好きって感情
「そんじゃ、俺らしくないことしてみるか。」
過去に囚われていたジェイドであったがレイシャに自身の考え方と生き方を問いただされたことでジェイドはまた強くなっていく。
「俺らしくないこと?いったい何すんの?」
「俺は理論が通ってない作戦が嫌いだ。いや、嫌いだった。だが、それじゃ前に進めねえ。だから、たまにはふざけた作戦出すのもありなのかもなって思っただけ。」
「ふざけた作戦ねえ。まあいいけど、なにすればいい?」
ジェイドらしくない作戦。どんなものかと思って聞いてみたレイシャ、その時ジェイドからとんでもない作戦が提示される。ジェイドはあたりを見渡している。今ジェイド達がいる部屋にはミーミルに対抗できず苦戦している攻略者が何人かいた。
「今ここにいる俺達以外の攻略者は.....32人か。レイシャ、今からここにいる攻略者たち虱潰しにぶん殴ってけ。絶対に躊躇するなよ?死なねえ程度にぶっ飛ばせ。」
「ふーん。理由は?」
「多分本体は攻略者に化けてる。とは思ったが、実際その可能性は低い。一か八かの賭けだ。」
「ははっ!一か八かでもいいじゃん。ボクたちが勝てれば他の攻略者がどうなろうとどうだっていいし。」
レイシャの言うとおりだ。そもそも他の攻略者に気を使っている状況が間違っている。ときには、倫理観のない行動だって必要なのだから。
「さーてと、迷宮の嫌われ者になるとするか!」
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「これ、どこまで逃げればいいんだ?」
シスレスに勝利したファルタとエルナはファルタを狙う魔導士から逃げ続けていた。しかし、どれだけ逃げても一向に撒ける気がしない。
「何が奴らをここまで動かしてる?金か?だとしてもどんな大金積んだって殺人罪に問われることしたら意味ねえだろ。」
「....多分あいつらに指示してるのはそれなりに実力のある攻略者だと思う。そして、そいつも多分選別戦に参加してる。」
「参加してるって、根拠は?」
「どれだけお金を積まれても、いや、資産や権力でどうにかできる報酬じゃ殺害の容疑を被ってまでの行動はしないはず。でも、この選別戦なら、誰もが欲しがる報酬がある。」
「....優勝した時の、望みを叶えられる権利、か。」
どんな望みでも叶えられる権利。それがあれば個人の望みが100%叶う。殺害がバレてしまっても無実の罪にすることも出来る。報酬がこの権利なら行動に移す者がいてもおかしくはない。
「でも、優勝者しか手に入れれないものを報酬にするなんて、一体誰が....?」
ファルタとエルナが首謀者の正体を探っている時、目の前に何かが降ってくる。
「誰!?」
目の前には紅く染まったショートの髪型の女性が剣を突き立てていた。その姿から、おそらくエルナを狙っての攻撃だろう。
「誰、だなんて。私のこと忘れちゃったの?私はあなたのことよーく覚えてたよ。私の恋心を踏み躙ったんだから。ねえ?エルナ・ヒェレナーク。」
「...!あんたもしかして、アイリス?」
「知り合いか?」
「.....アイリス・シクラメン。私の前のギルドで副団長をやってた。実力は....当時の私よりは強かった。」
眼の前に現れたのはなんとエルナの旧所属ギルドの副団長のようだ。
「そこの赤毛くんは、エルナちゃんの仲間?あ!もしかして彼氏さんだったりするのかなー?」
「彼は......ファルタとはそんな関係じゃない!(少なくとも今は....)あんたのギルドを抜けたあとに私を勧誘してくれたのよ。」
「ふーん?じゃあファルタ君だっけ?少し質問してもいいかな?」
ファルタは答えようかどうか迷ったがファルタの迷いなど一切気にせずアイリスは話し始める。
「なんでエルナちゃんみたいなクソ野郎を仲間にしてるの?もし無理やり仲間にさせられたんなら私のギルドに来てもいいんだよ?」
「無理やり?いやいや、エルナをうちに引き入れたのは俺の方だ。エルナはその要望に応えてくれただけだ。それに.....エルナがクソ野郎?ここ数ヶ月共に行動してきたが、そんな素振りはなかったけどな。」
「それは、彼女の表の顔しか知らないからじゃない?ファルタ君は彼女がどんな性格なのか知らないだけ。教えてあげるよ。彼女は、自分の身体で男を誘惑して人の好意や愛情を弄ぶだけ弄んで最後は興味をなくして使い捨てる。それが、エルナ・ヒェレナークっていう人間の本当の顔なんだよ。ファルタ君は、この事実を知ってもエルナを仲間だと思っていられる?」
もちろんそんな事実は存在しない。全て、アイリスがエルナの評価を下げるために作った嘘である。しかし、エルナはファルタに過去を話していない。昔の自分の性格が、嫌いだったから。エルナ自身、ファルタに見捨てられてしまう可能性も捨ててなかった。でも、エルナはアイリスの嘘を黙って聞いていた。
「ふーん、そんな過去があったとは。意外だな。でも、だからなに?」
ファルタはアイリスの言ったことに少しは驚いているようだった。しかし、それでもファルタはそんな事気にしない、というよりは興味がないと汲み取れる反応をする。
「へ?なにその反応?良いの?その女、やばい淫乱ビッチだよ?」
「だとして、それが事実だっていう証拠はどこにある?それが証明でいないんじゃお前の言っていることがでたらめな可能性だってあるわけだ。それと、さっきからエルナが体で誘惑したって言ってるけど、好きって感情は見た目で決まるもんじゃないだろ。」
アイリスたちの言っていることが理解できないかのようにファルタは語る。
「見た目で決まらない?じゃあ君はどうしようもないブサイクと付き合ってもなにも思わないわけ?」
「待て待て、誤解すんな。俺は別に見た目を気にするなって言ってるわけじゃない。見た目以外の要素も考慮しろって言ってるんだ。例えば、俺はエルナを見て容姿は整ってると思うし、普通に可愛らしい方だとは思う。」
ここで一回エルナの脳みそがオーバーヒートする。
「でも、それだけで別に好きとは思わなかった。好意ってのは、時間をかけてお互いをよく知ったうえで自分に合う人物なのかを吟味して初めて生まれるもんだろ。見た目だけで判断してるやつは好意なんて抱いてねえ。自分の欲求に抗えてないだけだ。自分の欲に抗えずに欲求に赴くままに生きてるやつは一人寂しく生きてろ。」
「つまり、なにが言いたいの?」
「エルナがクソ野郎かどうかは俺が決める。エルナの過去については知らねえし知る気もねえ。誰だって、思い出したくない過去はあるもんだろ。俺がエルナを仲間にしたのは俺が信じようとしたときに俺を信じてくれたからだ。人の信頼関係に口出しすんな。」
記憶から消し去りたいほど最悪な過去、それはエルナだけじゃない。ファルタにも、ジェイドにも、レイシャにも存在する。
「.....なーんだ。つまんないの。折角報復できると思ったんだけどな。そんなにそのクソビッチと仲良くしてたいなら迷宮で二人で閉じこもってたら?でもそっかー、弱々しいエルナちゃんを守ってたら迷宮攻略なんて簡単にできないもんねー。かわいそー。」
アイリスはここぞとばかりにエルナの悪口を言い放つ。そのタイミングでファルタの怒りは限界に達する。
「それ以上バカにすんなら.....ぶっ飛ばす。」
そういった後、ファルタはアイリスに向かって斬撃を繰り出す。しかしアイリスの余裕そうな表情は崩れない。ファルタがアイリスのもとにたどり着いた瞬間、新たな人影がファルタの攻撃を受け止める。
「おいおいそう気張んなって。女の子を傷つけるようなやつはモテないよ?」
「他人の悪口でしか攻撃できないやつよりは何倍もマシだろ。」




