外伝:狂気の主
「団長、次はどこに向かうんだ?」
まだ迷宮が存在していない時代、あるところにとあるギルドがあった。そのギルドの一員であろう巨大な槍を持つ男は団長らしき人物に声を掛ける。
「そうだね、確かリスクイア城下町の下層部の近くに洞窟があるらしい。魔物がいるかも知れないから調査に行ってきてくれないか。ただ、みんなこの前の遺跡の攻略で疲弊していると思うからなるべく少人数で、迅速に頼むよ。」
「了解だ。じゃあフギンとムニン、ついでにローズルを連れて行く。あいつはまだ経験が浅いから強くなってもらわないとな。」
「了解、じゃあ頑張って、オーディン。」
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「ここか。」
2羽の大きなカラスと一人の男を連れたオーディンは先程団長に言われた洞窟にまでやってきた。
「入るぞローズル、中がどうなっているかわからない以上俺からなるべく離れるなよ。」
「はい、でもオーディンは怖いとか思わないんですか?」
「経験の差だ。あまり注意深くいってもしょうがないからな。わからないことをわからないままにしていることが一番の過ちだ。先に進めば答えがわかる。」
「そういうものですか。」
洞窟の中はかなり広くそれなりに魔物も多く対処が地味にめんどくさかった。
「オーディンさん、気をつけてくださいね。足元もおぼつかないですしどこに罠があるかわかりませんから。」
「自然の洞窟に罠があるかよ。でも、確かにここは少し不気味だな。何が起きるかわからないのはいつも同じか。お前も注意深く行け」
オーディンがそんなことを話していたら足場が抜けた。どうやら足元に抜け穴があったようでそこから魔物に引き釣りこまれたらしい。
「っ!?オーディンさん!」
「追うなローズル!別の道から慎重に進め!お前も巻き込まれたら意味がない!」
ローズルはそれを聞いて思いとどまりすぐさま別の道を探しに向かう。
「まずいな、この人数は俺でも厳しいか。」
「此度は良くぞ来た、戦士オーディンよ。」
魔物に連れ去られた先には謎に偉そうな男が玉座のような椅子に座っていた。
「私はレミス、この国の新たな王となる存在だ。」
「王だと?こんな姑息な手を使うやつは王になんてなれないと思うがな。少なくとも俺はお前を倒さないといけないのでな。」
「私を倒すにはまずそこの我の下僕を倒してからでないとな。お前ら、私を守りながらそこのものを殺せ。」
そういうと周りの魔物たちが一斉にオーディンに向かって襲いかかってきた。
「なぜ魔物が人間に従っている?」
「私の力さ、私の力は自分よりも力の弱いものを自身の下僕とする《支配》、お前はここで死ぬか、我の下僕として生きるかの二択しか残されていないのさ。」
「なるほど、数が多いな。だが、所詮はただの魔物、俺を殺すにはもう少し工夫してほうが良いぞ。」
「誰がこれしか手がないと言った?当然これだけで終わるわけがないだろう。」
そういうとレミスの背後から数人人影が現れる。そこにいたのは決して戦闘慣れしていないであろう国民の姿であった。
「君はギルドの一員として私を倒すと同時に国民を守らなければいけない、ならば国民を人質に取れば話が早い。貴様はここにいる国民を倒すことが出来ないが、どうするつもりだ?」
そして操られている国民は武器を構えオーディンに向かって襲いかかる。
「なるほどな、支配による人質か。確かにこれは厳しいな....」
襲いかかってくる国民たちにオーディンは攻撃することが出来ず一方的な攻撃を受けてしまう。
「どうした?早く言えよ、私の下部になると!」
無抵抗なオーディンの体は少しずつ傷が増えていく。しかし決してレミスに従おうとはせず攻撃を受け続けている。
そうして限界を迎えたオーディンはその場に倒れ込む。
「....ちっ!なんだよ、折角良いコマが手に入ると思ったんだがな。まあ良い、どうせ私に負けたんだ、起きたところで支配を行えばいいだけの話、今はもうひとりを」
「勝手にどこへ行くつもりだ?」
レミスがローズルのところへ向かおうとするとオーディンが再び起き上がる。
「何だ、まだ生きてたんだ?でもすでに私に負けた貴様は私の下僕になる外ないんだよ。さあ、オーディン、貴様は私の下僕だ。」
レミスが支配の能力を使いオーディンを操ろうとする。しかしオーディンは決して支配されようとしない。
「....なぜだ!?なぜ貴様は私の下僕にならない!」
「何言っている、お前よりも弱いやつが支配の対象だろ。俺は別にお前には負けてないからな。俺はお前に負けたんじゃない、お前が操った国民たちにやられただけだ。お前の能力は強いが、他人の力ばかり頼って自分は何もしない王は、そのうち全てに裏切られるぞ。」
「クソ、クソがーーーーー!お前こそもう満身創痍じゃねえか!このまま殺してやるさ!」
怒りの表情で突っ込んでくるレミス、それに対してオーディンは冷静に対処する。
「感情に左右されるやつは嫌いだな。死ぬのはお前だ雑魚。」
オーディンは背負っていた槍を抜き全力で突きを行いレミスにぎりぎり当たらないところで寸止めする。
「カっ...」
「お前が支配者?何を言ってる、貴様のような雑魚が支配者になれるはずがないだろう。貴様のような雑魚は支配者でなく、俺に....いや、我に従ってのうのうと生きるが良い。」
オーディンの槍の衝撃で意識を失ったレミスはそのまま国を追放された。
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「オーディンさん!大丈夫ですか....ってなんですかその怪我!?」
「我は大丈夫だ、お前も無事で何よりだ。それよりも、速く団長のところに報告に行くぞ。」
「一人称が変わってる....ってそれよりも先にオーディンさんの怪我を治すのが先ですよ!」
無理をするオーディンであったがローズルがずっと心配してしつこいので仕方なく休むことにした。
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「お疲れ様、オーディン、ローズル。」
「いえ、僕は何もしていないです。オーディンのおかげです。」
「我だけの力ではない。もし自分が何もしていないと思っていても周りはそんなことは思ってないということを理解しておけ。」
「え、オーディン何その一人称!我とか使ってるーぷぷ笑」
団長のもとに報告していると、その部屋に同じギルドの団員の女性が入ってくる。
「何をしに来た?貴様こそ任務を終わらせたんだろうな?」
「当然じゃん、じゃなきゃここにわざわざ来ないでしょ。それに、君よりも数倍強い私が任務遂行出来ないとかあり得ないし。」
その言葉にオーディンは不服に思いつつも否定はせず再び団長の元へ振り返る。
「フノスもお疲れ様。そろそろ食堂で夕食だ、ゆっくり休んでくれ。」
「はい。」
オーディンはそのまま食事を済まして自身の部屋に入る。その後、オーディンは今日の任務の際に自身が考えていたことを振り返る。
(周りに指示してばかりの主は痛い目を見るか。うちの団長も、そのうち誰かの反感を買いそうだな。)
オーディンはそのまま床につき再び任務の日々を送る。
オーディンの外伝みたいな感じに思ってくれればいいです。次話からはまたファルタたちの話に戻ります。




