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16 意地悪な彼女!

「何かあったの?」


勇に聞く。


「あ、別に」

「そうそう、なんでもねえよ」

「岬浦の事バカにするからだ」

「あたしのことバカにしてたんだな?」

「そうだよ、何が悪い」

「言質とったぞ。ちなみにこれまでのいじめの様子もカメラで録画してあるから。放課後、先生に言いに行くぞ? 雨水君も来るよな?」

「行く」

「じゃあさ、その前にすぐ終わるけど、大事な話があるから。宜しくな森忠さん」

「う、うん」


勇はケータイをしきりに気にしている。


「森忠さん、嫌なことは嫌だって言った方が生きやすいぞ?」

「さっき見てたのって、私達のこと?」


菜由は涼子に指を指す。


「ピンポーン」

「そいつのケータイ盗ってこい、勇っち」

「い、……嫌!」

「言えるじゃないか」


涼子は勇の頭を撫でる。


「ご、ごめん、無視して」

「私もごめんなさい」

「悪かったよ」


クラスの皆が弾かれたビリヤードのボールのように涼子の周りに集まり、謝罪する。

机を隔てた反対側に、菜由と俊介が残っている。


「まだやる気か? 今謝れば先生にチクらないようにしてもいいんだが?」

「謝ろう、菜由」

「なんで、ずるいよ、私だけ悪者にして」

「謝れば許してくれるんだぞ?」

「気分悪い、もう帰る」

「おい菜由!」

「岬浦、先生に見せないで? 俺から菜由に言っとくから。ごめん」


俊介は菜由をかばうように言った。そしてリュックを持って教室を後にした。


「誰か菜由に言っておいて。猶予をやる。明日までに謝れば見せないと」


涼子は編集してないので見せれないのを誤魔化しながら告げた。


「というわけで、ごめん、雨水君。明日になるかもしれない」

「俺の方は大丈夫よ」


そういう龍海に感謝しながら涼子は席についた。

(菜由と渋谷君の動画を今日中に編集しないと)




放課後

勇は黒いリュックを背負って帰りたそうにしている。

涼子はローカと目で合図する。


「大事な用ってなんのこと?」

「あんたが吸血鬼で吸血鬼ハンターってことを調べて分かったんだ」


涼子は至って普通に話しかける。


「だから何?」

「あんた、あちこちで半月を襲っているんだろう。そして半月の血を飲んでいる」

「知ってるんだね。あのまずさが癖になるんだ」

「だから今日、吸血中毒を直そうと思っているのだ」


ローカが話に入ってくる。


「治せるの?」

「うん」

「それなら、お父さんの吸血中毒を治してよ。私は眷属を探すから」

「一族が貯めてきた願い石は有限だが多くある。先ずは森忠さんのを治そう、……願い石、森忠勇の血の乾き、もとい、吸血中毒を治してくれ」


ローカはポケットから出した金色の宝石のような丸い形の石に口付ける。

勇の周りに金色の光が煌めいた。徐々に光は消えていく。


「治ったのか?」

「これで大丈夫」

「確かに、血は、ほしくないよ」

「お前の親父を吸血中毒から治す代わりに、無差別の半月狩りをやめてもらうよ?」

「そうだ、テイアって知ってるか? そこに金になる月影がまだたくさんいるらしいんだ。代替になればと思って」

「知らない。私、ここで稼がなくてもいいの?」

「「おう!」」

「とりあえず、お父さんの中毒を治してくれないかな?」

「約束な、指切り」


涼子は小指を出して勇に向かった。


「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った!」


勇は不安気だった顔が安心した顔に変わった。


「森忠さん」

「勇でいいよ。涼子でもいい?」

「おう。じゃあ、勇の家ってここから遠くなかった?」

「自転車で15分位だよ」

「赤石、……執事に頼むから乗っていけよ。チャリも載せられる」

「いいの?」

「おう、じゃあ電話するから」


涼子はケータイを取り出して赤石に連絡した。


「車を回してほしいんだ、今日も友達を送ってくれるか?」

『心配無用、私にお任せください。どちらにいらっしゃいますか?』

「学校なんだが」

『かしこまりました』




30分後、赤石の運転する車は高校の前に止まった。


「自転車を載せたいんだが」

「ノープロブレムです」


赤石はトランクと座席を開放して自転車を積んだ。


「おやおや、新しいご友人ですね? 私、赤石と申します」

「どうも、私は森忠勇です」

「ご挨拶を承りたいと存じます。時雨赤石でございます。何卒よろしくお願いします」

「かっこいい……」

「お嬢様、どうぞ」


赤石はいつものように、助手席のドアを開ける。


「ああ、適当に乗り込んでいいぞ?」


涼子は助手席に乗る。

残された2人は後ろに乗車した。

道案内されて行くのはお手の物、迷うこと無く勇の家についた。

赤石が自転車を下ろす。


「メガネがテレパシーで通信してきた。芽川先生に日曜日の午前2時に学校に集合だと言われたけど行かないといけないのかだと」

「あたしたちが助けるから行くんだ、何かあればすぐに、ローカにテレパシーを送ってくれと伝えてくれ」

「ハンター試験合格する前に芽川の件片付きそうだな」

「まあ、前後したのは仕方あるまい」


涼子は勇が車から降りて、玄関を開けるのをじっと見つめた。

勇は家の鍵を開けて靴を見る。


「今、私の家にお父さん帰ってないなあ。 飲んだくれだから何処にいるかわからない。悪いけど明日」

「じゃあ今何処にいるか探る。ちょっと庭を借りるね。ニーベルング。親父の名前は?」


ローカは口を挟むと厚かましい態度で庭に行き、時の手帳を出す。


「森忠郁人(いくと)


勇は摩訶不思議な目で見ていた。

ローカの周りに例の青い炎が出てくる。

1分経つと消えた。


「お前の親父、テイアに行ってる。ケバいお姉さんと」


ローカはそう言うと勇に説明し始めた。


「テイアっていうのは空に浮かんだ大陸だ。リコヨーテの元々あった場所で、魔法が使えるんだ。吸血鬼ハンターや狩りしている人やテイア人は認められた人は武楽器を、箱はすべての人が出すことができる。ところでお前はどうして吸血鬼ハンターになったんだ? テイアのことも知らずに」

「私、まだ新米の吸血鬼ハンターだけど、お金が必要だった。そんな時、帰り道で男の吸血鬼に襲われそうになって、助けてもらったのが吸血鬼ハンターの巻本(まきもと)りおんさんだった。その男は金になった。それをみて懇願し、リコヨーテでハンターになる方法を教えてもらったんだ。でも、実は吸血鬼の自分が嫌で、同じ吸血鬼を狩って狩って狩りまくっていた。ストレス発散と、お金を得る為に……。ごめんなさい」


勇は涙をのんで話し終えた。


「勇ちゃん、帰ってきたの?」


その声の主は小さなおばさんだった。シワのある顔で髪はお団子でくくっている。


「お母さん。ごめん、出かける」

「帰ってきてそうそう行くのかい?」

「行ってきます」

「赤石、悪いけど運転してくれ」

「はい、仰せのままに」


赤石は、助手席のドアを開けた。


「皆、車の中で話そう」

「オーケー!」

「うん」


皆が車に乗り込む。


「ここから近くに、テイアに行ける場所があるようだ」

「差し支えなければ、私もお供してよろしいですか?」と赤石が言った。

「あたしも吸血鬼ハンターを追っている赤石を丸腰で戦わせたくないから、あたしからも頼む」

「うーん、仕方ないか。さっきの話聞いてた? 月影がいるところだ、日本みたく安全じゃない」

「ご傾聴させていただきました。正直な所、お嬢様とご友人2人だけでは心許ないです」

「言うじゃねえか」

「ああ、決して嘲っているわけでは」

「私はいいよ、行こうよ」


勇は少し悲しそうな目をしている。


「あーー、ったくしょうがないな。俺が誘導する」


ローカが道案内をして一同はスーパーの駐車場に着く。

「全員、俺についてこい」

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