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 なんで泣いているのかわからなかった。

 涙を流すことで何か変わるのか。

 泣くことに意味はあるのか。

 この人が何を考えているのかわからない。なんて声を掛けていいかなんて全くわからない。


「昔の事、思い出したんですの」

「むかし?」


 わからない。更に彼女がわからない。昔の事をわざわざ掘り返して、何故泣く必要がある。昔は昔。過去は過去。もう変えることは叶わないことを、なぜ思い出す?


「私、一つ上に姉がいるんですの。私と違って勉学も出来て、運動も出来て、すばらしい人なんです」


 それがどうした。

 姉が出来がよくて、自分が出来損ないであることが悲しいのか。


「父と母はそんな姉ばかり見て、私を見てはくれない。それに、メイドも執事も皆姉ばかり見て、私を見向きもしない……」

「………理解できないな」


 涙の跡を頬に残して言葉を失ったようにこちらを見る。


「見てもらえないなら、努力すればいい。出来損ないなら他のものをやってみればいい」


 見てもらえない分頑張ればいい。ただそれだけのこと。この人は何もしていないだけ。だから見てもらえないんだ。

 ただ見て欲しいだけなのに、な……。


「多分さ、姉も頑張ってるんだって。認めてもらえるように、存在を否定しないで欲しいようにさ」


 自分も同じだった。勉強なんてろくに出来なくて、運動神経なんて極々一般。唯一できたのは他人になりきること。細かいものや、作り物を作ること。

 それだけで十分だった。


「あんたはさ、自分を見てくれる人だけ信じればいいんだよ」


 きっと本当の自分を見てくれる人がいるから。俺じゃなくて、他の人を信じてください。



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