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世界の終末が望むとき、神々は迷宮を制覇する  作者: 柊ヒイラギ
第三章:強者は集う、己の野望が為に
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外伝:其の眼に映るは闇の中の光 その6

長えんだよこの外伝。今回でようやく終わった。

 ウィリックは、呪いにかかった。最初は未来が見えるという、言ってしまえばメリットと捉えられる能力であった。けれど、気楽に思えていたのも束の間、ウィリックは徐々に視力が落ちてきていた。最初こそ気にならない程度だったが、日が経つにつれてただの視力低下で片付けられない事になってしまった。ウィリックがかかった呪い、それは簡単に言えば


『未来が見える代わりに目が見えなくなる』


 というものだろう。もっと細かく言えば未来が見えるのは睡眠を行ったタイミングであり、夢を見るときと同じような感覚で、未来で自分に起こる事象を先取りして知ることができる。無駄に便利なのが、一度見た未来はその事象が起こるまで忘れることがないということ。だから、常に未来を知った状態でいられる。

 けれど、未来を見るたびに徐々に視力が落ちていく。最初は1時間ほど先の未来が見えるが、視力が0.5ほどになっており、未来を見るたびに見える未来の時間は増えていったが視力はより悪くなっていき、最終的には盲目になってしまう。ウィリックにとってそれがメリットかデメリットかは判断できなかった。けれど、ジェイドにはただただ後悔と自責の念が積もっていった。










ーーーーーーーーーー

「ジェイドは悪くない。俺の計算が甘かったのが悪いんだ。」


「でも…!あんたはあいつを殺したら呪いにかかること、わかってたんだろ?なのに、なんで自分から…」


「あそこでためらってたら、お前が殺されてるか俺と同じように呪いにかかっているか、どちらかの可能性があった。あれ以上被害を出さないためにはすぐに殺すのが得策だった。それに……俺はジェイドやルーラルたちを私利私欲のために巻き込んだ。これくらいの罰はあっていい。」


 レイナに会いたいというウィリックの勝手な願いによって、ルーラルを含む数人の団員に被害が及んでしまった。攻略者として生きている以上団員を巻き込んでしまい死なせてしまうこともある。しかし、基本的に実力重視の世界なので自分で人を殺めない限りは罰されることはない。そのため、呪いを背負って生きていくことはウィリックなりの罰なのであろう。


「それに、お前だって俺にもっとキレていいんだぞ?身勝手な理由で巻き込んだ挙げ句罵倒までしたんだ。最後だって、お前が殺していればお前が呪いにかかっていた可能性があった。どこまでも自己中な考えだったんだよ俺は。」


 リーベの情報から、レイナは自分が死んだときに殺した人物に呪いをかけるよう組み込んでいることをウィリックは知っていた。死霊となった存在でもおそらくその仕組は残っている。しかし、《ヘルヘイム》の死霊は特定の人物の会いたい人が死霊となって出てくるという性質上、死霊は基本的に対象の攻略者のみ攻撃する。レイナの対象がウィリックであるならばジェイドがレイナを殺した場合は呪いが発動しない可能性があった。しかし、それも確証があるわけではなかったことなので場合によってはウィリックがジェイドを身代わりにしたような結果になることもあり得た。


「…どうするんだよ。そんな眼じゃ攻略者なんてもう続けられないだろ。」


「さぁな。姉さんに養ってもらうか、まぁ出来ることを探すさ。……いつまでそんな顔してるんだよ。悪いのは俺だ。せっかくならお前が新しく団長として引っ張ってくれよ。とりあえず、この眼診てもらうから俺はしばらく離れるからな。頼んだぞ、ジェイド。」


 呪いによって視力の低下した眼を診察してもらうため出かけたウィリック。ジェイドは出ていくウィリックの背を何も言わずに見送る。


(…もし、俺がしっかり攻撃を当てていれば……このままだと、『シンエン』も壊滅しちまう……)

「……はぁ。今回は大丈夫だと思ってたんだけどな。」












ーーーーーーーーーー

 ジェイドとウィリックは、心身の休養を最優先していたため他の団員に攻略の結果をまだ報告していなかった。ウィリックは一旦休養を取るため、ジェイドが1人先に拠点へと帰還する結果となった。


「…!ジェイド!戻ってきたか!無事なのか!?」


 ジェイドが拠点に戻るとジェイドたちの帰還を待っていた他の団員が心配して様子を見に来た。ジェイドたちが攻略に出向いてからおよそ2日経っていたため無事でいるかが全員心配であった。


「…あぁ。俺は無事だ。ウィリックは……無事じゃないけど生きてはいる。他の奴らは……悪い。もう…」


「そんな……ルーラルも、他の奴らも、お前と団長以外は…全員死んだのか?」


「あぁ、ウィリックは呪いにかかって、今状況を診てもらってる。ウィリックは戻るのに数日かかると思う。」


 受け止めたはずなのに、呑み込んだはずなのに、一つ一つ報告をすると、心がひどく苦しくなってしまう。仲間の死には、いつになっても、なれることができない。


「いろいろキツかったよな。俺達は今から別の迷宮(ダンジョン)の攻略に行くけど、しばらくは1人のほうがいいよな。」


「……いや、俺もついていく。俺はウィリックほど疲労が溜まっていない。」


「…?流石に帰ってきてすぐに攻略はきついだろ。無理すんなって。あえてキツく言うけど、疲労溜まってる足手まといが居てもこっちが困るんだ。今はとにかく休んでろ。」


「いや、行く。なんなら俺のことなんて気にしなくていい。俺は後ろで指示だけ出してお前らの邪魔はしないように極力努力するから。」


 なぜジェイドがそこまで攻略に行きたいのか、他の団員は一切理解できない。そこで、ある団員がジェイドに対して不満を持った表情で言う。


「なぁジェイド。お前今、指示だけするって言ったか?それはつまり、自分は安全なところで見守って報酬だけ美味しくいただこうって言ってることだよな?」


 『シンエン』では、迷宮(ダンジョン)攻略の報酬は一部はギルド内の資金とするが、それ以外の多くは実際に攻略に行った者に与えられる。攻略に行った者に報酬は平等に与えられるため活躍による報酬の増減は基本的にはない。そのため、攻略に行ってしまえば報酬は必ず受け取れるのである。


「そう捉えたいのならそうすればいい。それでも俺はついていくけどな。」


「おい!お前、まさか……自分の報酬を多くするために仲間を犠牲にしたんじゃないだろうな?」


 前述した通り、攻略の際の報酬は平等に与えられる。つまり、攻略の際の人数が少なければその分一人あたりの報酬は増える。迷宮に入ったときの人数が多くても中で犠牲が多ければその分人数が少なくなり報酬が増える。


「団長に呪いをかけたのも、お前なんじゃないのか?お前は、俺達のギルドを崩壊させるつもりなんだろ?そうなんだろ!?」


 ここで否定すれば、まだ誤解を解くことはできるのかもしれない。けれど、ジェイドにはもう、『シンエン』に残る理由がない。ジェイドは自分が厄病神のような人間であることを自覚している。そのため、自分と居ても死の運命に抗える強力な攻略者と出会うことを目的として様々なギルドを転々としてきた。今回は、ウィリックの存在に少しばかり希望を持ったのだが結果的にはまたイマイチな結果となってしまった。


「ジェイド、もし今のことが違うなら否定してくれ。もし否定しないなら今すぐにでも本部で脱退の手続きをする。」


「俺のせいで仲間が死んだか……間違ってはないな。」


 ジェイドがなにかした訳では無いが、直ぐ側に居たルーラルの死を防げなかったことはジェイドとしても後悔している。正直には言わず、少し回りくどい言い方だが。


「もういい、お前を『シンエン』から脱退させる。本部に行くからついてこい。」


 そもそも最初から脱退するつもりだったのでむしろ事が早く進んでいい気分だ。ジェイドは仲間に対する申し訳ない気持ちをそう言い聞かせて隠し続けた。












ーーーーーーーーーー

 その後からは、指示されたとおりに手続きを済ませるだけだった。これからどうするればいいだろうか。また別にギルドに加入するべきなのだろうが、ここまで来ると悪名高い自分を引き入れてくれるギルドはもうほとんど残っていない。いっそのことソロで攻略するか。そんな事を考えていると、


「なぁお前、ジェイドって言ったか?」


 見知らぬ青年に話しかけられた。いや、一応知ってはいる。ファルタ・レイリオ、攻略者になりたてで、上位の攻略者に喧嘩振って勝ったんだっけか。そんなやつが俺に何用か。面倒くさそうなので一旦知らないフリでもしてみる。


「お前は誰だ?あまり見かけない顔だが。」


「俺はファルタ。《フィンブルヴェト》ってギルドの団長だ。率直に言うと、ジェイド、俺のギルドに入ってくれ。」


 こいつは何を言ってるんだ?今ここで俺達が何を話していたか聞いていなかったのか?ジェイドが表向きにはギルドに非協力的であるのは理解できるはず。よほどのもの好きか、何か裏があるのか。


「俺をギルドに入れる?何が狙いだ?」


 とは聞いてみたものの、おおかた予想通りで、ただの人員不足なだけらしい。正直、加入するべきか悩んでいる。上位の攻略者に勝ったということはそれなりに実力があるのだろうが、運が重なって勝利した可能性があるため判断材料としては乏しい。ならば、試してみるまでだ。

「じゃあ俺とやろうぜジェイド、真剣勝負をさ。」


「…へえ、俺と闘うのか。良いだろう、受けて立ってやる。」


「じゃあ俺が勝ったらお前を俺のギルドに引き入れる。」


「俺が勝ったら俺のために動いてもらう。」


 どれだけこいつは強いのか。希望も持ちつつ半分は流れで、俺はファルタ・レイリオについて理解してみることにした。




結局ジェイドの外伝かウィリックの外伝かよくわからなかった外伝。タイトル的にはウィリックだけどジェイド目線で進んでいるし、まぁ2人の外伝ってことで。ジェイドの外伝は別であるけどね。

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