途中経過
「今回の選別戦は、どこも魅力的な戦闘ばかりしていますね。」
闘技場の観客席、王国守護攻略者は迷宮を攻略している攻略者たちの戦闘に目を奪われていた。選別戦一次審査の時間ももうじき半分を過ぎようとしていた。
レセカは迷宮で行われている戦闘に素直に感心するが他の者達は正直あまり楽しめていないらしい。
「確かに戦闘はどこも一級品だけど、個人の技術はどうだかな。」
レミエニが乾いた淡い唇を舐めながら言う。
「王国守護攻略者っていうのは最強の攻略者のことだ。最強のギルドじゃない。つまり、この審査で求められるのは個人の実力。ギルド間での連携力はその次だ。」
求められているのは個人の実力、それがあってこその連携力である。前提の力を持ち合わせていないものには上の者になる資格がない。
「正直、今のところ個人で俺達と同等になれそうなやつは今のところは見当たらねえな。全力を出していないだけかもしれねえが、相手に対して甘ったるい考えしてる奴らはまず俺達みたいにはなれない。」
「なに偉そうなこと言ってんだいラノス。あんただって、昔は似たようなもんだったじゃないか。」
ラノスが感想を述べるとそこに背の高い老婆が現れる。
「げっ、なにしに来たんだよクソババア。選別戦なんてあんたは興味ないだろ。」
「何いってんだい。あたしだって気分が変わることくらいあるさ。それに、あんたの弟弟子たちに見に来いって言われたもんだからねえ。どうせもう引退した身だ、暇な時間の有効活用ってやつさ。」
「へっ、なにが有効活用だ。休む時間すら与えてくれなかったあんたが......ちょっと待て、弟弟子だと?どういう意味だ?」
ラノスと突如現れた老婆は親しげな口調で会話を続ける。ラノスと同期のリーベ、レミエニはその様子を見て微笑する。謎の老婆との関係性が気になったレセカは思い切って聞いてみる。
「えーっと.....ラノスさん、そちらの方はいったいどなたですか?どのようなご関係で?」
「レセカ、知らないのですか?元王国守護攻略者2位、歴史上唯一の非神術者での選抜、そして歴代最長の王国守護攻略者である、まさに歴代最強の攻略者の一角、ガーデニクス・デイドルド様ですよ。私たち3人は、ガーデニクス様の弟子として切磋琢磨過ごしていましたから。」
「え!?最強の.......攻略者!?すみません!調子に乗った発言でした.....撤回します。」
「いいさいいさ、そういうかたっ苦しいのはやめな。それにあんたはこんなバカ小僧よりはましな性格してるっぽいしねえ。」
「....そんな話はいいから俺の質問に答えやがれクソババア。」
先程から話を無視され続けているラノス。張り上げた声でガーデニクスに詰め寄る。
「悪かったね。そんで、弟弟子の話だったかい?そのまんまの意味さ。この選別戦にいるのさ、あんたたちの弟弟子が二人もねえ。」
「二人もいるのか。誰だ?」
「一人はギルド《エインヘリャル》の団長、イスカ・ゼルフェリート。もう一人は、ギルド《フィンブルヴェト》の団長、ファルタ・レイリオ。」
「イスカってのは聞いたことがあるな。確か最近最強のギルドって言われてるとこの団長だろ?ギルランでも1位だった。もう一人のファルタっていうのは誰だ?」
ギルランとはギルドランキングの略で、攻略者一人ひとりの実績を元に王国守護攻略者になる可能性のある攻略者の実力を順位に表して表にしたものである。簡単に言うと攻略者の強さのランキングである。ちなみに、攻略者個人のランキングとギルドとしてのランキングの2つがある。ラノスがガーデニクスに問い出した今度はディーレがラノスの質問を遮る。
「ガーデニクス様、ファルタくんがあなたの弟子というのは本当でしょうか?だとしたら何故?あなたが弟子を作るのはあまり好まない正確なのは知っていますが.....」
「まあ、それも気分だ。まああいつらは事情も事情だしね。弟子として育ててたのは何年か前だが、この選別戦の前にも修行をつけてやったのさ。」
「なるほど.....もしよければファルタくんにどのような修行を行ったのかを」
「だから俺を無視してんじゃねえ!」
先程から不遇な扱いを受けているラノスがいよいよキレた。誰だって自分の話を一切聞かれなければイライラするものだ。
「悪かったって。それで、ファルタが誰かって話だったかい。まあ正直なんて説明すればいいのか分かんないんだがねえ。」
「じゃあ僕が説明しますよ。最近のファルタくんのことなら、多分ガーデニクス様よりも知ってますよ。」
ガーデニクスはあくまで師匠としてファルタを見てきただけ。攻略者としてのファルタはおそらくディーレのことを知っているだろう。ディーレは現在のファルタの功績を説明する。
「ふーん。ソロギルドのAランク攻略か.......それなりに実力はあるか。まああんたが修行をつけたって言うならそれぐらいできて当然か。」
「でも今のところ主は討伐ゼロだぞこいつ。私らのときより戦績悪いんじゃねえか?」
「送り出したときはもう少し余裕持って突破できるくらいには育てておいたつもりなんだけどねー。戦闘のときもしっかり考えながら攻略できるようなやつなんだが.....」
「ガーデニクス様、そのファルタって子と戦ったんですか?」
「まあね。ただ、戦ったって言ってもあいつが自分の弱さを克服できるように動いたしね。あたしは実力の半分も出してないよ。」
「そりゃそうだろうな。全力のあんたに勝てるやつなんてそうそういない。」
ガーデニクスは、ファルタとの戦闘の際に一切本気を出していない。ラノス含む守護攻略者は全員ガーデニクスの実力に尊厳と恐怖を覚えていた。
「さっきも言ったけど、あたしは選別戦を見に来たんだ。せっかくだからこの特等席で見させてもらうよ。」
ガーデニクスがラノスとレミエニの隣に座ったとき、運営者の一人がレセカのもとに報告をしに来る。
「レセカ様。たった今、第一次審査の時間が半分を過ぎました。それと同時に、第一次審査中盤時点での攻略者とギルドの主討伐数の戦績も出揃いました。これより、参加中の攻略者に情報を共有します。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「もう半分か......いったいどんな状況になってるのか、観物だな。」
ーーーーーーーーーー
ファルタとエルナがアイリスたちと分かれて数分、分かれ道の多い部屋へと出る。
「どっち行けばいいんだ?」
「どの道も奥の方で魔力が激しく蔓延ってる。多分どこに行っても戦闘中なんだろうね。」
おそらく、どこも主、もしくは他のギルドとの戦闘で危険な状態なのだろう。そんな場所にわざわざ行っても漁夫の利を狙えるかは怪しい。どの道を進もうか悩んでいるとき、右端の道から二人の攻略者が出てくる。
「あれ?ジェイドとレイシャじゃん。」
分かれ道の一つから最初に分かれた同じフィンブルヴェトの団員、ジェイドとレイシャが現れた。
「偶然だな。どうやら、お互いに道に迷って適当な道を歩きすぎたのかもしれないな。調子はどうだ?」
「正直全くよくない。事情は追々話すけど、主討伐なんてやってる場合じゃなかった。まだ一体も倒せてない。」
「わかった。事情があったんならしょうがないしな。それに、俺達だってまだ一体しか討伐してない。このままだと一次審査突破も怪しくなってくるな。」
ファルタたちが合流し互いの状況確認を行っているとき、迷宮全体に運営の者からのアナウンスが入る。
『現在を持って、第一次審査《混合迷宮攻略戦》の経過時間が30分となりました。これより、現在の主討伐数上位5位までのギルドとそのギルドの主討伐数を公開いたします。』
「もう半分か.....上位は今どのくらい倒してんだ?」
運営の者がギルド名を言い放っていく。
『第5位のギルド、ヴォルヴァ・ブルームス・アイリスク・アーヴァンス・ビフレスト・トラスト・ギムレー・ヒュンドラ・シンエン・ヘイティ。以上のギルドです。主討伐数は2体となります。』
運営者が淡々とギルドを読み上げる。第5位には、オリエンタことリタのいるトラスト、ファルタに最初に襲いかかったシスレスのいるアイリスク、アイリスたちのいるブルームスなど、知っているギルドもいくつかあった。
「第5位だけですでに10ギルドか.....最低でもこいつらは超えないと二次審査に行けないって考えたほうがいいな。」
『続いて第4位のギルド、フェラーグ・ディザスター・セイズガンド・ユグドラシル・ギュルヴィ・ヴィーグリーズ。以上のギルドです。主討伐数は3体となります。』
第4位も発表されたが、4位のギルドは7ギルドと、5位と大きな差はないように思える。第4位には、アラナクのいるユグドラシルの名前があった。
(アラナクたちは今4位か。早く追いつかねえと。)
『続いて第3位、ニザヴェッリル・イザヴェル・フィンブルヴェト。以上のギルドです。主討伐数は4体です。』
「「「「は?」」」」
その場にいたファルタたちフィンブルヴェトの団員たちは驚愕していた。それもそのはず。最下位付近にいると思ってた自分たちのギルドが現状第3位であったのだから。
「どういうこと?ボクとジェイドは一体しか倒してないよ?」
「私達だってまだ一体も倒してない.....」
ここにいる4人で討伐した主の合計は1体。となると、残りの3体の在り処は自ずと見えてくる。
「それってつまり、残りの3体、ライカが全部一人で倒したってことか!?」




