自分たちにできること
「じゃあこれで、ギルド《フィンブルヴェト》の参加を確定します。」
翌日、ライカが半ば強制的にフィンブルヴェトに加入したことで無事ファルタたちは選別戦への参加権を手に入れることができた。
「いやーなんとかなってよかったー。当日までは自由らしいからあとは好きに使ってくれていいよー。」
「「「いやちょっと待てよ。」」」
無事準備が整ったため残りの時間は自由にしてくれれば問題ないのだがファルタとライカ以外は状況が一切飲み込めていないためファルタに向かって総ツッコミが入る。
「なんで死神が俺達のギルドに居るんだよ。というかいつ知り合いになった?」
「それにこの人、ギルド本部で受付嬢やってる人じゃん!もしかしてこの前の秘密云々の話ってこのことだったの?」
「なんでボクたちに言ってくれなかったのさ。別にボクたち人の秘密を簡単に話すような人間じゃないと思うんだけど。」
一度に色々言われてしまいオドオドするファルタにライカがフォローする。
「あんたたちに何も言わなかったのは私がそうするようお願いしたから。こうやって騒がれるのは分かりきってたことだったし。それに、私には私なりにこういう行動をしている理由があってそれを知られたくなかったから。その理由はファルタにもあんまり話してない。」
「な?俺がたまたま暴いちゃっただけでこいつも俺も隠すつもりはなかった。まあ実際強いのは事実なんだから良いだろ?」
「....まあ異論はない。それに、今回限りの加入だろ?ならそこまで長い期間いるわけでもないしな。」
ライカも本心ではないもののファルタに何かと助けられているので恩返しも兼ねて参加を決意したようだ。
「さてとあと一週間あるわけだけど、お前らはどうすんの?」
「俺は剣技の修業をする。一人で森にでも籠もりながらな。」
「私はDランクかCランクのギルドを積極的に攻略しようと思ってる。ファルタに武器作った時に持ってた主の力は全部代償として使っちゃったから今使えるのオーディンのやつだけなんだ。流石にそれだと不安だからいくつか攻略して主の力を集めてこようと思う。」
そう言われると若干心が痛むファルタ。非常事態であったとはいえエルナにとってかなりの弱体化になってしまったのだろう。
「ボクは....会いたい人がいるからその人のところに行ってくる。ちゃんとそれなりに動いておくから大丈夫。」
「私はいつも通り受付嬢として働いてる。何かあったら伝えて。」
全員選抜戦当日までに自分たちにできることがある程度定まったようだ。
「ファルタはどうするの?もし大丈夫なら私と一緒に攻略でもする?」
どちらかと言うとエルナがただ一緒に攻略したいだけのように感じるが。
「悪いエルナ、俺も俺で行っておきたいところがあるんだ。そこで修行っぽいことしようと思ってる。まあ数日で切り上げるつもりだから暇になったら着いていくわ。」
「わかった。じゃあ私はそろそろ行くね。なるべくたくさん攻略しておきたいから。」
エルナはそう行って受付へと向かっていった。エルナに続いて他の四人も各々の目的に応じて動き出す。
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「先生、いるか?まあ昨日はいたしどうせ今日もいるんだろ?」
「......入りな。」
ファルタに先生と呼ばれた老婆はファルタを家に招き入れる。老婆とは言っても身体はかなり元気そうだし肌もしわこそあるがまだヨボヨボな老人とは見て取れない姿をしている。
「それで、今度はなんの用だい?昨日も言ったがあんたのギルドに入るつもりは一切ないよ。」
「今日先生のところに来たのは、選抜戦までに俺をもっと強くしてほしいからだ。」
ファルタが先生に頼むこと、それはファルタ自身の強化、言うなれば修行をつけて欲しいということだった。
「....はぁ、そんなとこだと思ったよ。悪いがあたしはもう修行をつけるつまりは一切ないんだ。他をあたりな。」
「....先生の修行を受けたことがあるからこそ俺は先生に頼んでる。先生以外の人じゃ、多分今の俺は強くなれない。」
「....何度言ったって答えは同じだよ。」
「やっぱ、あいつのことが原因なのか?」
ファルタは問いかける。老婆は険しい表情を一切崩すことなく答える。
「そうさ、あんたら3人が一緒にいればあたしは満足なのさ。でもそれはもう叶わない。それに、もうあたしは怖いんだ。また自分の弟子がいなくなってしまうんじゃないかってね。」
「俺たちを失いたくないってことか。じゃあ、その愛弟子の一人がもう一人を殺そうとしてるって言ったらどうする?」
ファルタがそう言うと老婆は衝撃を隠さないでいた。
「どういうことだい!?まさか、イスカがあんたを殺そうとしてるとでも言うのかい?」
「その通りだ。まあ原因は俺にあるからイスカを否定するのはやめてくれ。ただ、当然俺は殺されるつもりはないしイスカを殺すつもりもない。俺はただ、あいつの復讐心を少し抑えてやりたいだけだ。全てが終わった時、俺はあいつに殺される。」
ファルタの言葉が信じられない老婆は顔を伏せる。ファルタはそんな姿を見ても言葉を止めない。
「俺は昨日、イスカと戦った。その時、俺は負けた。ギルド本部の人が仲裁に入ったから引き分けではあったんだけどもし止められてなければ俺は殺されていた。もしこのままの俺が選抜戦であいつと戦っても俺は負けるだけだ。だから、俺は少しでも強くなってあいつに勝たなきゃいけないんだ。」
ファルタは息を大きく吸い込み頭を下げる。
「お願いだ。一人の攻略者として、元あんたの弟子として、元王国守護攻略者のあんたの実力を見込んで頼みたい。お願いします、ガーデニクス・デイドルド様。」
老婆もといガーデニクスは伏せていた顔をあげてファルタの方向へ向き直る。
「.....分かったよ、修行をつけてやる。ただ選抜戦が終わるまでだ。それ以降は一切修行を受け付けない。だから、勝ってくるんだよ。」
「ありがとうな先生!俺、絶対勝ってみせるから。」
「当然だよ。ただ、あたしももうおいぼれとる。満足のいく授業になるかは保証できないからの。」
「そこは一切心配してないから大丈夫。」
むしろ衰えてなけりゃ修行の最中に死んじまうとすら思ったファルタであった。
「じゃあ早速修行を始めてくれ。」
「そうだね。じゃあまずは一人でBランクのダンジョンを攻略してきてくれ。」
「えっ?先生が見てくれるんじゃないのか?」
「まずはあんたの今の全力を見せてみな。あんたならBランク程度ならソロでいけるだろ?攻略にどれほど時間がかかったかで授業内容を考える。あたしは少し体を動かして準備運動でもしとくよ。ダンジョンはあたしが指定したとこに向かいな。」
ガーデニクスにそう言われたファルタは早速ダンジョンに向かった。
〜20分後〜
「先生、戻ったよ。結構全力でやったつもりだけど。」
「だいたい20分か.......ファルタ、あんたそんなに弱いのかい。全盛期のあたしならあんたの半分程度で終わっとるよ。」
その言葉を聞いたファルタは目を丸くする。神術を使った上でこのタイムのファルタにはあまりにも非現実的な時間だったのだから。
「さてと、じゃあ修行を始めようかね。何焦る必要なんてないさ、神術を使えないあたしなんて神術者には弱く見えるだろ?」
それはあくまで普通の非神術者の話である。今ファルタの目の前にいるのは歴史上唯一、非神術者として王国守護攻略者になった者である。
ということで修行編。まあ修行編は長引くと飽きるだけなので次話には終わらせます。




