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世界の終末が望むとき、神々は迷宮を制覇する  作者: 柊ヒイラギ
第三章:強者は集う、己の野望が為に
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過去との決別

「にしても、よく私と戦おうなんて思うね。ギルドにいたときは、私に一回も勝てなかったのに。」


 ファルタとネリオスが戦闘している時、エルナもまたアイリスと戦闘していた。魔法を主として戦うエルナにとって剣術も使用してくるアイリスは相性が悪かった。


「別に、私はあんたに負けると思ってないからね。勝てなくても、せめて最低限抗ったうえで負けたほうがかっこいいでしょ。」


「.......なんていうか、変わったね、あんた。昔はもっと遠慮がちな性格してたじゃない。」


「まあ、環境が変われば人も変わるってことかな。ブルームスは元々知り合い同士で結成されたギルドでしょ?今のギルドの人たちはさ、そういうの一切気にしない人ばっかりだからさ、気を使うとかもいつの間にかなくなってた。」


 エルナがフィンブルヴェトに入ったとき、緊張していたエルナを見てファルタとジェイドは気にしなくていいのにと、和ませられるように振る舞っていた。エルナとしてもそういった行動をしてくれていたことは嬉しかった。


「じゃあ、一個疑問なんだけどさ。エルナはさ、なんで()()()()()()()()()の?」


 戦闘を開始したときからエルナがアイリスに対して本気を出していないのはすぐ分かった。それもそのはず、エルナは神術を()()使()()()()()()のだから。ただの魔道士が魔法だけで剣士に勝つのは無理があるのに。


「別に?魔力を温存しておきたいだけ。一次審査は主を倒さなきゃいけないのにあんたなんかに無駄な魔力を使ってたらもったいないしね。」


「じゃあさっさと負けて休憩してれば?それとも彼のことが心配なのかな。また私のせいで仲間が死んじゃうって。」


「ファルタが死ぬ?どうやったらそんな未来が起こり得るんだか。いいよ、そんなに見せたいなら見せてあげる。封神無法《北欧の使者(スキールニル)》。」


「っ!?こいつって.....」


 エルナが呼び出した主はスキールニル。神術は《瞬間移動(テレポート)》。かつてエルナたちのギルドの団長を死なせた原因となった主。アイリスと会うつもりはなかったが普通に優秀な神術であるために以前一人で攻略して手に入れておいた。


「ほら、あのときの因縁の相手でしょ?大丈夫、変なところには飛ばさないように指示してあるからさ。」


「.....ほんと、いい性格してんね。私の嫌なとこを正確についてくる。」


 アイリスの弱点、それは予想外な状況に出くわすこと。アイリスは見た目に反してかなりの戦術家であり、作戦外な出来事には対処が遅れる。それが過去に遭遇した敵であるとアイリスもかなり動揺する。


「苦手でしょ?こういう想定外な状況に急に陥るのは。だから私達であんたをフォローしながら戦闘してた。でも、今は1VS1。この状況のあんたなら、勝てると思うんだけど。」


「確かに、これは想定外な展開だな〜。けど、私が変わってないなんて根拠、どこにある?」


「根拠?ないよ。ただの勘。だって私は神様を操る攻略者だよ?神様を信じるのは当たり前でしょ。」


 先手、エルナが魔法を放つ。多大な魔法が放たれたがアイリスは軽々と躱す。しかし放たれた魔法はスキールニルによって魔法が別の場所に移動する。移動した魔法はアイリスの近くに現れて、そのままアイリスとは別の場所に魔法は向かっていく。


「あれ、魔法が....こっちに来ない?あんた、なにしたの?」


「惜しいな〜、本当はもっと手前に落とすつもりだったんだけど。」


「わざと、外したの?なんで、無差別な位置に攻撃したの?」


「わざと?いやいや、当てる気しかなかったけど。ただ制御ができてないだけ。下手すれば、私がやられる可能性だってあったよ。でも、こんくらいしなきゃ当たらないでしょ?」


 アイリスは攻略者の中でもかなりの実力者。単純な魔法を簡単に受けるようなやつじゃない。だからこそ、運の絡んだギャンブル攻撃に可能性を込めて魔法を放った。結果は外れてしまったが予測できない攻撃はアイリスにとって脅威でしかない。


「そんな攻撃、あんただって喰らうかもしれないのに。」


「だから?実際の迷宮ではそんな甘えた考え意味がない。多少の自己犠牲は覚悟して挑む必要がある。それができない人は、ここじゃ生き残れない。だからこうしてる。」


「.....ほんと、変わったね。」


 アイリスはエルナの目に追えぬ速度で距離を詰めてきた。エルナはそれに対して多量の無差別攻撃を放つ。当たらなかった攻撃はスキールニルの神術で別の場所に移動する。数多の魔法がアイリスとエルナを襲う。


(いくら何でもこんなに無差別に攻撃したら魔力の無駄になるだけなはず。耐えれば最終的に私が....)


 アイリスが魔法を避けることに集中し始めた時、ふと異変に気づく。


(.....?エルナが、いない?)


 魔法を避けることに集中していたアイリスはエルナの姿がなくなっていたことに気がついた。周囲を見渡すがエルナの姿はどこにも見当たらない。


(どこに行った?まさか....ファルタの方に逃げたんじゃ.....!)


 アイリスがファルタとネリオスが戦闘している方向を向いた瞬間、アイリスの上部に一つの影が現れる。


「そうやって焦って隙を晒すところは、変わってなくてよかったよ。」


「っな!?」


 アイリスの上空から魔法を構えたエルナが降ってきた。エルナはアイリスが意識をエルナ以外の別の場所に移す瞬間を探っていた。そのタイミングで瞬間移動を()()()()()に行ってアイリスを狙った。


「あんた、さっきは制御できてないって.....」


「まさか、嘘つくぐらい普通にするでしょ。正確な位置に移動するくらいできるって。」


 エルナの魔法は勢いよくアイリスの元へと放たれた。魔法はアイリスに命中する。しかしアイリスはそれで怯むほど弱くはなかった。


「確かに不意打ちだったけど、あんただって空中じゃ簡単に身動きは取れないでしょ!?魔道士のあんたが近距離で私に勝てるわけない!(勝った!私の.....って、へ?)」


 アイリスは確かに勝ちを確信していた。近距離戦において剣技を使えるアイリスと魔道士のエルナの間には明らかな戦力差があった。しかしその時、確かにエルナの手には淡く刀身が輝く剣が握られていた。


「一体いつからそんな固定概念が生まれたの?魔道士が剣を扱えないっていうさ!」


(エルナが.....剣術?しかも初心者によくありがちなミスも補えてる.....)


 予想外な状況に弱い、魔道士は剣を扱わないという固定概念によってアイリスの思考は停止する。


「これが、今の私だ!」


 エルナの攻撃を受けたアイリスはその場に膝をついて倒れ込んだ。


ーーーーーーーーーー


「お願いジェイド!私に剣技を教えて!」


 選別戦が始まる前、ファルタがライカを勧誘した後の話。エルナは1人修行に向かおうとするジェイドを引き止めて剣技を教えてもらうよう頼み込んでいた。


「は?お前が剣技を?理解できない。お前は魔導士だ。後方から俺たち前衛をサポートする係だ。お前がわざわざ剣を振るう理由はないはずだ。」


「それはそうだけど....それでも、もしものときのために覚えておいて損はないからさ。できれば選別戦までにある程度は覚えておきたいんだよね。」


「.....そうか、わかった。最低限は教えてやる。ただ俺は別に教えるのが上手いわけじゃないからな。あと、教えられるのは今日と選別戦前日の2日だけだ。今日基礎だけ教えてあとは自力で何とかしろ。」


「......!ありがとう!」


ーーーーーーーーーー


 エルナは事前に近距離での戦闘でも対応できるように剣術をある程度扱えるようにしていた。不意を突かれたアイリスには対応できる状況ではなかった。


「これで、今回は私の勝ちね。」


ーーーーーエルナVSアイリスーーーーー


 勝者:エルナ・ヒェレナーク





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