最強を決める戦い
「第二次審査は、ギルド対抗戦《終末最強決定戦》です。」
「ギルド対抗戦?ギルドとギルドで戦うってことか?」
「ギルド対抗戦では、トーナメント方式で各ギルド5人の参加者が一つの場で同時に戦い、先に相手のギルドの攻略者全員を戦闘不能、もしくは降参の意を示す行動を取らせれば勝利となります。制限時間は基本的に無制限とし、一位となったギルドには、『何でも望みを叶える権利』を差し上げます。」
16組でのトーナメントなので、4試合を勝ち進めば優勝ということになる。
「二次審査を行うのは、今日から5日後です。それまでの期間は準備期間とし、仲間内での作戦会議や自身の能力の鍛錬に励んでください。」
一次審査で多くのものが疲れてしまっているが、一週間もあれば二次審査に向けての疲労回復は十分に行えるだろう。
「わずか5日と捉えるか、されど5日と捉えるか、この期間で出来ることは少ないだろうが僅かな差を埋めるための貴重な期間になりそうだな。」
ジェイドが冷静な分析、そして何をするべきかを懸命に考えている。しかし、ファルタはそんなことよりも気になっていることがあった。
「これって、トーナメントの組み合わせってどうやって決まるんだ?」
「おそらく運営がランダムに勝手に決めるんだろうな。これに関してはただの運ゲーだし。ただ、組み合わせはかなり重要なことは間違いないだろうな。」
16組のギルドでのトーナメントでは、組み合わせ次第で強いギルドと弱いギルドがそれぞれどちらか一方に偏ってしまえば順位だけで判断すると平等な結果にはなりにくい。
とは言っても、あくまで評価されるのは順位ではなく戦闘での活躍なので、たとえ一回戦で敗退してもある程度評価してもらえる可能性はある。まぁ、優勝報酬はもらえないのだけれど。
「それでは、二次審査のトーナメントの組み合わせを決定したいと思います。」
レセカの指示により運営がくじを引きトーナメント表を作っていく。このトーナメントの組み合わせが、今後のファルタたちの運命を決めていくことになる。
「それでは、結果が出揃いました。トーナメントの組み合わせを発表いたします。私がトーナメント表の左側から順にギルドの組み合わせを言っていきます。」
表の左側からなので、一組目の勝者と二組目の勝者が二回戦でぶつかり合い、四組目と五組目の間でトーナメント表が半分に分かれる形になる。
「それでは一組目、《エインヘリャル》VS《ギュルヴィ》。」
「いきなりイスカのとこかよ。」
「しかも、イスカの相手は第3位だったギルドだ。イスカがいくら強くても多少は苦戦するんじゃないか?」
初戦からかなりの成果をあげているギルド同士が衝突することになり、待機所の空気はとても盛り上がっていた。その後も、レセカがギルドの組み合わせを順に発表していく。
「二組目、《ヴォルヴァ》VS《ヘイティ》。三組目、《アーヴァンス》VS《セイズガンド》。四組目、《ビフレスト》VS《トラスト》。」
(…!呼ばれた…ファルタさんたちとは最終戦までいかないと戦えないのか…それって、エインヘリャルっていうあの強そうな人に勝たなきゃいけないんだよな…)
ファルタたちと戦うことを一つの目標として選別戦に参加しているオリエンタ・カスラートことリタ。しかし、ファルタたちとは四回戦、つまり決勝までいかなければ戦うことができない。そのためには、イスカたちエインヘリャルはもちろん、その他のギルドにも勝ち続けなければならない。
「五組目、《ユグドラシル》VS《ミードホール》。六組目、《シンエン》VS《ヒュンドラ》。」
(確かまだジェイドたちのギルドは呼ばれてないよね…)
(つまり、俺達《シンエン》がジェイドと戦うには…)
((三回戦にたどり着けばいい…!))
ジェイドとの戦闘を求めてるアラナクとウィリック。二人がジェイドと戦うためには、お互いのことを倒さなければいけない。とはいえ、この二人は一切面識がないのだけれど。
「七組目、《ヒャズニング》VS《ギムレー》。そして八組目、《フェラーグ》VS《フィンブルヴェト》。以上になります。」
ファルタたちのギルドが呼ばれたところでトーナメントの発表は終了した。
「俺達最後かよ。相手のギルドは《フェラーグ》ってとこか。あんま聞いたことないギルドだが…」
「こりゃ運が良い。初戦からお前を殺せるチャンスが来るなんてな。」
ファルタの背後には先程ファルタから離れていったバルテが再び近寄ってきていた。
「初戦から?それってまさか…」
「改めて、ギルド名《フェラーグ》、団長のバルテ・ウィークルゥだ。5日後が楽しみだな。それにしても…死者を呼び込む天才剣士に、団長をたぶらかした淫乱魔導士、おまけに死を求める戦闘狂って…お前の仲間は曲者しか居ねえのな。こんな奴ら連れて、変な注目でも浴びたかったのか?それとも変人には変人って決めつけたりしたのか?なぁどうし」
「ちょっと黙ってろ。」
バルテはファルタの仲間に対して様々な罵詈雑言を口にする。バルテは、軽く挑発するつもりで言っただけで本心でそう思っているわけではなかった。けれど、たった一言でもファルタの気に障ることを言ってしまえば、ファルタは黙っていられない。
「てめぇ、さっきまではまじでどうでも良かったけど、決めた。俺が、完膚なきまでにぶっ倒してやるよ。」
仲間を蔑ろにされて、ファルタは怒りでいっぱいになっていた。バルテはファルタの宣戦布告に想定通りとでも言いたげな顔をしていた。
「いいぜ、そうこなくちゃな。5日後、自分の人生が終わるまでに、変人さんたちと楽しく生活してるんだな。」
ファルタの宣戦を受けると、やることが済んだのかバルテは再びファルタたちから離れていった。
「ファルタ、そんなに思い詰めなくてもいいよ?別に、ボクたちだってそこまで気にしてないから。」
レイシャは気を使っているのか、はたまた本心なのか、どちらかはわからないが考えすぎないようにファルタをなだめる。ジェイドとエルナも、そこまで気にしている素振りは見せなかった。
「でもまぁ、言葉は気にしてなくても、あの態度はやっぱ気に食わないよね。」
「お前と過去に何があったのか知らねえが、個人的にも俺はあいつをぶっ飛ばしたくなってきた。まぁ、そもそも負けつもりなんて一切ないけどな。」
「それに、団長だからっていつも一人で先走ってるけど、ファルタだって私たちからしたら大切な仲間には変わりないんだからさ。ファルタの思いは、私たちにも背負わせてよ。」
エルナたちも、ファルタの言葉に同調するようにバルテに向かって対抗意識を燃やしていく。
「それでは、以上を持ちまして精鋭攻略者選別戦の第一次審査を解散いたします。皆様、第二次審査に向けて準備を怠らないようお願いします。」
レセカの指示によって、待機所に居た多くの攻略者は続々と退室していく。ファルタたちもその波に流されるように待機所を後にした。
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「あのさ、ファルタ。一個質問いい?」
待機所から帰っていると、ライカがファルタに話しかけてきた。おそらく、先程言いかけていた質問のことだろう。
「あー何?」
「ファルタの神術って、《爆進》じゃないの?さっき一次審査の最後に使ってた神術は、ギルドに登録されている情報とは結構違う感じがしたからさ。」
言われてみれば、ライカには《刻限》の話をしていなかった気がする。ギルド登録時にファルタの個人情報の一部はギルド本部が持っているため、ライカはそれを確認したのだろう。書いてある情報とファルタが実際に使った神術に違和感を感じて聞いてみたということだろう。
「あー、えっと、俺の本来の神術は《刻限》って言って、時間を操る?みたいな神術なんだよ。たまに暴走して俺も制御できなくなる時があるからさ、そういえば言ってなかったな。」
「……そう、なんだ。おっけー、ありがとう。質問はこれだけ、それじゃ。」
ファルタの回答に納得したのか、満足そうな表情をしていたライカはファルタたちの元から離れていく。ファルタたちはそれを一切気にしてもいなかった為、そのまま帰ることにした。
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「ねえライカ、ファルタと何かあったの?」
ファルタたちはそのまま帰ったのだが、ライカの様子が気になったエルナはライカの後を追いかけていたようだ。
「…別に?ただ、自分の夢が一個叶ったのが少し嬉しかったからさ。」
エルナはライカの言葉が理解できない。ファルタの神術を知ることがライカの夢にどうつながるのだろう。夢を知らないエルナからしたら意味不明な発言である。
「ところで話は変わるんだけどさ、エルナってファルタのこと好きなんだよね?」
唐突に自分の、しかも結構恥ずかしい話題をされて顔が熱くなるエルナ。今更隠すことでもないので潔く認めてしまえばいいわけだが。
「急に何を言い出すかと思ったら…そんなこと?」
「そんなこと、か。確かにそうかも知れない。でもエルナは考えなかったの?ファルタのことを別の人が狙ってるって可能性を。」
その言葉がどういう意味かはエルナにもすぐに分かった。言われてみればそうだ。ファルタのことが好きな人間が自分ひとりである根拠なんてどこにもない。
「…待って、それって、そういう意味?」
「そういう意味って?」
「ライカも…ファルタの事が…」
エルナがすべてを言う前に、ライカは歩きだしていた。そして、どこか悪戯心が籠もったような笑みでエルナに言う。
「今この瞬間から、私とエルナはライバルだよ。」




