うごめく
「それでは、王国守護攻略者の方々に登場していただいたところで、我が国の国王にも登場していただきましょう。」
6人の精鋭たちが登場したことで盛り上がってきたところで更に、国王様も登場するようだ。まあ例によってファルタは国王のことなど一切知らないようだが。
「国王ねえ。どうせ胡散臭い年寄りでも出てくるんだろ。」
「国王35歳とかだぞ。年寄りっていうのは流石に失礼だからな。それに、元攻略者らしいから実力もある。まあこんだけ攻略者が多い国だし、攻略者だった人が王様なのはある意味正しいのかもしれねえけど。」
ジェイドがそこまで言ったところで精鋭6人に囲まれて一人の男が現れる。
「あれが、フルガの国王、フォーリスク・フレイフィズ様だ。」
闘技場上階に現れたのはかなり若々しい青年だった。髪色は少し赤みがかった茶髪でその目には不思議な魅力があった。
「あれ?あの人......どこかで.....。」
先ほどから国王について何も知らないと言い切っていたファルタであったが、いざその姿を見てみるとなぜか知っているような感覚が走った。
戸惑っているファルタの姿を見ていたライカは疑問を持つ。それと同時に何かに納得する。
(やっぱ、何かしら関係はあるっぽいね。)
「フォーリスク様、攻略者の方々に一言お願いします。」
司会の言葉を受け取ったフォーリスクは一歩前に出て肺に空気を溜め込み大きな声で話し始める。
「攻略者のみなさん、どうも、フォーリスクと言います。まず一つ問います。あなた達は、なぜここに来た?報酬が欲しいから?実力を証明するため?」
フォーリスクの問いに周囲はざわつき始める。望みを叶えられるという欲望に狩られて来たもの、自身の実力を世界に示すためにきたもの、王国守護攻略者になるために来たもの、各々が理由を持って参加しているのは事実だろう。
「あの人、僕たちのときと同じ質問しているんですね。僕が攻略者の時は、深く考えさせられました。」
ディーレが言う。それに応答するようにリーベが言う。
「まあ、言うなれば一つの審査のようなものですからね。各々がどのような回答を出すのかで今後の審査の行動に大きく関わってくる。」
この選抜戦が行われるたびに同じ質問を投げかけているようだ。答えのない質問ではあるが、人間性を問う質問ということにしておこう。
「まあこんな問いをしといてなんですけど、正直答えはなんでもいいです。俺が聞きたいのは、その答えを元に、今後の審査にどう挑むつもりなのかということだけです。」
フォーリスク自身もこの問いに答えを持ちかけようとしているわけではないようだ。
「このあと行う一次審査において、最も試される力はその場の状況に臨機応変に対応できるか、言うなれば判断力です。なので、本来ならここで試験内容を伝える状況ですが、まだ伝えないです。」
その一言に周囲はざわめき始める。先ほど司会の人物は一次審査の概要を説明すると言っていたのに実際は説明しないと言われれば反発するものが出てくるのも仕方がない。
周囲を見ると、司会も、さらには王国守護攻略者の6人も状況を理解できていないようであった。
「フォーリスク様、どういうことですか?」
「急な変更ですまないなレセカ。悪いけど、予定は少しだけ変更させてもらうよ。後で詳しく説明はするからさ。じゃあ一時間後、君たち攻略者はまたここに集合してね。その間に準備を終えてくるように。」
フォーリスクが唐突に言い出した事実に会場にいた人物全員が困惑しながらも、ひとまず解散となった。
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「なぜこのようなことをしたのですがフォーリスク様。今までこのようなことはなかったと思いますが。」
唐突な予定変更に対して王国守護攻略者の6人はフォーリスクから話を聞くため王室を訪れていた。
「まあ、理由は主に2つ。1つはさっき言ったように臨機応変に対応する力をつけて欲しいから。もう1つの理由は.....気分かな。」
「気分で予定を急遽変更するなんてあんたらしくねえな。まるで、元々変えるつもりだったみてえだけど。」
フォーリスクの理由に対してラノスが疑問を投げかける。
「別に、そう思うならそう思っていればいいさ。さ、この話はこれで終わりだ。解散としよう。この後少し時間が必要なんでね。」
「ちょっと!まだ話は終わって」
リーベの静止も気にせずフォーリスクは部屋を出ていく。比較的自由奔放な性格のフォーリスクであるためある程度の勝手なら皆慣れているのだが、流石に今回の行動は公の場での突発的な行動であったため全員反抗的な態度を取ってしまった。
「あの人の目的はなんなんだ?俺達になにも伝えないなんて今までなかっただろ。レセカに関しては運営の最高指揮官だろ。なにも聞いてないのか?」
「聞いてないですよ。でも、流石にまともな理由での行動だと思いますよ?私情にとらわれるような人じゃないですし。」
ラノスは他にも文句を言いたかったが、レセカはほとんど気にしていなかったのでひとまずこの話は忘れることにした。
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王室を離れたフォーリスクは王宮内の人気のない場所である人物と会話していた。
「で、ファルタとはそれなりに関係は作れたってことで良いのかな、ライカ。」
「まあね。彼のギルドに入るつもりはなかったんだけど。まあ身近で行動してるうちに分かることもあると思うから、そんなに焦んないでよ。」
ライカは普段の《死神》としての服装でフォーリスクと会話している。
「でも、ライカが参加してるんだ。優勝できるように頑張ってね。ファルタの成長にも期待したいし、引き続き頼むよ。それに、君にはレーヴァテインがあるじゃないか。」
「全く、神物があるからって勝ち残れるかはわかんないけどね。まあできる限り頑張ってみるよ。それで、審査内容リークしてくれたりしないの?」
「流石にそれはだめでしょ。ここでは一国の王と、ただの攻略者でしかないんだから。それに、君は不正してまで勝ち残りたいわけでもないでしょ。ファルタのためって言うなら別かもしれないけど。」
「はいはいそうですか。まああいつはそういうの嫌いだと思うからいいよ。じゃあ報告はしたから、呑気に応援でもしててよ。」
報告を終えたライカはフォーリスクとの会話を終えて王宮の外へ出る。
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一方闘技場付近の酒場では複数のギルドの人間が集まって談話をしていた。おそらくギルドの集団のリーダー的存在の人間が話し始める。
「わざわざ集まってもらって悪いな。お前ら複数のギルドに集まってもらったのは、ある人物をこの試験中に殺してほしいからだ。そいつの名前は、ファルタ・レイリオ。殺したやつには、金貨100枚やる。」
「待て、話がなにも見えない。殺せだと?試験中の他者への殺害攻撃は禁止だろ。殺しがバレたらどうするんだよ。」
「俺のギルドが優勝したときの望みの報酬、それでお前らを助けられる。」
何でも望みを叶えられる。状況次第では投獄された人物の釈放もできるのかもしれない。しかし、それだけで了承するような人物はいなかった。
「優勝するだって?あんたに実力があるのは知ってっけど、だからってそんなうまい話簡単に信用できるかっての。そもそも殺してえ理由はなんだ?」
「そいつは、俺の人生をぶっ壊しやがった。最低の屈辱を負わされた。あいつの顔を見ただけで腸が煮えくり返って仕方ねえんだよ。あいつが生きているこの状況がムカつくんだよ。それに、殺したときの状況は俺がうまくもみ消してやるさ。バレたときの最終手段として優勝報酬を使うだけだ。」
「......まあ良いだろう。俺達が殺したときの報酬、忘れんなよ?」
「当然だ。」
ファルタが知らないところで様々な思惑がうごめいていた。選別戦第一次審査開始まで、残り30分。




