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世界の終末が望むとき、神々は迷宮を制覇する  作者: 柊ヒイラギ
第四章:復讐の使者たち、奏でるは平和と災いの音
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もう一人の死神さん

「…なんで、《死神》がもう一人…?」


 ギルド本部の中央には、攻略者の多くが噂に聞いている《死神》という攻略者の姿の人間が立っていた。

 本来ならば皆が賞賛と憧れを謳うような存在のはずだが、その正体はただの受付嬢。ライカは今受付嬢としてファルタたちの側にいるため、目の前に《死神》がいるということは絶対にありえない。


「どういうことだよライカ。お前そっくりな奴がいるぞ。」


「聞きたいのは私の方だよ。偽物なのは確定だとして…なんでそんなのがいるのか私も知らないよ。」


「具体的にどうかは分かんないけど…ライカとあの人、身長や肉付き,骨格とかも限りなく似てるよ。」


 実際に確認したわけではないが、観察力があるレイシャが言うのならそうなのだろう。また、ジェイドも同じことを思っていたのかレイシャの言葉に同意の意を示している。


「あれじゃない!?ドッペルゲンガーってやつ!姿形が全く同じ人で、その人に出会うと死んじゃうってやつ!」


「「「そんなわけ無いでしょ。」」」


 そんなわけないのはエルナも分かっていたためふざけて言ってみただけなのだが、思いっきり否定されると少し心に来る。


「それよりも…どうする?話しかける?」


「一旦様子見するか。ライカの真似をする目的がよくわかんねえし、俺達が話しかけてもあっちの対応によっては大事になりそうだからな。」


 わざわざ面倒なことを引き起こすのはなるべく避けたい。偽物の《死神》が何か行動を示すまでは行動に移すべきではない。

 《死神》は何もせず、ただギルド本部の周囲をじっくり見渡している。それは、おそらく誰かを探しているかのような動きだった。《死神》に興味津々なその他の攻略者の一人が、ついにしびれを切らして話しかける。


「なぁあんた。あんたって、あの《死神》だよな?」


 《死神》はその問いに答える気はないのか、質問した攻略者の方を見向きもせず黙っている。しかし、見た目が《死神》そのものなので、その問いの答えがYESであるであるとファルタたち以外は勝手に決めつけていた。


「《死神》さん?なんで今になって選別戦なんかに参加し始めたのか教えてくれないか?どこか有名なギルドにってわけでもなく、《フィンブルヴェト》とか言う無名なギルドに加入してるのもなんでかわかんないしさ。」


 やはり《死神》は答えない。というより、この質問に関しては答えられないが正しいのだろう。事情を知ってるのはライカとファルタたちだけ。偽物であろうこの人物が理由を知っているわけがない。


「おい…何か喋ってみたらどうだ?《死神》いえど、あんまり調子に乗ると痛い目見るぞ?」


「……………」


「…はぁ。ちょっと挑発してみれば行けると思ったけど、そんな甘くはないよな〜」


 偽物の《死神》は一切その口を開こうとはしない。何もしようとしてこないので、ファルタたちはますます謎が深まっていく。


「まじで何がしたいんだ?ずっと突っ立てるだけで、注目を浴びたいだけとか?」


「それだったらわざわざライカの真似じゃなくてもいいでしょ。とりあえずもう少し様子見を…」


「おい、あんたたち《フィンブルヴェト》だよな?」


 少し離れた位置で、死神(偽)の視界に入らないように様子を見ていたファルタたちだが、背後から大柄の攻略者が話しかけてくる。


「おいみんな!ここに《フィンブルヴェト》の奴らがいるぞ!《死神》は置いといてこっちから話を聞こうぜ!」


(((((……まっずい……)))))


 選別戦のとき、ライカは《死神》の姿でファルタたちと共に行動を取っていたため、周囲の人間に《死神》が《フィンブルヴェト》の団員であることは思いっきりバレている。《死神》が何も答えないならファルタたちに問い詰めようとするのは当たり前である。


「どうする?逃げる?」


「ここに居てもしょうがない…とりあえず人気のないところまで…って、へ?」


 ファルタたちがその場から逃げようとしたとき、先陣を切ったジェイドの眼の前には、偽物の《死神》が立っていた。どうやら先程探していたのは自分たちのことだったらしい。


(目的は俺達?俺達になにか言われれば偽物なのがバレるってのに。とりあえずこいつも面倒だ。後回しにして逃げるしか)


「あの、《フィンブルヴェト》の方々、よければ私についてきてください…」


 邪魔をされるだけだと思いジェイドは死神を避けていこうとしたが、周囲の人間に聞こえないよう小声で話しかけられて思考が一瞬停止する。

 なにか罠の可能性だってある。しかし、その声は少し弱々しく、決して悪意のあるものには感じなかった。


「……わかった。あんたについて行ってやる。ファルタ、少しでいいから俺達の時間をいじってくれ。こいつと一緒に人気のないところまで移動する。」


「…偽物も?まぁわかった。」


 ファルタは神術を使って《フィンブルヴェト》と偽物の《死神》の時間の流れを早くし、周囲がついてこれない速度で移動した。













ーーーーーーーーーーー

「…で、お前は何者なんだ?」


 ファルタたちは周囲には誰も居ない路地裏まで移動し、偽物の《死神》に問い詰める。周囲に誰も居ないことを理解したのか、偽物の《死神》も被っていたフードを外す。


「…私の名前はサリサ・セフィリム、Bランク攻略者です。」


 フードを取った少女、サリサはレイシャの予想通り、やはりライカと肉体的特徴がかなり酷似していた。それどころか声や容姿までもがライカとそっくりであり、双子と言われても誰も疑問を持たないであろう。


「サリサ、なんでライ…じゃなくて《死神》の姿をしていたんだ?」


「それはですね〜実はかなり深い事情があるんです。」


 サリサは重たい表情で、その深い事情を言い放った。












「実は私、《死神》さんの大ファンなんです。」


「「「「「………は?…………」」」」」


 溜めるに溜めて深い事情とやらを言うのだから、なにかとんでもない理由があるのかと思えば、想像以上に意味不明な理由だった。


「私、《死神》さんに昔、迷宮ダンジョン攻略のときに助けられたことがあって…その時思ったんです。彼女は、天が私の元へと送り出した女神なのだと!そしてその後、死神さんに再び出会うために、いろいろな情報を集めたり、あえて少し難易度の高い迷宮ダンジョンに向かってみたり。その努力のお陰で…なんとすでに7回も《死神》さんに出会えているのです!」


 なんと言うか、思っていた以上に明るい性格だった。例えるなら、自分の好きなものになると以上に熱弁してくる、いわゆるオタクというやつなのかもしれない。……《死神》オタクってなんだよ。


「えーっと、とりあえずお前が《死神》の事が大好きなのはわかった。」


「大好き!?何言ってるんですか!私は《死神》さんのことを、()()()()()()!好きなんて言葉で終わらせていいわけ無いでしょう!」


(((((面倒くさ〜)))))


「おいライカ、お前のファンなんだからお前が対応しろよ。」


「はぁ〜?私のファンじゃなくて《死神》のファンでしょ。私は関係ないでしょ。」


 想像以上にサリサの性格が面倒なので全員対応するのが嫌になった。結果、ほぼとばっちりだが原因となったライカに全員対応を丸投げする。その視線に耐えられなくなり、嫌々ライカが対応することに。


「えーっと、サリサさん?もう一回聞くけど、なんで《死神》の格好をしていたの?」


「はい!その、私の予想では《死神》さんはあまり表舞台に立つのが好きではない人だと思うのです。だからこそ、多くの攻略者の方々が選別戦に参加している姿を見て驚いていました。そんな《死神》さんが選別戦に参加していた理由、それはつまり…」


「「「「「それはつまり?」」」」」


「きっと《フィンブルヴェト》の方々に弱みを握られていたに違いありません!」


 サリサがそう言い放ったとき、五人は体を震わせていた。主にファルタとライカが。


「おそらく《死神》さんの正体に何かしらのきっかけで気づいてしまい、正体をばらされたくなければ選別戦に参加しろ!っ的なことを言って無理やり参加させたのでしょう!」


 すごい。本当にすごい。だって、予想が全部あたってる。ライカが選別戦に参加したのはファルタがライカを軽く脅して半ば強制的に参加せざるを得なかったからである。それを言い当てられてしまっては何も言い返せない。


「何言ってるの?ボクたちはそんな極悪非道なことするような奴らじゃないんだけど?」


「いや…レイシャ。違うんだ…その……」


「そうだよ!ファルタはたまに適当なときもあるけど、人の弱みに付け込んだりはしないよ!」


「エルナ…なんか…しんどい……」


 レイシャとエルナは本心で語っているのであろうが、当の本人はその言葉を聞いているのがただただ苦しかった。ちなみにジェイドはなんとなく事情を察して何を言わなかった。


「…それで?実際にどうだったかは置いておいて…俺達に何してもらいたいの?」


「そんなの決まり切った答えです!《死神》さんの幸せな人生を汚したあなた達は……














万死に値します!ということで今ここで死んでください!」










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