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10 皆の思惑!

日曜日。

検視が終わったので、父とメイド達の葬式が執り行われることになった。

喪主は朝陽が務めた。

僧侶による読経、焼香などをした。康介の好きだったひまわりが棺に入れられていた。メイド達にも百合やカーネーションや菊などが余す所無く敷き詰められていた。そして、彼らの遺影は笑っていた。葬儀ならび告別式をしていた。

火葬をして、4人は骨だけの身体になった。そして骨壺に収められた。

涼子はもう何の感情も浮かばず、無表情のまま葬式が終わった。しかし思ったことはあった。

(必ず父とメイドを襲った吸血鬼を捕まえる)


涼子は帰りの道すがら、楽譜をコピー機で印刷した。車はコンビニに止まっている。


「なあに? それ?」


朝陽に聞かれてしまった。


「吸血鬼ハンターの試験の曲」


涼子は気がつけば正直に答えていた。


「本当に受けるんだ」

「あたしが決めたことだから」

「わかってますとも! 今日は栄養があるもの食べて元気出して。出前とりましょう」

「気を使うなよ。別に死に行くわけでもあるまい」

「お寿司でいいかしら? 赤石、適当に頼んでおいて」

「承知いたしました。奥様」


車は動き出した。


「それと、なにかほしいものある?」

「え? 何でも? じゃあキーボードピアノを」

「防音室にしてるから、グランドピアノでもいいけど?」

「奥様、差し出がましいようですが、グランドピアノはあのお部屋に入りません」

「そうだわ、ピアノが着いているホテルにチェックインしようか?」

「いやいや、いいんだ、あたしは弾ければいいだけだから。どこでも弾けんのがいいんだ」

「ひとまずそうするわ。じゃあ、お家に帰れたらグランドピアノ買ってあげるね」

「あ。ありがと」


ホテルに帰ると、涼子はホテルの一室にこもった。

優陽と部屋は分かれている。このホテルは露天風呂を貸し切っている。

涼子は、まだ日が沈んでいないが、露天風呂を堪能しに行く。


「あら、涼子」

「お母さんも今入るのか?」

「ええ、そうだけど」


脱衣所で着替える2人。

涼子は身体と頭を洗うなり、カラスの行水のごとく露天風呂に入り、そして出ていった。


「涼子、早くない?」

「別にいいだろ」

「いいなら別にいいんだけど」


朝陽は、洗面台で髪を乾かしていた涼子とすれ違った。

涼子は後で、ロビーで待ち合わせすることにして、部屋に戻った。

だだっ広い部屋はエアコンで冷やされている。

(映画でも見るかな)

涼子はケータイの画面をつける。

グループのチャットが盛り上がっている。


『うちのクラスにも吸血鬼いるよね? 怖くない?』

『薬を飲んでるから、狼とかコウモリとかにはならないらしいけど』

『でも、血を飲むんでしょ?』

『怖いよね』


とまあ、こんなふうに言われて忌み嫌われているローカはもちろんこのグループには入っていない。


「明日から1週間忌引で休むから誰かノート宜しくっと」


涼子は吸血鬼のことは特に触れずに会話に入った。


『岬浦はあいつと仲いいんだろ、何か弱点ないのか?』

『付き合ってるってマジ?』

「好きになった人がたまたま吸血鬼だったってだけだ。弱点なんて気にしなくても、ローカはあんた達には興味ないって、っと」


涼子は意気地になって即レスする。


『は? 何調子乗ってるの?』

『血、飲まれてんの?』

「あたしが飲ませてるの。気に触ったなら謝ります、ごめんなさい、っと」

『きもいわ。あたしが血飲ませてんのだってw』

「言っておくけど、ローカに何かしたら許さないぞ」

『あ、弱点分かっちゃった』

『1週間後が楽しみだねー』


皆好きがっていう。


「はあ」

『精神的に辛いよね。ごめんね、直接言えなくて。応援してる。ノートも後で見せるよ』


涼子はため息をついていると個人のチャットに龍海からねぎらいの言葉をもらった。

(でも、クラスの大抵の人はローカの事をよく思っていない)

「あ、退会させられた」


涼子はその反吸血鬼達の多くいるのグループから抜けることになった。





悠々自適に1週間過ごした。

康介のことは悲しいが、いつまでも下を向いてられなかった。

昨日買ってもらったキーボードピアノに音を刻む。メトロノームの機能もついていて気軽に弾けた。千本桜は速くて難しい曲だ。初見ではミスタッチが多く、完璧に弾ききるのはとても難しかった。

しかし、涼子は何度も諦めずに弾いていると連符が苦手なことが分かった。


「明日から学校か。ローカ、貧血になってないか?」


涼子がそう思っていると、ケータイが着信音をたてた。


『明日放課後、俺の家集合な?』


ローカは傍若無人な態度だ。


『またしありちゃんの血吸うの?』

『涼子の血が吸いたい。今すぐにでも』

『貧血なんだな。明日、保健室空いてないかな? あんたの家に寄ってるとこ知られたら、お母さんと赤石に変なことしてるって思われるだろ? ノートも写す時間もほしいからなあ』

『図書準備室に放課後寄ろう、先生も夕方の閉室にならないとこないし、あそこなら内側から鍵がかけれるし、本読んでたって言い訳もできる』

『そうだな、それじゃあ図書準備室に集合な』

『おう! それじゃあ』

『ああ。おやすみ』



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