求めるものと求められるもの
一話約原稿用紙5〜6枚分くらいを目安に書きたい。
「ファルタ君、僕は君に相談があってきたんだ。」
ディーレに連れてこられた路地裏の酒場はファルタたち以外に客はいなかった。
「相談?金なんか持ってねえぞ?」
「そんなモノ別に求めてないよ。僕が君に求めているのはズバリ、強力だよ。」
「協力?なんで俺?別に俺より優秀なやつとかもっといるだろ?」
意味がわからなかった。そもそもファルタのことを知っていることすらおかしいのに無名な自分に真面目な雰囲気で相談持ちかけるとか謎すぎる。もっと優秀なやつは他にいるはずなのに。
「確かに今の君以上の実力を持っている攻略者はたくさんいるよ。君に協力を求めるのは君の兄の話が関係しているらしいんだ。」
「らしい?どういうことだ?」
「実は僕も詳しいことは聞かされていないんだ。僕の上司的な人に言われてやってるだけだから。」
なるほど、しかしファルタは一瞬思考が停止した。なぜここで兄の話が出てくるのか。
「俺の兄についてなにか知っているのか?知っているなら教えてくれ。そうすれば協力してやる。」
「すまないが、僕は君の兄について何も知らない。名前すら聞かされていない。ただ、僕は上のやつを信頼している。だから協力を持ちかけたまでだ。他のことの手助けはできる限りするよ。」
知らないのなら仕方がない。しかし攻略者として未熟で色々足りないファルタにとっては十分な交渉材料だった。
「分かった、それで俺は何をすれば良い?」
「君にしてほしいのはなるべく多くのダンジョン攻略、それも最高難易度であるSランクのダンジョンのね。それとそのダンジョンの報告だよ。」
未発見のダンジョンを除いて、すべてのダンジョンにギルド本部からランクが制定されている。
・Dランク:ある程度の実力があれば難なく攻略可能
・Cランク:十分に準備をすれば攻略可能
・Bランク:多少の苦戦を強いられる、神術者一人以上推奨
・Aランク:攻略に入念な作戦や複数人の神術者が必要となる
・Sランク:攻略不可能、もしくは複数のギルドでの攻略が必要不可欠
Sランクのダンジョンの中には攻略を受注してから戻ってこなかったギルドのあるダンジョンもある。そのこともあり、Sランクのダンジョンには不明な点も多く存在する。
「分かった。なるべく協力してやる。だが攻略しようにも仲間がいねえ。仲間になってくれそうなやつはいないのか?」
「仲間か。わかった、できるだけ探しておこう。ただ団長は君だ。君が気に入ったやつを仲間として引き入れるべくだと僕は思うから、仲間探しはあまり期待しない方がいい。」
「それもそうか、じゃあ武器を頼む。二刀流のやつ。」
「分かった。じゃあ今回は解散するとしよう。またなにかあったら似たような機会を作るとしよう。では。」
ディーレと解散したものの状況が進展したわけではない。
「団員集めどうすっかな〜。」
ファルタが求めている団員は主に
・頭が良くて作戦を立てられるギルドの軸になるやつ
・前線に攻め入って積極的に戦い敵の殲滅を狙うやつ
・魔法や飛び道具など遠距離から前線を指示するやつ
大まかに分けるとこんな感じ。人数も自分を含めて最低限5人はほしい。
「なんかこうすごいいい感じのタイミングに良さそうなやつ出てきてくれないかな〜」
行き詰まってとりあえずギルド本部に戻ってくると中が異様に騒がしかった。
「お前、いい加減にしろよ!頭が良くて剣技もそれなりにできるから入団させてやったけどもう限界だ。うちのギルドから抜けてもらう。」
「俺の作戦についてこれないお前らが悪いんじゃねえか。指示道理に動いていればもっとスムーズに最小限の被害で済んだ。」
「ふざけんじゃねぇ!あんな無茶苦茶な作戦道理に動くとか無理だろ!敵の攻撃受け流したらそのまま次の追撃を避けつつカウンターを仕掛けるとかどんな超人用の作戦だよ!」
どうやら別のギルドが身内で言い争っているらしい。団長らしき人は受付でメンバーの脱退の手続きをしているらしい。
「すみません。ギルド『シンエン』の団員、ジェイドの脱退の申請をお願いします。」
どうやらこの天才君はジェイドというらしい。とはいえ天才故の傲慢さが裏目に出ているようだが。
「俺は別にお前らのギルドから出てくことに後悔はない。むしろお前らみたいな弱い奴らのギルドはすぐに衰退していつか壊滅するだけだろうからな。」
ギルド本部内の人は(お前みたいな傲慢なやつを入れたがるギルドがあるといいな)とでも言いたそうな視線でジェイドを見ていた。ただ一人を除いて。
「へえー、賢いだけじゃなくてそれなりに強いのか。よし、決めた」
そして言い争っているジェイドたちの集団にファルタは迫っていき
「なあお前、ジェイドって言ったか?」
「ん?お前は誰だ?あまり見かけない顔だが。」
「俺はファルタ、『フィンブルヴェト』ってギルドの団長だ。率直にいうとジェイド、俺のギルドに入ってくれ。」
「「「「「は?」」」」」
ジェイドだけじゃない。そこにいたギルド『シンエン』の人のその他の人も数人同じ言葉を同時に発した。
新キャラの軽い補足
ディーレ・スフィリスト
24歳 男
神術 魔眼
ギルド本部のナンバー4
よく見た目が女たらしに見えると言われる。
三度の飯より恋バナ好き