18 ポメラニアンを巡る戦い!
ハット隊長は目をつぶって愛想笑いをした。
「そうかい。残念だ」
「今日はクライスタルまである人を迎えに来たんだ」
ローカの言葉にきょとんとする楽団員達と赤石。
「ローカ様、彼らは?」
「彗星証を耳に」
ローカは赤石の耳に彗星証と呼ばれる自動翻訳機をつけた。
「我らは月影狩りに来てるんで、途中まで送るよ。なあ、皆?」
「「「はい!」」」
およそ20人程の大群に連れられクライスタルへ向かった。森の道は険しかった。15分くらい歩くと大きなクリスタルのある街を見下せる場所へ来た。そして、なんとか月影には出くわさずすんだ。
「貴方方の楽団の名前は?」
「ブルート楽団だ」
「ついてきてくださり、ありがとうございました」
勇はまっさきに頭を下げる。
「「「ありがとう」」」
「こちらこそ、ウォンドの手当て、ありがとね」
「それでは」
楽団と分かれた涼子は大きな壁で囲まれた街を見上げる。
(広くて迷子になりそうだな)
「リコヨーテ兵になるんだったら、国のカラーを何処かにつけてくれ。パース」
ローカは箱の中からアーガイルチェックのリボンと腕輪を取り出した。
勇はリボンをカチューシャのように額に巻いた。
赤石は左手に腕輪をつける。
「あたしは?」
「指輪をつけているから大丈夫!」
ローカはそう言うと箱を消した。
涼子は人差し指につけた指輪を見た。
(そういえば、リコヨーテでもらったな)
2人の検問の兜と鎧を来ている男性がいた。
その検問の人にローカが話しかけた。
「リコヨーテの兵と新兵なんだけど、入っていいかい?」
「全員箱を出してもらおう」
検問の人は睨みをきかせてくる。
「「「パース・ストリングス」」」
「パース」
全員が箱を出した。
「華、出番だ!」
検問の人は声を張り上げた。すると小屋から太ったフレンチブルドッグがとことこと現れた。
箱は蓋があいている状態ででてくるので、華は匂いを嗅ぐだけだった。次々に匂いを嗅いでいく犬。よく見ると片目が赤くもう片目は黒かった。
「ワン!」
華が吠えると、肩の荷をおろしたように検問の人は優しげな目になった。
「通ってよし.。門を開け!」
高台にいる人が人力で門を開ける。
「はあー! 良かったここまで来れて。ねえ、箱に入った金貨って出せるの? 日本円に両替できるの?」
勇は気を許したかのように喋りだした。
「両替できるのは、武楽器に入っているお金だよ。大体ペドルはテイアかリコヨーテでしか使用できない。お前は知らずに半月を狩って、お金を集めていたの?」とローカ。
「両替商の東京のスモールサイトのことは知ってるけど、そんなに怒らなくても」
「スモールサイト以外にもあるけど、あとで住所送るよ。怒ってないから。呆れてんの!」
「それで、この子の父親はどこ?」
「案内するよ。ちょうど今パチンコ店にいるから」
ローカは顔を背けると歩き出した。
この世界は青い色が多い。クリスタルがあちこちに埋まっている。
「綺麗だな」
涼子は思わず声を出す。
ひときわ輝く大きなクリスタルが遠くからでも分かる。
(このまま道なりにいけばその大きなクリスタルの前だな)
涼子の思いとは裏腹に、進行方向は急遽、右を行った。するといきなり、大きなド派手な看板とともに大きなお店がたっていた。
パチスロと幟旗が並んでいる。
「声を聞かれる心配はないな。だが、念には念を入れて連れションするか」
「ええ? 涼子がついに男便所つかう日が来るとは!?」
「だから、あたしじゃなくて、あんただよ。このボケナス!」
涼子は語気を荒げた。
ローカは目をパチクリしている。
「行きましょう」
「「おう」」
「うん」
4人は一致団結して、パチスロ屋に入っていった。
がやがや。
ピコーン、ピコーン。
音が騒々しい。
勇が先頭を歩く。
「いた! この列の1番奥!」
3列目の1番端を見ている。黒縁のメガネをかけた普通の中年の男性だ。
「パース。……願い石、森忠郁人に小便をもよおさせて」
ローカは冷静に箱の中から願い石を取出し、そう告げて、願い石に口づけた。
石は小さく鼓動すると砂になって消える。そして、同時に郁人は席をたった。
ローカはついて行く。その他の皆はトイレの前で待つことになった。
「大丈夫かな?」
「何がだ?」
「お父さんは、えっと」
勇は何かを知っているように言った。
「薬を飲んでいないから」
勇の発言で涼子は汗が浮き出る。何も構わずに男子トイレに駆け込んだ。
「ローカ!? 大丈夫」
「おいおい、ここ男子トイレだぞ」
ローカは中腰で茶色と白色のポメラニアンを捕まえていた。ハーネスつけようと振り回している。
狐顔の鼻が高い犬だ。中型犬ほどの大きさだ。
「えっとその犬は?」
「森忠郁人。涼子、ちょいと、ハーネスつけるの手伝ってくれ。こら、舐めるな!」
郁人だった犬はローカの顔をペロペロ舐めている。
「お父さん、なにしてんの?」
「勇、俺を出し抜くつもりだったようだな。めんどくさいことをしてくれた。俺はキス魔じゃないんだよ」
「ってことは、おじさんとキスしたの?」
「いいや、そんな絵面のひどいことはしない。願い石だよ。1時間下僕にしたら、勝手に月影化したんだ」
ワン!
郁人だった犬は低い声で鳴いた。
赤石が買って出て、犬にハーネスをつけることに成功するとローカは立ち上がった。
犬はローカにすり寄る。
「吸血中毒は治したのか?」
「うん、行こう」
「ごめん、ローカ。私、犬が好きなの。だから、言わなかった。お父さんが薬を飲んでないと分かったら飲まさせられると思って」
「なんだ、早く言えばよかったのに」と涼子。
「吸血中毒はなくしたから、後は好きにしていいよ。その代わり、半月狩りは絶対しちゃいけないから」
「はい、わかりました!」
勇が言っている間に、パチンコ屋の従業員が顔を出した。
「すみませんが、犬の連れ込みは禁止となっておりますので」
「あ、今出ていきます」
涼子達一行はすぐにパチンコ屋から出ていった。
「ちょっと、待ちなさい」
パチンコ屋からケバい服装の、ケバい化粧をしたおばさんが出てきた。
「あなたは?」
「いくちゃんの愛人の南眞子だけど? いくちゃん、キャバクラ行くんだけど人間の姿に治して頂戴」
「ふざけないでください。もうキャバクラには行かせないので、帰ってください」
勇は答えるも焼け石に水だ。
「どっちがいくちゃんにふさわしいか勝負よ。ウォレスト」
眞子は涼子が見たこともない楽器を出した。
「その誘いには乗るけど、もっと広いところで勝負しよう、おばさん」
「誰がおばさんよ。いいわ、広いところでぶっ飛ばしてやる」
この国では武楽器で戦うためのステージが設けられていた。約3分で到着した、その姿はさながらボクシングリングのようだ。
「ローカあの楽器は?」
「セルパン、ヘビのような形をした楽器だ。低音金管楽器で19世紀に使われていた、今ではとても珍しい楽器だよ」




