12 ケシーからの恩返し!
「もう1人だけ見ていい?」
「違ったら3枚におろすぞ」
「ひい、……さっきの図書委員の名前は確か、渋谷清十郎っと」
「隣のクラスの子だよな」
再びローカの周りに青い炎が出現する。
コンコン!
ドアがノックされた。
「涼子さん、大丈夫です!?」
扉の向こうで中性的な声がした。
「誰ですか? 助けてください」
「4つの番号がわからないです」
「1251」
ローカは目を覚ましたようで、伸びをする。
「1251ですって!」
ガチャ!
「あ、開いた」
紛れもなく先程の音と同じ音がした。
「大丈夫ですか? 涼子さん」
緑色のジャージを来た、深緑色の髪の少年が佇んでいた。透き通るような白い肌に、大きな目は黒い。
「良かった! ほんとーっに良かった。あ、あなたは誰ですか? なんであたしの名前わかるんだ?」
涼子は図書準備室から出て図書室を出ると、初めて会う人に疑問をぶつけた。中学生くらいで、身長は涼子の頭1つ分小さい。
「ボクは今朝、開放してもらったカエルです」
「あ、今朝の!? 半月だったんだ」
「無鉄砲の吸血鬼ハンターに命を狙われてて、しばらくカエルの姿で身を潜めていたのです。眠っている間に捕まって、半月とバレたら殺されるところでした」
「何もしてないのに狙われるんだ? 可愛そうだな。そうだ、ローカ、この子の面倒見てやれよ」
「ボクの名前はケシーです。ケシーと気軽に呼んでください」
「なんでここに俺と涼子がいるって分かったんだ?」
ローカも図書室から出る。
「血の匂いに引き寄せられて、ですかね」
ケシーは首を傾げる。
「行く宛は?」
「ないです。同胞は殺されました。半月狩りで……」
「じゃあ、ローカの家泊まりな!」
「俺は良いと言ってないよ」
「ところで渋谷君がどうして、あたし達を閉じ込めたんだ?」
「あいつ、吸血鬼に操られてるようだ」
「ぼぼぼ、ボクは何もしてないですよ!」
「分かってる、この学校にもっと凶悪な吸血鬼がいる。多分女だ」
「女の吸血鬼もいるのか?」
3人は廊下を進む。
「言っていた通り、半月が吸血鬼になっているんだよ」
「処女の生き血を吸うのか?」
「そうそう。その他に若い童貞の血は若い処女の血の次にうまいんだな、これが」
「ケシーは生き血必要じゃないの?」
「少量の血だけで1か月は大丈夫ですけど。その、血を吸わせてくれる女の子いましたが、今はいません」
「この学校の子?」
「いえ、中学生の女の子です。愛川きららちゃんという子」
「そのことはどういう面識なんだ」
「道路で行き倒れていた所、助けてもらいました。カエルの姿で両親の目を欺いていたけど、目で半月だとバレて捨てられました。2時間くらい遠い所に」
「あたしので良ければ、血を飲むか?」
「今日のところは平気ですが、来週、眷属ができなかったらお願いします。ボクはその辺の草木にカエルのように過ごしてます」
「いいよ、俺ん家来い。好きに姿を変えて構わないよ」
「ありがとう、誰かに見つかるとややこしくなるので、しばらくカエルの姿でいます」
ケシーはカエル顔でそういうと銀色に光り小さなカエルになった。
ローカはケシーをショルダーバッグの中に入れた。とある人とすれ違った時、涼子に耳打ちする。
「この匂い、吸血鬼だ」
「音楽の先生だ」
「俺は選択科目の美術を専攻してるから会ったことないが、決まりだ」
「どうするんだ? 吸血中毒治すのか?」
「いや、まだ誰かを殺そうとしていないから、話を聞こう。俺みたいに眷属の学生がいるかもだ。靴とってくる」
ローカはそれだけ口を動かすと上履きのまま外に出ていった。そして、自分と涼子の靴を持ってきた。
「あ、ありがと。帰ろうか」
「呼んだ?」
「呼んでない」
涼子はタクシーを捕まえ、行先のホテルを告げる。
「じゃあ、またな」
「また明日!」
ローカの姿が徐々に小さくなっていく。
ホテルに着くと、ケータイを充電した。龍海のチャットアプリに36件、写真が送られていた。
涼子はこわごわと画面を開いた。
『5教科のノート、わからないところがあれば言って』
忌引で休んでいた間のノートの写真だった。
『ありがとう、助かる』
涼子は返事をするとノートを開いた。
(ローカは朝は眠いのか、眠っていてまともに授業受けてないから、良かった)
その日、涼子は寝るのが日付をまたいだ。
◇
次の日。
ローカの申し出で早く登校することになった涼子は気持ちを高ぶらせていた。
音楽の先生、芽川千夏と直接対決するらしい。
(眠い、速く終わらせて寝たい)
「おっはよ! 涼子」
「おはよう、ローカ」
「それじゃあゴー!」
2人は音楽室に足を運んだ。
吹奏楽部の人がこちらを見ていたり、見ていなかったりしている。どうやら朝練中だ。
「あら、星野輪君、岬浦さん、どうしたの?」
千夏に先手を取られる。
「昨日、俺達を閉じ込めただろう? なぜあそこにいるのが分かった?」
「あなた達だったの? あなた、吸血鬼ね? てっきり人が襲われてるのかと思って、閉じ込めたのよ。吸血鬼ハンターも呼んだけど、いつの間にかもぬけの殻だったわー」
千夏は声が大人っぽく、今日はタバコの匂いがした。
「そうだったんですね。てっきり、あたし達を熱中症にさせようとしてるのかと」
「ごめんなさいね、でも学校内でふしだらな行為をするのはやめてね」
「ふしだらじゃねえよ。吸血は吸血鬼にとって神聖な行為だよ。それにしても……俺には、渋谷を使った理由がわからない」
ローカは思い詰めたような表情をしていた。
「いいよ、誤解が解けたんだしな、行こうぜ。ローカ、それとも自分が狙われてたとでも言うんかよ?」
「確証はないけど」
「じゃあ、行こうぜ。先生、貴重な時間ありがとうございました」
「また来ます」
ローカはムスッとした顔で涼子の隣を歩いた。
「何か機嫌そこねてる?」
「渋谷清十郎に会わなきゃなって思って」
「もしかして、ケシーを襲ったのって芽川先生?」
「ああ! そういえばそんな気してきた! よく気づいたな。でも今日はお留守番なんだ、確かめようもないな」
ローカは窓の外を見る。
今日は相変わらずムシムシして直射日光で焼けてしまいそうだった。
「ローカって太陽怖くないんなら、何が怖いんだ?」
「んえ? 知りたい?」
「別に、そんなには」
「どうしよっかなー、教えてあげよっかなー。その代わりまた血を飲ませてくれるならいいよ」
「じゃあまた来週な。次はどこが安全だろうか?」
「やっぱり、家が一番安全だよ」
「だな。あと、ケータイはちゃんと充電するべきだな」




