等の姿見つけたら案内してもらえる?』

『おう! あ、後さ、飯はまだか? 実はカレーを作ってもらったんだが、多めにあるから振る舞ってもいいって言われて、食べるか?』

『食べる、ケシーは…………食べるそうだ』

『じゃあ待ってるぜ』

『じゃーな』


電話が切れた。

涼子は呼び鈴を2回鳴らした。

約10分後、窓の外にローカとケシーの姿があった。

涼子は部屋から出て、夏真っ盛りの外に向かう。

学校近くで落ち合った。


「こっちだぞー」

「涼子、大丈夫か? 元気か?」

「おう、本調子じゃないけど大丈夫だ。さっさとあたしのホテル行こうぜ」

「うん、速く行かないとケシーが暑さにやられそうだ」

「心配おかけしてすみません」

「いいから、案内する」

「涼子からホテル行こうなんて、だ、い、た、ん!」

「あんたさ、殴られたいの?」


涼子は先程までいた部屋に3人で戻った。


「涼しいー」

「確かにここからなら見れる」


ローカは顎を触って、考え事をしているようだ。窓を見ている。


「お三方、料理ができました。ダイニングまでどうぞ」


赤石はノックして伝える。


「おう」

「「はーい」」


3人は1階にあるダイニングまで歩いた。

貸し切りのホテルのダイニングは客席も多く、光が反射するほどのテーブルなど、品のある佇まいだった。


「カツカレーでございます」


赤石が運んできたカレーライスで涼子の口の中はよだれでいっぱいだ。


「「「いただきます」」」


カツは口いっぱいに広がり、サクサクした食感を生み出していて、カレーとともにいただくと、また違ったスパイシーな風味で味が変わる。とても美味しかった。


「「「ご馳走様でした」」」


3人は2階に戻ると、トランプをして過ごした。

ケシーは仮眠をとるという名目でフローリングの上で眠ってしまった。


「あたしも寝ようかな」


涼子はケシーにタオルケットをかける。


「そろそろ俺に抱かれたいのか?」

「そ、そ、そんなわけ無いだろ!」

「そういえば芽川の件だけど、不思議なことをしていた」

「何?」

「暗闇にロウソクで火をともして何かお経のようななにかを唱えていたんだ。1時間も! 俺の追体験は1日2回までしかできなくてさ肝心なBGの全貌を明らかにすることができなかった」

「へえ、そうなんだ」

「じゃあ、夕食まで寝るわ。おやすみ」


ローカは広いベッドを占領して寝る。


「あたしのベッドなんだけど」


涼子はローカをどかして空間を作り、ベッドに横になった。

(まつげ長いなあ。肌も白いし鼻も少し高い)

ローカの事を見ているうちに眠くなって寝てしまった。


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