世界樹の幹
「とりあえずクルーシェの印を相手につけられるようサポートする感じで動こうか。クルーシェは引き続き前線で攻めてって印の準備。ミーレックは戻ってマスリアと入れ替わって。マスリアはクルーシェのアシスト、ミーレックは魔力の流れから罠の位置をなるべく探り当てておいて。チューラはクルーシェの防御力を高めといて。」
ガングレトの神術の招待を暴いたアラナクは瞬時に他の4人に指示を出す。マスリアとクルーシェは指示通り敵の攻撃を警戒しつつ前へ出る。
「クルーシェ殿は印をつけることに集中してくだされ。私がやつの気を引きますので。」
「わかった。無理はするなよ。共鳴無法《共鳴の印》。」
「真剣秘術《破格千断》!」
クルーシェは最初と同様に自身の手に魔力で作った印を浮かび上がらせる。マスリアは眼の前のあらゆる攻撃を切り裂く破格千断で道を切り開く。その動きに反応したガングレトは無数の氷魔法を放つ。
「冷気とは、なかなか珍しい魔法であるな。だがしかし、私の真剣秘術の前にそのような魔法は無意味ですぞ!」
マスリアの視線の先には巨大な氷の塊がマスリアめがけて向かってきている。しかし、マスリアは決して恐れ慄くことなく剣を振るう。その斬撃はその巨大な氷塊を真っ二つに斬り伏せた。
「さすが、といったとこかな。ボクやアラナクでも、これでもかって位いっぱいバフしておかなきゃあいつの剣には勝てなそうだね。」
マスリア・ホノノム。ユグドラシルの前衛担当。ジェイドやイスカと同じ非神術者。型にはまらない行動が苦手で、誰もが『基本』と捉える行動をよく取る。その分、基本という観点では誰もが目を張るものであり、三大秘術の一つ『真剣秘術』を完璧に扱いこなす。純粋な剣さばきで彼に勝てるものはそうそういない。
「そろそろいけますかクルーシェ殿?」
「オーケーだ。」
「では、真剣秘術《天剣乱舞》!」
マスリアの掛け声と同時にクルーシェが飛び出す。基本的にマスリアが前に出ているため標的は彼となる。しかし、マスリアはチューラによる防御魔法によってある程度の攻撃ならばほぼ攻撃を喰らわない。
マスリアが敵の視線を誘導し、クルーシェがガングレトの死角となる場所についたとき、クルーシェは自身の手をガングレトに当てる。
「よし、触ったぞ。ミーレック、罠の場所を教えろ!チューラは回復頼む!」
「オッケー。大きめの罠はだいたい4箇所。あっちの角と僕たちよりも手前のあそこの角、あと部屋の入口がない4辺の壁かな。」
「わかった。それじゃあとは頼んだぞ。」
「了解。マスリア、戻っていいよ。あとは私とミーレックで相手するから、チューラの護衛しておいて。」
「了解です団長殿。」
指示を受けたマスリアはアラナク、ミーレックと交代してチューラの側につく。チューラは前線に出た二人.......ではなく、罠へと向かうクルーシェに対して回復の準備をする。
「クルーシェちょっと待ってね。過重無法《過重被害》。」
ミーレックの放った神術はガングレトに呪いのように纏わりつく。しかし、ガングレトの体には大きな変化は出ない。
「いいよクルーシェ、受けて。」
ミーレックから合図をもらったクルーシェは自分から罠のそばに寄った。それと同時に、当然クルーシェのすぐ目の前の罠が発動して大きな爆発が起こる。
「お〜。思ったよりも強力だったねー。クルーシェ、大丈夫そう?」
「......はい、無事です。確かに強力ですが、チューラの回復魔法で被害は殆ど無いです。」
「そりゃ良かった。けど、あっちの方は結構痛そうだね〜。」
クルーシェの無事を確認したアラナクは、振り返って、その先にいるガングレトの方を向く。クルーシェの爆発と同時に、ガングレトはうずくまり、膝をついていた。
「あの感じだと相当応えたっぽいね。さすが、道連れの天才くんは違うねー。」
「表現が悪いな。賢い戦術と言ってほしいもんだな。」
クルーシェ・レリテクス。ユグドラシルの副団長。彼の持つ神術は《共鳴》。魔力で生み出した印を敵につけることで、自分が受けたダメージを印をつけた相手も同様のダメージを受ける。印は最大3つまでつけられ、同じ人物に印を複数つけても意味はないが、複数人につけることで同時に複数人にダメージを与えられる。
「それに、あの主が苦しんでいる理由の半分はお前の神術だろうが。」
「まあね。今は大体3倍くらいにはなってるのかな。」
ミーレック・ジュイス。クルーシェとは同期でありユグドラシルにもほぼ同時期に加入した。彼女の神術は《過重》、対象の受けるダメージや魔力消費量など、様々なものの総量を倍にすることができる。また、魔力探知に優れており、一定の範囲内の魔力の流れを正確に読み取ることができる。
「じゃあもう罠に引っかかる必要はないか。さっさとケリを付けてくれ。」
「はいよ、じゃあちょっと下がって...........て、ん?」
悶えてるガングレトから距離を取って落ち着いてとどめを刺そうとするミーレックだが、先程までとはまるで違う歪な魔力がまとまっている空間があることに気がつく。
ミーレックはその空間を見て、直感で危険を感じ取った。この罠は発動させてはいけない気がした。しかしその時、ガングレトの様子が激変する。
「.....!?何が起こった!?」
「な、何だこの魔力は!?」
先程まで自分の罠によって苦しんでいたガングレトだが、それが嘘であったかのように再び立ち上がった。更に、先程とは比べ物にならないほどの魔力を纏っている。
(何が起きたんだ?あいつの異常な強化はボクがさっき見つけた罠のせいか?でもボクは見つけただけだ。あの罠に触れてなんて......いや、まさか.....前提が間違ってる?)
ガングレトの神術は《策略》、自分の魔力を込めた罠を設置し、何かしらのトリガーで罠を発動させることができる。
(罠の発動条件は、罠に触れるだけじゃないのか.....?)
ガングレトの罠は、決して触れることだけを条件にするわけではない。複雑な条件を設定することも可能であれば、至極単純な条件にすることも可能である。更には、条件を行動に限らず、感情の動きにすることも可能である。
例えば、罠付近に勝利を確信した者がいる、など。
「ミーレック!なんでこうなったのかは最悪どうでもいい!今はこいつの対策に集中しろ!」
「.....ごめん!でも、こいつの魔力、やばすぎる。ドス黒い魔力があいつの全身を蝕んでいる感じ。さっきみたいにはいかないと思う。」
「そっか。そりゃそうだよな。俺の印も、お前の魔力も解けてるっぽいしな。マスリア、さっきと同じ感じに攻めて」
「策略無法《無慈悲なる謀略》。」
予想外な状況に焦りつつも落ち着いて状況を把握しようとする5人。しかし、そんな状況も気にせずガングレトは神術を放つ。ガングレトの手元に異常な大きさで歪な形の火球が生成される。
無慈悲なる謀略、自身の設置した罠を全て解除すると同時に解除した罠に仕組まれていた魔力を一点に集中させて攻撃する奥の手。そして最後にミーレックが確認した罠によって魔力量が膨れ上がっているガングレトの魔法は簡単に防ぎきれるものではなくなっていた。
「なんと!ここまで強力な魔法を使えるとは!」
巨大な火球は、今にも5人に向けて放たれようとしているが、誰一人として焦らずその火球を見ている。
「ここまですごい魔法は私も見たことないなー。でも、さっき言ったよね。相性が悪いって。」
余裕そうな表情のアラナクは前に出て背中の剣を抜く。それと同時にガングレトは火球をアラナクめがけて放つ。今から魔法を避けようとしてもアラナクは避けきれない。その時アラナクは剣を魔法に向けて突き立て、魔法に向けて剣を振る。
「正直不安だったな、ここまで大きな魔法は初めてだったから。けど、うまくいってよかった。」
アラナクに向けて放たれた魔法はアラナクが剣を振った瞬間、突如として消えてしまった。アラナクのその剣には炎が纏われておりごうごうと燃え上がっている。
「いい魔法だったよ。だから、ありがとう。私たちの得点となってくれたことに感謝するよ。」
炎をまとった剣を構えたアラナクはガングレトの元へと歩み寄る。
「女神の構え《天使の制裁》。」
アラナクの剣は力を使い果たしたガングレトの体を両断した。
侍風なキャラが欲しかったのでマスリアというキャラを作りました。マスリアの名前はサムライと武士のローマ字表記のアナグラムですね。(SAMURAI➡MASURIA)(MONONOHU➡HONONOMU)




