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1 ローカティスは吸血鬼!

「吸血しないから倒れるんだぞ! ほら、吸いな」


高校生の男女2人は保健室で言い争っていた。部屋を仕切るカーテンを締め切らせている。


「いやいや、流石に何度もチビの助の」

岬浦涼子(みさきうらりょうこ)さんね」

「涼子の血飲めないよ。これまで3回飲んで6センチメートルは縮んだだろう。これ以上縮んだら親御さんにも悪いよ」

「あたしのことは気にすんなって。それとも、まさか、あたしに飽きちゃった? ローカ」


涼子はクールな口調で言い返す。


「そうじゃなくて身長の問題だよ、俺がもし吸うとしたらお前の身長の159センチメートルが2センチ低くなるんだぞ」

「150センチメートルまではいいぜ? それとも舐めるか?」

「え?」

「今エッチなこと考えたな!」


涼子は髪を耳にかけてどうだと言わんばかりの顔をする。


「……それは偏見! で、何処を舐めればいいんだ?」


ローカは一つにまとめてある癖のある髪を振るう。瞳と同じ藍色の長髪だ。


「今から腕を切るから、伝う血を舐めてくれ」


涼子はコンパクトナイフをスカートのポケットから出した。

ローカは喧嘩っ早い涼子のことだと特段驚かない。


「だめだよ。アームカットに思われるだろうから」

「じゃあ、見えないところを切るか」

「そういう問題じゃ!」


涼子はスカートを翻すと、太ももの内側にナイフを当てた。ピンク色の下着が丸見えだ。


「待て待て」

「っつう」


くぐもったうめき声とローカの声が重なった。

涼の太ももから血がでてきた。

ローカは久しぶりのごちそうによだれがあふれる。


「いいのか?」

「ああ、早くしないと人が来る」

「じゃあ……いただきます」


ローカは涼の太ももと太ももに挟まれるように座ると、流れる血をペロペロと舐めだした。ほんの出来心で血のでてくる方へ舌を沿わせていく。


「んあ! ばか、患部を舐めるな、ん」


涼子は身体を弓なりに反らせる。


「っっ〜〜〜〜」


チュチューーー!


しばらく太ももから出る血を吸っている、ローカの顔色が良くなってきた。


「ごちそうさま」

「はあはあ、どいて」

「ふう、このまま食べてもいい?」


ローカは涼子をベッドに押し倒す。


「調子にのんな。絆創膏持ってきて?」


涼子はローカを睨む。


「傷口は凝固してカサブタになっているから貼らなくても大丈夫だよ、俺の能力でね」


ローカは自慢げに話す。唇についた血を舌でペロリと舐める。


「それにしてもせっかく切って舐めてもらおうとしたのに、なんで患部舐めるかなあ」

「それは本当にごめん、あんまりにも血が美味しすぎて。また2センチ縮んだよね?」


ローカはベッドから起き上がり、横に立つ。


「ごめんなさい、新しい子探すよ」


ローカはしょんぼりとした顔をする。


「でもさ、……ざっくり説明すると、吸血鬼のローカと比べて背の高い人の血を飲まれた側は背が高くなり、背が低い相手だと背が低くなる。同じ身長だと、背はランダムに高くなるか低くなるかするんだったっけ。ローカは170センチメートルか」

「そうだよ、噛まれたものや俺の体液に触れたものは高揚感でいっぱいになる。何度も血を吸った対象者は俺に次第に、味を飽きられてしまう。そして俺は血が身体から不足すると飢餓状態になり、分別無く人を襲ってしまう、と」

「あたしの血で満足できるならそれでもいいんだけど! でも生贄を探す必要があるな」

「生贄って失礼だ! 眷属だよ。それにしてもオカルト部の子は皆食ったしな」

「食ったって血を吸っただけだよな?」

「も、もちろん」


ローカの瞳があちらこちらと宙を漂う。

涼子はそのローカの嘘をつく癖を知っていた。


「あんたってやつは」

「わあー、ほら、お昼休みが終わっちゃう、早く教室に戻ろう」


ローカは棒読みでいうと、逃げるように保健室から出ていった。


涼子も咳払いをしながら起き上がると、教室に向かった。

次は生物の授業だ。

チャイムがなり、先生は入室してきた。

分厚い本を片手に、黒板に書き始める。


「今日は今の半月の成り立ちについて話そう」


涼子は興味深々だった。


「遥か昔、月影と呼ばれた怪物がいた。空から振り、動物に擬態して肉食で獰猛だった。その月影と人間との境に生まれた半月という存在がいて、好きに形態変化できた。その半月を、月影や動物と間違えて射撃したり、捕まえて飼おうとしたり、命の危機にひんしたりするので、半月の多く住むリコヨーテ人はある薬を飲む事で防衛することとなった。別に怖い薬じゃない。月影化しないようにする薬だ。科学者のジェシカ・タマ先生が極秘で開発した薬だった。そしてその薬により半月は躍進した」


黒板に書き込むチョークの音が響く。


「それで話は終わりだと思うはずだった。だが違った。半月は血を飲むという衝動だけは抑えられなかった」


生物の先生は一旦、深呼吸をしてこういった。


「今じゃ、彼らは吸血鬼と呼ばれている」

「先生、じゃあ吸血鬼は太陽にも強いんですか?」

「それはもちろん。にんにくも十字架も効かない。近頃、人気のないところで吸血鬼に襲われるという事案がある。皆も気をつけるように」


先生はローカの事を自分で飲む輸血パックを持っていると信じているようで、クラス全体を見渡した。えこひいきしたり差別したりしない。と、いうのも初めの自己紹介のときにローカが嘘をついたわけだったのだが。

3ヶ月前の4月、涼子はとある体育の時間に女性教師の首に噛みついているローカに偶然出くわした。というのも、教室に体育館履きを忘れて、取りにいったときであった。

涼子はそのこともあり、どんどんローカが気になる仲になり、最終的に付き合うことにした。ローカは二つ返事で了承した。


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