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世界の終末が望むとき、神々は迷宮を制覇する  作者: 柊ヒイラギ
第三章:強者は集う、己の野望が為に
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獄獄

今回から本編戻ります。

「ウィリックさん。その、恨んでるか?俺のこと。」


「なんでジェイドのことを憎むんだよ。あのときも言ったけど、悪いのはどう考えても俺だ。お前が悪いとは一切思ってない。それに、俺が呪いにかかったことでそいつらに出会えたんだろ?だったら、俺としても嬉しいもんだよ。」


「……そっか、あんたらしいな。じゃあ、俺達は行くわ。時間もないしな。そっちは大丈夫か?」


「さっきも言っただろ?俺達が一次審査を突破するのは確定事項だってよ。お前たちの結果についてまではわからないが、まぁどうにかなるだろ。」


 ジェイドは半ば適当に話を聞き流されて少し気に入らない表情だったが、ウィリックがジェイドを信用しているからの行動であると勝手に思っておくことにした。


「それじゃ、また後でな。」















ーーーーーーーーーーー

 選別戦一次審査の残り時間はおよそ10分。『シンエン』との接触は想定外であったうえに、思ったよりも時間がかかってしまった。それでいてウィリックたちは呪いで合格が確定していると言うのだからいい迷惑である。とは言っても、現在ファルタたちがいる場所から出口まではそこまで距離がないため急いで行けば間に合わないわけでもない。


「こっからはヌシが居ても無視できる状況ならなるべく接敵しないように行くぞ。戦闘も最低限に抑えろ。」


 《フィンブルヴェト》の現在のヌシ討伐数は現状4体。16組のギルドが合格であるため、おそらく出口に行くことができれば合格は出来るだろう。何も妨害が起きなければ……









「……!全員飛んで!」


 なにかの気配に《予測(ビジョン)》の力でいち早く気付いたレイシャがすぐさま他の四人に声を掛ける。突然の指示でありながらも四人とも大きく上に飛び上がる。

 ファルタたちが飛び上がった瞬間、その地面には電撃の魔法が流れ始めた。


「広範囲への麻痺攻撃?一体誰が…?」


 エルナが落ち着いて魔法の分析を始めたのもつかの間、今度は出口のある方向から鉄で作られた無数のトゲが四人に向かって飛んでくる。

 先程よりも警戒を強めていたこともあり、各々が瞬時に判断して回避や受け流しを行った。


「誰だ!魔法の種類がバラバラなあたり、複数人での足止めってところか?」


 ジェイドの声に反応し、複数人の攻略者が姿を現す。ただ、想定外であったのはその人数だ。


「…7…8…いやもっといる………15人くらいいるのか?」


「流石に天才ジェイド君でも、この人数にはビビっちゃうか?そりゃそうだよなぁ。一つのギルドが4つのギルドの団体に勝つのは流石に厳しいもんな?」


 どうやらファルタたちを襲った彼らは4つのギルドでの同盟を組んでいるらしい。狙ったように《フィンブルヴェト》を狙ったところや、4つのギルドでの行動をしていることからも、1人に対しギルド一つで襲い足止めするつもりなのだろう。


「誰だ。なんで俺達を狙う?時間がないのはそっちも同じはずだ。ここで俺達を妨害することはお前らにとって意味のない行動のはずだ。」


「俺はデータ。俺達がなんでお前らを狙っているのか。それはお前が一番わかってるんじゃないのか、ファルタ・レイリオ。」


「………多分、あいつらの狙いは俺だ。どうせまた、俺を殺すだの何だの言って突っ込んでくるつもりなんだろ?」


「御名答〜その感じだと、先人たちはそこまで脅威にならなかったって感じ〜?」


 ファルタが数人の攻略者に狙われていることはファルタとエルナしか知らない。ジェイドとレイシャは一瞬その事実に驚いた表情をしたが、すぐさま状況を理解し警戒をより一層強める。


「そうだな、実際ほとんど相手にならなかった奴らばっかだった。ただ、確かに今回は人数差が激しいから苦しくなるかもな。」


「何?ビビっちゃう?」


「ビビる?たったそんだけの人数でか?だとしたらお前ら自意識過剰だな。ジェイド、エルナ、レイシャ、下がってろ。」


 ファルタの雰囲気から何をするのか察した三人は巻き込まれないためにも後ろへと距離を取る。対するデータたちは余裕そうな表情を決して崩そうとしない。


「刻限無法《刻の」


 ファルタが神術を放とうとした。けれど、その言葉は途中で止まり、ファルタは地面に座り込む。悶絶し、苦しんだ表情と声で。


(何だこれ……吐き気がする……目眩も……視界も…白い……なんで急に…?)


 先程までのファルタは、疲れこそあったもののここまでの体調不良を引き起こすほどの状態ではなかった。なのに、神術を使用した瞬間突如として異常なまでの症状がファルタの体に引き起こされた。


「大丈夫かファルタ!?おいお前ら、ファルタに何しやがった!?」


 データたちは、ジェイドのことを嘲笑うかのような笑みで眺めている。その質問に答えたのは、後方で杖を持っていた女性の魔導士だった。

 

「《疾患(エイルメント)》、私の神術。対象の体にありとあらゆる症状を引き起こす。今、ファルタ・レイリオにかけたのは頭痛・貧血・目眩・発熱、まぁ他にもいろいろかけたけど。そしてこの症状は患者の神術や魔力に呼応してより強力になっていく。とにかく、ファルタ・レイリオは今まともに戦える状態じゃない。この状況であんたたちが勝てると思う?」


 正直、状況は最悪である。ただでさえ人数不利な状況であるのに、ファルタは戦闘に参加できる状態ではない。残りの三人で対処できるのかも怪しい。

 さらに言えば、この集団を突破した後も体調不良のファルタを運びながら出口までいかなければならない。残り時間僅かでこれら全てを3人で行うのは流石に苦しい。


「無視して通るのは……厳しいよな…。なら、押し通るまでか。」


「何?諦めたりはしないんだ?」


「悪いが、今ここで諦めたら、うちの団長の夢が叶えられないからな。エルナ、ファルタのことを守っててくれ。レイシャは俺とこいつらをぶっ倒す。」


 ジェイドの指示に同意の意思を示してエルナはファルタのそばで防御の魔法を、レイシャはジェイドの隣でドラウプニルを構える。


「神物解放《滴るもの(ドラウプニル)》。」


「封神無法《守護する者(フリーン)》。」

 

 自分のために仲間が全力で戦おうとしている姿を見て、ファルタは嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちで一杯になる。


「……悪い、お前ら。でも、頼むから無理だけはしないでくれ。」


「それ、まずは自分にいいなよ。とにかく、戦闘は二人に任せて。ファルタのことは私が守るから。


 ほぼほぼ勝ち目のないと言ってもいい戦闘に無謀にも立ち向かってくる3人を見て呆れた表情でデータは言う。


「無謀だな。希望だの、諦めないだの、そういう言葉が俺は嫌いだ。世の中には、希望ってもんに縋ったってどうしようもならないことだってあるってのに。まぁ、俺は()()()()()()()()()()し、様子見といくか。」














ーーーーーーーーーーー

「正直、限界だろ?」


 ジェイドたちにいくら実力があるとはいえ、この人数差を覆せるほどの力はなかった。ジェイドとレイシャの体はすでにぼろぼろになっており、エルナも魔力がほとんど残っていない。対するデータたちはほとんど被害を受けていない。


(流石に…きつい。でも、ファルタに無理をさせたら魔力が暴走する可能性だってある。だったら、()()()()を使って……)


「考え事をしてる時間なんてねえよ。」


 ジェイドが打開策を考えているとき、データはその隙を見逃さず攻撃を仕掛ける。ぼろぼろなジェイドには攻撃を避けるだけの力すらもう残っていない。


(まずい…!やられる…!)

















「黒白無法《紅》。」


(…!?誰だ?俺を…守った?)


 ジェイドを攻撃しようとしたデータを狙った青年の攻撃はデータに当たりはしなかったがデータを後退させることに成功する。

 エルナは、その青年のことを知っている。だから、今ここにいることが衝撃だったのだ。


「……なんで、ここにいるの?ネリオス…」


「なんでって、私とネリオスが来たのは、どこぞの愚図が苦しんで助けてほしそうな顔をしてるからよ。後で戦うって言っておきながらこんなところでやられてもらったら困るのよ。」


 そこに現れたのは、自身の体を様々な色へと変化させる、花のような色とりどりの姿を持つ青年。そして、バラのようなトゲのある言葉を放ちながら華麗な剣技を見せつける少女を含めた5人組。


「なんで……《ブルームス》の5人が…?」


 突如として現れた助っ人に驚く四人。そして、《ブルームス》の後ろから現れる巨大な鎌を持った少女。


「いくらなんでも、来るの遅すぎ。ずっと出口で待ってる私の気持ちにもなってほしいよ。」


「なんだ。お前も来たのかよ、死神さんよ。」


 突如として、ファルタたちの前に現れたのは、ギルド《ブルームス》の団員と、《死神》の名で知られている攻略者ことライカ。


「これで、ちょっとは勝機が見えてきたんじゃない?」


 データは、敵の数が増えたが、決して焦ることはなく、しかし、その顔は明らかに先程の余裕のある表情とは違う、憤りの感じられる表情になっていた。







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