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14 危険な吸血鬼と無鉄砲な吸血鬼ハンター!

赤石が言っている間に3人と1匹は乗り込んだ。


「そこを曲がってまっすぐ道なり。……あのアパートだ。止まれ」

「はい、お嬢様」


車は道の端に止まった。


「ローカ、ケシー、またな」

「それじゃあまた、暇だったら図書室で!」

「メガネ、涼子、またねー」


ローカとケシーが降りていった。


「渋谷君の家は?」

「この先の道を右に曲がって、集合住宅の一番奥」

「かしこまりました」


車のエンジン音が鳴り響く。


「試験頑張ってね、またね」

「あざす! 渋谷君も頑張れよ。じゃあな」


涼子は車から降りる清十郎に手を降った。


「お食事はいかがなさいますか?」

「食ってきたから、ご飯は朝飯にしてくれ」


涼子はリュックの中の武楽器の一部を握る。


「かしこまりました」

「あと、お母さんには内密でブラッティーギャングのこと調べて頂戴」


「はっ、しかし、お嬢様を危ない目に合わされましたら、執事として失格にございます。ですのでこの件は執事と新たなメイド一同で探ろうと思います」

「あたしは吸血鬼ハンターになる女よ。試験が終わったら、そのブラッティーギャングとか言う軍団を少しずつ排除、抹殺していこうと思っているんだ。赤石は解雇されたいのか? 絶対にあたしに秘密で行動するなよ。これは絶対だ」

「かしこまりました。草の根かき分けてでも探し出してみせます」


赤石の返事に、涼子は満足して笑みを浮かべた。


「あたしの学校に怪しい吸血鬼がいるんだ。芽川千夏。多分独身の30代だと思うぞ」

「どの点に、怪しさを?」

「ローカとあたしを閉じ込めて、その閉じ込めた男子の血を飲んでいる。ローカからすると確証はないが狙われている気がすると言っていた。こういう場合のローカの感はよく当たるんだ」

「1枚噛んでいそうですね。私では行き届かない点もございますので興信所に行ってみます。そしてお嬢様の命令とあらば、即拘束いたします」


赤石は尊敬の念を見せるかのように言った。赤石も執事になるために相当苦労したらしい。決して弱いわけではないがまだ20代と若いので、生き餌にされないか涼子は悩んでいた。

(いや、非童貞だから任せられるか?)


「じゃあ興信所に行って、証拠を掴んだら教えてくれ」

「かしこまりました」



次の日。

涼子は学校の校門でローカに会った。いつもより遅い時間だ。それには理由があった。


「さーて、今日はどんな嫌がらせを受けてるのかな?」

「元はといえば、あんたのせいだからな。で、芽川先生をケシーに見てもらうんだろ?」


涼子はローカのショルダーバッグを見る。

ショルダーバッグの中にいるケシーは笑顔で手を降った。

ローカはケシーをカエル姿にするのに40分費やしていた。ケシーが超ロングスリーパーでなかなか起きなかったからだ。何はともあれケシーを連れてこられた。袋にはいった保冷剤も一緒だ。


「音楽室に行こう、いや、職員室のほうがいいか? いやこの時間だと、放課後のほうがいいな。ケシーには悪いけど待っててもらおうぜ」

「あのさ、芽川千夏は吸血鬼なだけでハンターじゃないんだ。昨日リコヨーテ寄って、今までの吸血鬼ハンターの載った資料を見たけど、芽川千夏という名前のハンターはいなかった。あの日は大方、暑さで参った俺達を捕まえ、吸血鬼ハンターに俺を引き渡して、涼子は血を飲まれる結末を迎えようとしていたんだ」

「多分、吸血鬼ハンターはあんたが吸血鬼ハンターの仲間だと判るんじゃない? それでも、あたしが血を吸われかねなかったからな。ケシー、ナイス活躍だ」

「俺には?」

「走ろう! 後5分しかないぞ」


涼子は教室には間に合ったが、今日は大量の画鋲が椅子と机にまかれていた。画鋲の日らしい。

(バカバカしい)と椅子の上を手ではらい座った。


「涼子、かっこいい!」

「ローカ、少し黙ろうか?」

「呼んだ?」

「呼んでねえよ。……あんた達、画鋲片付けときな。先生にバレるぞ?」


涼子は力強く言う。


一穂(かずほ)、片しなさい」


菜由は地味でおとなしい山下(やました)一穂を顎でつかう。ちなみに外見は1つ結びに額縁のメガネをかけている。


「で、でも」

「ほら、やらないんなら次の標的にするよ?」

「はい」


指名された一穂は泣きそうな顔をして承諾した。そしてほうきとちりとりで、画鋲を回収しておく。

キンコンカンコーン。

チャイムが鳴った。

涼子の周りの画鋲はすべて取り除かれていた。


「おはようございます」


担任が教室に入ってきた。


「「「おはようございます」」」

「今日も暑いので熱中症に気をつけてください。午後のロングホームルームで9月末に行われる文化祭の出し物について話し合いがあります。皆さんで話し合ってください。それでは、自主学ノートを後ろから集めてください」

「私、やってきてないやー、すみません、忘れました、存在自体を」


媚を売るかのように森忠勇(もりただいさみ)が高い声で謝る。


「ペナルティシートへ」


担任の言うペナルティーシートとは1番前の席の、その前の席である。


「明日は忘れないでください」

「はーい、明日はやってきまーす」


勇は宣言し、机を移動する。涼子の前の席だ。先生に当てられても今日1日ずっと上の空だった。挙げ句の果に「宇宙人じゃないんだから交信するな」と先生に言われていた。皆から笑われていた。そして、時間は午後のロングホームルームになる。担任は斜め後ろの席を借りて小テストの採点をしている。

涼子は勇を気にしていた。


「ローカ、あんた聞いてこいよ、森忠さんのこと!」

「んえ? いいよ、放っておこうよ」

「あんたは男気がないな、わかった、あたしが行くぞ」

「待って、無視されるんじゃない?」


ローカの言うことを聞かずに涼子は勇に話しかけた。


「森忠さん、今日元気なくないか? 大丈夫?」

「うん、大丈夫……でもないな。もしかしたら名前が変わるかもしれなくて」


勇は髪をツインテールにまとめている。


「え? シングルになるってことか?」

「そういう事だね」

「それは辛いな、話なら聞くぜ?」

「ありがとう、でも……」


勇はいきなり口をつぐんだ。


「勇っち、文化祭の話し合いしよー」


突如、菜由が涼子の肩に思い切りぶつかって、勇を連れ出した。


「肩が汚れちゃった、最悪ー」


菜由はそう言い、そして涼子の前から2人は消えた。


「ローカ、文化祭って9月の30日と31日だったよな」

「ん、そうだよ。でも俺等入れそうにないな」


ローカは冷静な顔をする。広い教室の後ろの方でクラスの輪ができていた。


「メイド喫茶は?」

「たこ焼きだろ」

「ドーナツもいいね」


そう喋っている中で、唯一2人を気にしてくれているのは龍海だ。


「涼子、抜け出そう、ケシーが何か話があるそうだ」

「わかった」


涼子とローカは教室をこっそりと抜け出した。そして、空き教室の家庭科室に入り、ケシーが人の姿に変わった。


「あ、あの! ボクを狙った吸血鬼ハンターが居ました! 森忠勇さんです。あの人ハンター協会から追放してください!」


ケシーは身震いしながら一生懸命喋った。


「森忠が? じゃあ後で、リコヨーテの人に電話で聞くよ」

「今してください」


半泣きのケシーを涼子は抱きしめる。

「よしよし。ローカ、あたしからも頼む」

「じゃあ、今すっか!」


ローカはポケットからケータイを取り出すと、登録してある人に電話をかけた。


「もしもし、俺、ローカ。オトちゃん、頼みがあって電話したんだけど。森忠勇って人、吸血鬼ハンターか調べてくれる?」


ローカは城の者に電話をしているようで、3人はしばらく待った。


「無作為に吸血鬼を狙っているって、……うん、わかった。はいよー」


ローカは片手でケシーを撫でながら電話を切った。


「吸血鬼ハンターだった。しかしすまん、細かいことはリコヨーテにあるギルド協会の会長に言ってもらわないと動きようがないらしい」


ローカは申し訳なさそうに下を向く。


「ボクが言っても受理してもらえますかね?」

「俺が森忠勇の過去を見て判断する。都合良かったね、追放するか判断できる俺に会えて」

「やっぱり、芽川先生じゃなかったんだ」

「あの人は個人的に恨みを抱かせてるようだね。俺なにかしたかな?」

「あのさ、ローカさ、約3ヶ月前に歴史の先生の、夢野先生の血を飲んでなかった?」

「ああ、馴れ初めだね、涼子との」

「その後、夢野先生、教員辞めて失踪したらしい話だけど、なにか関わってるんじゃないか?」

「まさか、監禁でもされてるんじゃ?」

「今、執事に調べてもらっているから待ってろよ」

「涼子、ケシー、そろそろ戻ろう」


ローカの言葉でケシーはカエルの姿に戻った。

教室に入ると涼子とローカは足を忍ばせて席についた。


「このクラスの出し物が決まりました。ドーナツ屋をやります」と勇が担任に報告していた。

大きな声だったので涼子とローカにも伝わった。


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