魔道士の少女
前回のあらすじ
必要なものを考えていたらファルタは謎の少女と遭遇してしまった。一体どうなる?
偶然にもファルタとその少女は再開してしまった。
「お前ソロで攻略してるのか?えーと...」
「エルナ・ヒェレナーク。今はソロで攻略してる最中。用がないなら話しかけないで。」
(なんで心なしか機嫌悪そうなんだよ。そんなに俺と話すの嫌なのか。それともなんか地雷踏んだか?)
何故か機嫌が悪かったエルナは、なりふり構わずそのまま先へ進んでいった。
「ファルタ、お前あいつと知り合いなのか?」
「まあ昨日ちょっとな。」
「魔道士ソロの攻略とか聞いたことがないな。さっきの魔物の状態を見る限り、実力は申し分ないようだが、いくらなんでも後衛一人で攻略なんて無茶じゃないか?」
「何かしら理由があるんだろ。深く追求しても意味ないし、俺等は俺等でやればいいだろ。」
疑問に思いつつも、ファルタの発言にジェイドは同意して再び歩き始めた。
「なんであいつがいるの。あんな恵まれてそうなやつの顔なんてもう見たくないのに。早く終わらせよう。」
苛立ちを隠さず、奥へ奥へと進んでいくエルナ、周りをよく見ず歩いていると行き止まりの部屋にたどり着いていた。
「あれ、こっちじゃなかったか。」
そのままUターンして戻ろうとすると背後には大量の魔物が迫ってきていた。数はざっと20体はいそうだ、しかしエルナは焦らない。
「その程度で勝てるわけないでしょ。封神無法、『傷つくる者』!」
エルナが使用する封神無法は、ダンジョンを攻略した際にそのダンジョンの主を精霊として呼び出し戦わせることができる。呼び出された精霊は大まかな意思しか持ち合わせておらず、基本的にエルナの指示に従うか、自身の得意分野での攻撃、援護を行う。エルナによって呼び出された巨人スカジはあっという間に敵を追いやった。
「やっぱり地図だけででも持ってくるべきだったかな。まあ良いや、早く終わらせて返さなきゃ。」
「そういやジェイド、お前は神術使えないのか?」
「俺は神術者じゃないし魔力も殆ど持っていないに等しい。だから俺は剣技だけで神術者に追いつくつもりだ。」
同等かそれ以上の力を持っているような気がするがまあ良いや。
「でも無理に攻略者になる必要はなかったんじゃないか?お前頭良いし他のことやってもある程度やってけるだろ。」
「普通のやつはそうするだろうな。でも俺はそうしない、いやそんな事するなんて許されないんだ。」
「ふーん、まあ好きにすればいいけどさ。それより、あいつ大丈夫なのかな。」
「エルナってやつのことか。確かにやっぱ魔道士一人は危険だよな。最奥行くついでにできるだけ探しながら進むか。にしてもファルタ、お前アイツのこと何かと気にかけるんだな。」
「ん?あー、いやなんというか、目が似てたんだよね、昔の俺にさ。」
「結構奥にあるのね。」
ファルタたちより一足先に最奥の扉へとたどり着いたエルナは扉の先へ進む。その部屋の中央の高台には、主である『ウル』の姿があった。その姿は人間で言うと30代後半あたりの顔ぶれで、背には動物の骨のようなもので作られた弓と大量の矢を持っていた。
(高台からの弓矢による遠距離攻撃、あれだけ上にいられると簡単に近づくこともできない。そして何より厄介なのは...神術《狙撃》による的確な位置に打たれる光線のような威力と速度による狙撃。その結果ついた異名が...)
「『光輝』、とはいえ遠距離攻撃ができるのはこっちだって同じ、避けつつ魔法を打っていけば十分勝てる。まずは自分側に遮蔽物、『合金の壁』!」
エルナが地面に向かい魔力を放つと、地面から金属による壁が出現した。
「そして、『火炎の雨』!」
壁に隠れながらエルナはすかさず攻撃を行う。放たれた炎の弾の雨はウルにむかって一斉に放たれる。それと同時にウルは背負っていた弓を構えて矢を引く。
「狙撃無法、『陰の矢』。」
ウルによって放たれた矢はウル自身の上から降ってくる炎を矢で相殺させた。
「やっぱりそんな簡単に当たらないか。でもこっちだって簡単に諦めるつもりはないんだよね。『元素の嵐』。」
「狙撃無法『降り注ぐ矢』。」
四方からの魔法攻撃も大量の矢によって防がれる。そしてウルは再び弓を構える。
「攻撃が来る!封神無法『番人』!」
呼び出されたヘーニルは目の前に盾を構えて攻撃を伺う。
(合金の壁とヘーニル、この2つあればこっちに攻撃が届くはずがない。矢を打ったあとの隙を狙って畳み掛ける!)
「狙撃無法『心眼の矢』。」
ウルによって放たれた矢はエルナにむかって放たれ、合金の壁とヘーニルを貫通してエルナに命中した。
(!?...何が...起きたの?あれだけの防衛を貫通して、いや防衛をすり抜けて私のところまで矢が飛んできた?)
ウルが放った矢、『心眼の矢』は心有るものにのみ当たり、それ以外のものはすり抜ける。つまり物質である合金の壁と精霊であり心を持たないヘーニルを貫通してエルナに矢が当たったのだ。
(まずい、早く逃げなきゃ...)
「狙撃無法『無限の矢』。」
エルナのことなど気にせず間髪入れずに次の攻撃を仕掛けるウル。
(嘘!?だめだ...避けきれない...)
そしてウルは無数の矢を放つ。エルナのことを助けるやつはいない......こともなかった。
「爆進無法、『神速の刃』!」
エルナの目の前には、ファルタとジェイドが立っていた。
「大丈夫かエルナ?あぶねえから下がってろ。」
「なんで助けたの、関わらないでって言ったでしょ。邪魔だからどっか行ってよ。」
「関わらないでとは別に言われてないけどな。まあ話しかけるなとは言われたから無視したことには変わらないけど。」
「エルナ、大人しく休んでろ、あいつは自分の意思を曲げるようなやつじゃねえから。」
そう言ってファルタとジェイドはウルに向かって行く。
(なんで私を助けるの?やめてよ...もうこれ以上...自分のせいで人を死なせたくないから...)
本当は次回の話と合わせて1つの話だったのですが、かなり長くなりそうだったので分けました。次話は早いうちに投稿します。
Q.魔力って何?
A.
簡単に言うと魔法を打てます。とはいえ、魔力があれば誰でも魔法を打てるわけではなく、結構才能が必要だったりします。あと人によりますが神術使うのにも使う時があったりもします。
Q.Bランクダンジョン難しくない?
A.
物語の都合上ある程度苦戦してくれないと面白みに欠けるんですよね。あと登場人物がソロ攻略とかふざけたことしてるので難しく見えてます。ちゃんと攻略すれば難しくないはずです。