あのときの
金貨は1枚日本円で10万円のイメージです。
「幼馴染って、それ本当か!?」
ファルタの口から突如として出てきた言葉にジェイドたちは驚きを隠せなかった。
「あぁ、昔は結構一緒に遊んだもんだよ。にしても、やっぱイスカはすげえな。最強のギルドなんてもん作るんだから。」
「すごいのは俺じゃない。仲間の力で俺は支えられているに過ぎない。」
イスカは自分の力を認めようとはしないが、周りにいたイスカの仲間はイスカ本人の力であると言う。
表情がうまく読み取れないイスカ。背はファルタよりも少し大きいか、まとっている雰囲気はクールという表現が最も適切に感じた。そんなイスカは突如として重たい雰囲気で告げる。
「....なあファルタ、あのときの俺の野望、忘れたとは言わせないが、覚えてるだろうな?」
「あのときの野望?」
「俺とお前が最後に別れた時に俺が言った言葉だ。」
「.....あぁ、覚えてる。」
そして暗い表情へと変わった二人、ファルタに対してイスカは再び同じ宣言をする。
「次お前にあったとき、俺はお前を殺す。」
イスカがそう発言したとき、場の空気は急激に重くなる。
「やっぱその気持ちは変わってないんだな。」
「当たり前だろ、お前だって自分が犯したことくらい理解してるんだろ。」
「そりゃな、お前が俺に殺意を向けることも仕方がないと思うよ。でも、俺だって死にたいわけじゃないんだ。お前のためにそう安安と殺されてたまるかよ。」
イスカにとってファルタは幼馴染でもありながら殺意を向ける相手でもある。しかし、ファルタにも兄を探すため、仲間とともに戦うために決して簡単に死を選ぶことは出来ない。
「悪いけど今忙しいんだ。拠点買おうとしてるんだけど先約がいたから話し合いする予定なんだ。」
「....お前が買おうとしてる拠点、もしかしてこれか?」
偶然にも同じ物件を購入しようとしていたらしい。
「おんなじやつ選んでいるとは。なあイスカ、この拠点譲ってくれない?」
「嫌だ。」
即答。びっくりするほど即答で否定された。
「えー、いいじゃん。お前はたくさんAランクダンジョン攻略してるんだからお金持ってるだろ?もうちょい高めのとこにすればいいじゃん。」
「拠点なんてある程度設備が整っていれば十分だ。無駄に金を払ってまで良い拠点を買おうとは思わない。それに、なぜ俺が立ち退く必要がある。先に仮契約したのは俺だ。早い者勝ちってやつだ。」
思いっきり正論をぶつけられてどうしようもなくなるファルタ。そんなファルタはイスカにとある提案をする。
「じゃあさ、今から戦って俺が勝ったらこの拠点俺たちに譲ってくれない?」
「....欲しいものが被ったら勝負で決める、考え方は昔と変わらないな。わかった、お前が勝ったらその拠点を譲る。ついでに費用もこっちが負担してやる。が、良いんだな?俺と戦うなら、俺はお前を殺すつもりでいくからな。」
「良いよ、俺が勝てばいいだけだろ。じゃあ外に出ろよ。」
二人は外に出てお互いに剣を抜く。それに続いてジェイド等フィンブルヴェトのメンバーとエインヘリャルのメンバーも外に出てくる。
「そんじゃ、早いうちに始めるか。先手は譲るよ、いつでも来い。」
「わかった。後悔するなよ。」
ファルタの指示に従い剣を抜く。地を蹴り、素早い行動をした後そのままファルタへ攻撃を仕掛ける。
(イスカのやつ....やっぱ前よりも剣技に更に磨きがかかってんな。まじで集中しねえとほんとに殺されるかも。)
「双剣秘術《カマイタチ》。」
「聖剣秘術《神太刀》。」
両者ともに強烈な技がぶつかり合う。事が広がり面白がって賭け事を始める者、不安になってその場から避難する者、そして彼らの仲間はお互いに眼の前の戦いに釘付けになっていた。
「....やっぱ、最強の名は伊達じゃないな。ファルタと互角に渡り合ってる。」
「それを言うならこっちの話だよ。」
フィンブルヴェトのもとにエインヘリャルの団員であろう少女が話しかけてきた。
「私はナキ・アーリエイド、エインヘリャルで副団長をやってる。」
ナキと名乗った少女が挨拶をした後、ジェイドたちもそれぞれ名を名乗る。
「知ってのとおりだと思うけど、イスカの強さは他の攻略者の比じゃない。そんでもって、実力はまだ上がり続けている。何度もイスカの戦いを見てきたからこそ、渡り合えてるそっちの団長の実力に目を張るよ。」
ナキは二人の戦いを見て衝撃だったようだ。イスカと渡り合える剣士がいた事、そして.....
「私は、あそこまで感情をぶつけるイスカを見たことがなかった。幼馴染と久しぶりに再開して早々あんな事言うとは、過去に何があったんだか。」
ジェイドもそこはずっと気になっていた。ファルタとイスカの対応を見るに決して仲が特別悪いわけではないのだろう。しかし先程のイスカの発言、そして今目の前で行われている戦闘を見れば分かる。イスカは決して嘘をついていない。本当にファルタに殺意を向けている。ファルタ自身も焦っていないように見えて実際は死の恐怖に少しばかり不安があるように見える。
「あいつのことは俺だって詳しくは知らない。でも、あいつは人の恨みを変に買おうとするやつじゃない。あくまで正当な理由でしかあいつは怒ったりするやつじゃない。」
(ただ、心当たりがないわけじゃないんだよな。)
ジェイドだけじゃない。エルナとレイシャも過去に何があったのか思い当たる節があった。ファルタが自身の本当の神術を話したときの言葉を。
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『昔刻限を使ったとき自分で制御できなくて親友を傷つけちゃってさ。』
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(多分、この話のことだよな。)
とは言え、本人が追求を拒もうとするので全員その先の話を聞こうとはしなかった。
「ねえジェイド、これやばくない?」
ファルタたちの過去を考えていたら戦局は大きく変化していた。
「ファルタが、押されてる?」
最初はほぼ互角の戦いをしていたファルタだったが戦闘が進むにつれてイスカに徐々に押され始めている。
「最初は大丈夫だと思ったんだが、にしてもなんで急に強くなった?まさか、オーディンみたいな時間経過によって徐々に強くなるタイプの神術か?」
「いや、そうじゃない。さっきからこの戦いで起こってる魔力の流れは全部ファルタ主体のものだから。つまり、イスカは神術を使っていない。」
「お見事、魔力の流れ分かるとは、うちのバカ魔道士と交代してくれないかな。」
エルナの発言に隣りにいたナキが反応する。
「エルナの言う通りだよ。イスカは神術を使っていない、というよりは使えないが正しいけど。」
「イスカは神術者じゃないのか。」
「え?じゃあ今イスカは、剣技だけでファルタに勝っているのか?」
神術者と非神術者の間には基本圧倒的な実力の差がある。生身の人間にできることは限られているのに対して神術者は自身の力を生かした新たな戦闘スタイルを加えることができるのだから。
「見ての通りイスカの剣技は一級品。今のイスカの力の源は、ただ眼の前の人間を殺したいという復讐心のようなものだけなんじゃない?」
「.....止めなくて良いのか?」
「それこそこっちのセリフだよ。私たちはイスカの指示に従うだけだから本人が望んでいるなら好きにさせるだけ。君たちこそ、止めなくていいの?」
「....無理だ、止めたくたってこの戦いに介入したらむしろ逆効果だろ。二次被害になるだけだ。俺達は、あいつを信じてやることしか出来ない。」
眼の前で繰り広げられるハイレベルな戦いに介入する余地などあるはずがなくジェイドたちはただ見守ることしか出来なかった。
「そろそろ限界か、終わりだなファルタ。」
「っ!?やべ。」
イスカの対応に集中しすぎて周りを見れていなかったファルタはいつの間にか本部前にある噴水に背がくっついていた。
「死ね、ファルタ。」
「そこまでだ。戦闘をやめろ。」
イスカが剣をファルタに突き刺そうとしたとき、ファルタが死を覚悟したとき、戦闘に仲裁が入る。魔眼と呼ばれる男の神眼の力によって。




