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世界の終末が望むとき、神々は迷宮を制覇する  作者: 柊ヒイラギ
第三章:強者は集う、己の野望が為に
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変わったんだよ

「ねえジェイド。一つ聞いていい?」


「なんだ?」


 ファルタたちが戦闘をしている時、ジェイドたちはゆっくり落ち着いて歩いていた。多くの攻略者が先に進んだが無理に進んでも無駄な争いに突っ込むだけとふんで後ろから残り物を狙っていくようにした。


「君が今持ってる剣とあの幼馴染の剣士の子、訳ありでしょ?なにがあったの?」


「......お前そういう事聞いてくんのかよ。ファルタでももう少し空気読むぞ。」


 完全に予想外の質問が飛んできてジェイドは呆気に取られる。レイシャもファルタと同様にあまり深くものを考えないタイプだが、ファルタは空気を読むくらいはできる。


「別に嫌なら無理して言わなくていいよ。ただ、ファルタと同じっていうのが気になったから。イスカがファルタのことを憎んでいるのと同じってことでしょ?でもアラナクからもジェイドからもあんまりそういう雰囲気は感じないから。」


 過去の出来事からファルタのことを憎んでいるイスカは側から見ても怒りに近いものを感じさせる。しかし、ジェイドとアラナクは普通に仲の良い幼馴染という雰囲気しか醸し出していない。


「.....言いたくはねえな。ただ、一つ言っておくと悪いのは俺だ。アラナクは悪くない。それだけ理解しといてくれれば大丈夫だ。」


「オッケー。にしても、ボクたちって皆んなそれなりに事情抱えている人が多いよね。ファルタも、ジェイドも、ボクも。」


「ん?お前も過去になんかあったのか?」


「あったけどなかったことになってるから、それ以上は触れないように。」


 自分で出した話題なのに触れないでとはなんとも自分勝手な考えである。しかし、互いに深く語らなかったので二人とも別に怒ったりはしなかった。


「まあ、ボクの気分が落ち着いたらゆっくりはな」


「ウワアアァァァァァァ!」


 ジェイドとレイシャが話していると目の前に一人の攻略者が走ってくる。走って来た先からは何者かが戦闘している音が聞こえる。


「なんだ?唐突に戦闘?」


「ねえキミ、何があったの?死にたくなければボクたちに情報を教えて。」


「.....急に、急に主が現れたんだ。しかも一体じゃねえ。無数の数でだ。俺たちは3人で行動してたんだ。なのに、ふざけた戦力差で攻撃されたら、逃げるしかないだろ....。」


 どうやらこの先に主がいるらしい。しかし無数の数の主が同時に現れるなんてことがあるのだろうか。これだけ広大なダンジョンの主の多くが一箇所に集まってはバランス崩壊もいいとこだ。


「なるほどね。とりあえず様子を見るぞ。」


 ジェイドとレイシャはひとまず状況判断を行うために様子を見ることにした。ジェイドたちが向かった先には情報どおり無数の数の主がいた。


「確かにこの数はすごいな。ボクたち二人で本当に倒せるのかこいつ?でも、なんかこいつ違和感が.....?」


 そこにいた主は確かに異常な数であった。しかし、その数は明らかに100を超えており、この混合迷宮に存在する主よりも数が多い。さらには、主一人一人の容姿が全くもって一緒なのである。まるで()()のように。


「この数相手にするくらいなら別の場所に行った方がいいかなジェイド?.......ジェイド?」


「ふふ......ははは。どんな偶然だよ。ほんと、いらねえ奇跡だな。」


 冷静に対処しようとするとレイシャの横では、なぜかジェイドが笑っていた。ジェイドはその主の姿を見てどこか懐かしむような目をしていた。


「ファルタにも会わせてやりたかったな。なあ?ミーミル。」


ーーーーーーーーーーー


「にしても、今回の選別戦はかなり大規模だな。ここまでの規模にしなくても良かったんじゃねえのかレセカ?お前が参加したときはもっとシンプルで難易度低かったろ。」


 闘技場では観客と王国守護攻略者が選別戦の様子を観戦していた。闘技場では魔物を操る神術を扱う運営者が魔物と視覚を共有させて観客たちに様子をお届けしている。


「確かに今までの選別戦であればここまで大きな規模では行わなかったですね。私も今回に関してはここまでするつもりはなかったです。」


 レセカは毎回の選別戦で最高指揮官として運営している。審査内容などもある程度は彼女が決める。例年、ギルドごとに集合場所が異なりそれぞれのギルドが任務をこなすことで審査を行っていた。しかし今回に関してはレセカは指揮官でありながらあまり運営に関わっていない。


「この審査内容も、規模も、全部決めたのはフォーリスク様ですよ。普段こういうことは全部丸投げしてくるのに今回はいろいろ口出ししてきましたね。」


「まじか。あの人がまともに仕事したってことかよ。明日には世界が破滅するかもな。」


「ラノス、失礼ですよ。........異論はないですけど。」


 かなりの常識人であるリーベですら呆れてしまうほどフォーリスクはサボり癖のある人間であった。そんなフォーリスクが運営を真面目に行うことは珍しいとしか言いようがなかった。


「でも、一体なんでだ?......後で問い詰めるか。」


ーーーーーーーーーー


「久しぶりだなミーミル。つっても、俺のことなんか覚えてないだろうが。」


「ジェイド、こいつのこと知ってるのか?」


「ちょっと前にな、ファルタと一緒に攻略したんだ。あいつと行動することになったきっかけってやつだ。」


 ミーミル、以前ジェイドとファルタが初めて会った時にともに攻略したダンジョン《ミーミルの泉》の主。


「じゃあ一回攻略してるってことでしょ?だったら余裕じゃん。」


「......そう、かもな。ただ、前はファルタがいたから勝てたようなもんだ。俺一人じゃ勝てなかった。だから、役に立てるかはわかんねえ。」


「何いってんの。ファルタはいないけどボクがいるじゃん。ファルタじゃないと不安なの?」


「いや、そういうわけじゃないんだけど。正直言えば、レイシャはミーミルと相性が悪い。お前は1VS1の戦闘ときに真価を発揮するタイプだ。あいつの神術は《分身(デコイ)》、数で詰めてくるやつとは相性が悪いだろ。」


「でも、その状況で勝てなきゃ、変われないからね。もっと強くなるには、苦手に挑んでいかなきゃ。指示は任せたよ。」


 レイシャはジェイドの忠告を気にせず突っ込んでいく。


(.....結局、変わってないんじゃねえか。)


「レイシャ、そいつらの注意を引き付けてくれ。俺が本体を探して倒す。ヤバそうだったら無理はしなくていい。」


「オッケー。任せな。」


 レイシャの役目は囮。無数の分身を操るミーミルの気を引くことは容易ではない。それでもレイシャを信じてジェイドは記憶を頼りに攻略を行う。


(確かあいつがいるのは.....地面の中!)


 ジェイドはレイシャの邪魔にならないように地面に亀裂をつける。しかし、ジェイドの想定とは違った。


(は?.....いない?)


 確かに以前の攻略では地面の中にミーミルは潜んでいた。しかし今回はミーミルどころか人が入れる空間すら存在しなかった。


(どういうことだ?この前と状況が違う?じゃあ本体は別の場所にいるのか?)


 しかし周囲には隠れられる場所は一切ない。可能性があるとすれば分身の中に紛れている可能性。しかし、以前の戦闘からミーミルがそんな安直な隠れ方をしてくるとは思わなかった。


「ジェイド!見つかりそう!?」


「.....無理だ。状況がおそらく前回と違う。すぐに見つけるのはおそらく無理だ。」


「そっか。どのくらいかかりそう?あんま長い間持ちこたえるのはきついんだけど。」


「.....どう、だろうな。わからない。そもそも、あの時だってファルタが居なければ、分身の本体を探すなんて行動に移せなかった。俺だけじゃ、いや.....多分レイシャと俺じゃ無理なんだ。」

(あぁ......なんで、俺は弱気になってるんだ。仕方ないだろ、あのときも、あのときも、俺と一緒に戦ったやつはみんな.....これだから、何もわからないやつは嫌いなんだ。)


 ジェイドは諦めていた。ミーミルの攻略を。ジェイドは、過去のトラウマから、誰かの生死を自分が受け持つことが苦手だった。この状況も、ジェイドからしたら、レイシャのことを守らなければいけない責任に苦しむことしかできない。そんなジェイドを見て、レイシャはジェイドに言う。


「なにが無理だ!いい加減にしろって!なんでジェイドはそうやって過去に囚われてばっかなんだよ!」


 レイシャは怒ってた。ジェイドに対して思っていることをすべてぶつける。


「過去を見つめることが悪いとは思ってない。けど、後悔を思い詰めてそのままにしておくぐらいなら全部忘れたほうがいい!ジェイドは、本当に昔となにも変わってないの?」


 ジェイドは思う。昔の、自身の心の弱さに打ちひしがれていた自分を。


「....俺は、変わったんだよ。もう二度と、大事なやつを傷つけたくなかったから。」


「なら、さっさと調子取り戻してよ。」


「悪い。そんじゃ、俺らしくないことしてみるか。」

王国守護攻略者はラノス、レミエニ、リーベが同期、次にルミネイト、次にディーレ、一番後輩がレセカです。レセカは王国守護攻略者になって3年目です。

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