新たな目標
「魔眼のディーレか、悪いが邪魔をしないでいただけますか。これは俺達の戦いなんで。」
「最初はそうだったかもしれないね。けど、もうそんな事言ってられないよ。君は周りが見えてないらしいね。」
そう言われイスカは周囲を見渡す。面白がって戦闘を見ていたものもいたが殺意を態度に出したことで怯えだしたものが多くいた。それだけじゃなく、建物や置物にも被害が及んでいた。
「ただの喧嘩なら何も言う気はなかったよ。でも、無関係な人たちに被害が及ぶなら僕も全力を行使しなければいけなくなる。君も一つのギルドの団長なら周りをもっと見れるようにしてくれないと困る。ファルタくんも同様だ。僕は君を手助けする契約はした。けど、だからって優遇するつもりは全く無いから。」
ファルタとイスカは今自分たちが犯した過ちを思い詰める。
「幸いにも負傷者はゼロだ。最低限のペナルティは課すけどそんなに思い詰めなくていいよ。ボクがここに来たのは別の理由があるしね。」
「ディーレさん。何を言っているんですか!私達は本部の精鋭です、ここは厳しく取り締まるべきだと思います!」
ディーレが軽い罰で終わらせようとすることに対して背後にいた女性は抗議する。
「まぁそういうなよレセカ、彼らにだって事情はあったんだろうし。」
「....レセカって、あの《天災》のレセカ!?」
「有名な人?」
レイシャの問いにエルナは信じられないといった顔で訴える。
「レイシャ知らないの!?レセカ・シスイライト、国王直属の6人の精鋭隊、《王国守護攻略者》の第6位で世界最強の魔道士と言われている人だよ。あの人の援護はまさに一級品、ついた異名が《天災》。あの人が放つ多彩で広範囲な魔法は全魔道士の憧れで目標みたいなものなんだから!」
やけに饒舌でレセカについて語るエルナ。国王直属ってだけあってやはり実力は相当なものなのだろう。
「とりあえず、ファルタくんは後で話したいことがあるから、まずは今君たちの問題に一区切りつけてから来てね。」
そう言ってディーレは本部内に入って行く。レセカもそれに続き入って行く。
「どうするイスカ、いや、とりあえずは...」
「そうだな。」
二人は振り返り住民の人達に向かって大きな声をあげる。
「「勝手に争いを始めて、すいませんでした!!」」
勝手に戦闘を町中で始めてしまったこと、必要ない恐怖を与えてしまったこと、それら全てに対して謝罪を行う。大きな被害はなかったため住民の人達はあまり気にしていなかったようだった。
「今後はもっと場所考えないとな。」
「いいさ。どうせ今度、最高な舞台がやってくるからな。」
イスカはそう言うと荷物を持って本部の中に向かっていく。
「そうだファルタ、拠点の費用、お前らが負担しろよ?」
「は?なんでお前が買うことになってんだよ。勝負はまだ終わってないだろ。」
「何いってんだよ。結果こそ魔眼の仲裁によって引き分けに終わったが、もし止めるのが後1秒でも遅ければ俺がお前を殺していた。結果が引き分けでも勝負事態は俺の勝ちだ。そしてお前が提示した報酬は拠点を買う権利とその費用を相手に負担させること、俺が勝ったんだから俺達が同じ報酬を得るのは当然だろ。」
正論に弱いファルタは何も言い返せなくなって黙り込む。観念してイスカの要望に応えることにする。
「....わかったよ、買えば良いんだろ。エルナたちは先に帰ってていいよ、こっちはこっちで終わらせるから。」
「わかった。でも何があってこんな状況になったのか、話せる範囲で良いから後で話してね。」
そうしてエルナたち3人は宿屋へと帰っていく。ファルタとイスカたちエインヘリャルの団員たちは物件受付に向かう。
「じゃあさっさと契約済ませてくれ。」
「わかった、じゃあすいません。先程仮契約をさせていただいたものなんですけど。」
「はい、そのまま契約させて頂く形でよろしいでしょうか?」
どうやら受付の人もファルタとイスカの戦闘を見ていたらしく大まかな流れは把握しているらしい。
「いえ、買う物件はそれのひとつ下の物件にします。金額は全部こっちのやつが払うんで。」
「.....え?」
ファルタとイスカがもともと買おうとしていた物件の下に書かれていた物件、つまり金貨45枚の物件である。
「待てよイスカ!話が違うだろ。さっきの物件の金額を負担するって話だっただろ。なんで物件変えるんだよ。」
「俺はそんな約束一切してない。無償で物件が買えるんだ、なるべく良いところにするのは当然だろ。」
「俺そんな金持ってないぞ?足りない分はどうするんだよ。」
「本部に借金でもするんだな。ちゃんと期限内に返済できればそんなに負担にならないだろ。まぁ返済できるまでは収入は基本的にゼロだけどな。」
ギルド本部ではいくらか金を借りることができる。期限は一週間でその間に返済できなければ信頼に足らないと判断され、ギルドへの支援などが一気に減ってしまう。また、借金をしている最中にダンジョンを攻略をしても報酬は自動的に借金の返済に当てられる。
「金貨45枚のうち20枚は持ってるんだろ?残りが金貨25枚だとすると大体Bランクを10回くらい攻略すれば貯まるだろ。」
「....まじか〜、まぁ俺が言い出したことだからしょうがないんだけどさー。分かったよ、払えばいいんだろ払えば。」
不本意だし正直一切同意したくないのだが最初にこの話を持ち出したのはファルタなので渋々受け入れるしかない。
こうしてファルタは約金貨25枚相当の借金を背負おてしまうことになった。
ーーーーーーーーーー
「どうしたもんかなー、Aランクを幾つか攻略すればすぐなんだろうけどワンチャン死ぬんだよなー。リタたちとか誘うか、でも俺等の都合で危険な目に危険な目に遭わすのもなー。」
「ファルタくん、話は終わったかい?」
借金の返済をどうするかを考えているとレセカを連れたディーレが話しかけてきた。ディーレが本部に足を運んだのは十中八九ファルタに話があったからだろう。
「今日はなんですか?今色々考えること多くて大変なんですけど。」
「それは、君が多額の借金を背負ってしまったことかな?得をしようとして墓穴を掘ったんだ、自業自得だね。」
やはり協力関係にあるとはいえあくまでも一人の攻略者と本部の精鋭、甘い考えは通用しないらしい。
「今回は僕からある提案をしようと思って来たんだ。」
「提案?」
「君がしっかり活躍できれば、君のその多額の借金も一気に返済できる。更に言えば、君のお兄さんの手がかりも見つかるかもしれない。」
ファルタはその話に驚く。借金の返済が済むのも嬉しいがそれ以上に兄について知ることができるという話に興味を持った。
「俺の兄について!?ていうか兄の話、ディーレさんにしましたっけ?」
「あー、えーっと、初めてあった時に話してたじゃないか。」
「何言ってるんですかー、陛下に『ファルタの兄についての話し出せば聞いてくれるよ』って言われてたじゃないですか。」
「おいレセカ、僕何度も言ってるよね?その思ったことすぐに話す癖速く治せって。」
どうやら兄については国王から聞いたらしい。なぜ国王がファルタの兄について知っているのかも疑問ではあるがとりあえず状況を飲み込む。
「それで、借金返済ができるってどういうことだ?あんな多額の借金、簡単にどうこうできるものじゃないと思うけど。」
「ファルタ君は、1週間後に行われることについてなにか知っているかい?」
「いや、何も。」
「....まぁ、そうだよね。正直そんな気はしてたんだよ。」
なんかすごい呆れられた気がする。いや、知らないもんは知らないんだからしょうがないだろ。世間に詳しくなったほうがいいのだろうか。
「実は1週間後、《精鋭攻略者選別戦》っていうのが開催されるんだ。」
「なんですか、それ?」
「無駄に大層な名前付いてるけど、噛み砕いて説明すると僕たち、王国守護攻略者の素質がある人を選別する試験だよ。数年に一回不定期に開催されているんだけどこの選別戦で実力が認められれば王国守護攻略者になる権利を与えられる。」
王国守護攻略者の人物は元々攻略者でありこの選別戦で勝ち残ったことで今の地位を確立したということだろう。ディーレも昔は攻略者だったのだろうか。
「この選別戦、一つのギルドを一つのチームとして出場するチーム戦なんだけど、出場するギルドの中からギルド同士で戦い合ってトップを決める。いわば、最強のギルドを決める戦いなんだよ。」
最強を決める戦い。今現在最強と呼ばれるギルド、エインヘリャルに勝つ方法。
「ファルタ君は、参加するかい?」
ファルタの答えは決まっている。
「当たり前だ、フィンブルヴェトも参加する!」
1週間後、世界の各地で活躍する兵たちが一度に集結する祭りが開かれる。




