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世界の終末が望むとき、神々は迷宮を制覇する  作者: 柊ヒイラギ
第二章:戦死者の魂は、狂者を奮わせる
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弱さと強さ

「神物開放《揺れ動くもの(グングニル)》。」


 オーディンの手に握られたグングニルは光り輝き、ファルタたちに矛先を向ける。やり投げの構えを取ったオーディンはファルタたち目掛けて投げようとする。最強の槍の攻撃は極太の光線のように向けられる。


「耐えれば勝ちか、絶対耐えるぞ、全員できる限り回避に専念しろ!」


「これで終わりだ、ファルタ!」


 オーディンの手からグングニルが放たれる。グングニルはファルタたちに向かってまっすぐ飛んでいく。ファルタの元へたどり着いたグングニルは巨大な爆発と音を出しながら着弾し、煙が辺り一帯を覆う。


(どうなった?奴らは生きているのか?)


 しばらくして煙の中に人影が浮かんでくる。


「オーディン、どうやら、俺達の勝ちっぽいな。」


「....まさか、生き残ったのか?我の、グングニルの最後の一撃を。」


「結構やばかったがな。だが、全員の能力を最大限活かせば耐えれると踏んだ。かなりの賭けだったがうまく行った。」


 まずレイシャが予測を利用して大まかな起動を予測、その後ジェイドの構えで攻撃の一部を吸収しエルナの神術で即座に回復、それらを駆使して四人はギリギリで耐えることが出来た。


「あの状況で耐えるとは、やはり貴様らは認めざるを得ない存在だな。だが、貴様らはすでに満身創痍、我は逆襲(リベンジ)の力で最低限の動きは可能な状態、この状態で貴様らは我をどう倒すつもりだ?」


「何言ってんだよ、俺がお前を倒すに決まってんだろ!」


 そう言ってファルタは飛び出す。しかし、ファルタもすでに魔力も体力がほとんど残っていない状態。ここで攻撃を外せば折角の勝機を全て無駄にしてしまう。


「無駄だ!貴様の攻撃なんぞ当たるはずがない!貴様の負けだ、ファルタ!」


 オーディンが勝ちを確信したときオーディンの足に痛みが走る。自身の足元を見るとそこには()()()()が刺さっていた。


(なんだこの矢は?誰が放った?奴らの中からではない。まさか....?)


 矢の打たれた方向を見るとそこには弓を構える光輝の狩猟の姿があった。


(ウルだと!?まさかあの小娘、最初に出したウルをずっと待機させておいたのか?最後のもしもの攻撃に確実性を持たせるために残しておいたのか!)


 エルナの奇策によるウルの一撃によってオーディンの動きが鈍る。


「だが、この程度で我の動きを封じれると」


 再び動き出そうとするオーディンだったが途中で足元の違和感に気づき体勢を崩す。


(今度はなんだ?このあたり一変の床だけ少しへこんでいる...?)


「引っかかったね、さっきボクが君の攻撃を避けながら攻撃していた時に少しでも体勢を崩す可能性をあげるために数回地面を殴ってへこませておいたんだ。うまくいってよかった。」


(あの拳闘士の仕業か。だが、すぐに体勢を立て直せば)


「死神の構え《安楽への誘い》。」


(何!?あの剣士の力か?身動きが....取れない!)


「僅かにだが、余力を残しておいて正解だった。ここまですればいくらお前でも限界だろ。そんじゃ」


(((最後を決めろ、団長!)))


「刻限無法《刻廻(こっかい)》。」


 ファルタの一撃はオーディンの体を大きく切り裂いた。


ーーーーーーーーーー


「切られた....我は、負けたのか。」


 体を切られたオーディンはその場に倒れ込み動かなくなる。呼吸も激しくなり力を失う。


「3人で我の動きを限界まで封じた上で確実性のある強力な一撃、見事だ。やはり貴様らは認めるに値する力を持っているようだな。」


「オーディン、あんたもすげえよ。こんだけの人数差があってあれだけ善戦できるんだからな。正直負けるとも普通に思ってたしな。」


「だが、結果的に勝ったのはお前たちだ。そしてファルタ、優秀な仲間を導いた貴様の力があってこその勝利だ。やはり、やつの血筋を引いているだけあるな。」


 その言葉を聞いてファルタはオーディンに問いかける。


「....なあオーディン、あんたに聞きたいことがある。俺の兄についてなにか知っていることはあるか?」


「やはりその話か。正直に言えば、知っていることは幾つかあるが伝えられることはあまりないな。」


「は?どういうことだよ。」


「理由も言うことは出来ないが、強いて言うならお前のためだな。だが、俺はやつが今いる場所を知っている。」


 ファルタはオーディンの発言に意識を奪われる。


「兄の場所を知っているのか!?どこにいる!?生きているのか!?」


「落ち着け、場所を知っていると言っても具体的な場所は知らないがな。貴様の兄は、この世界の何処かの迷宮(ダンジョン)にいる。だが、生きているかは知らないし無事なのかも知らん。だが、おそらく今のお前にやつに会うだけの実力はないだろうな。」


「それは、俺が弱いってことか?」


 ファルタの言葉に同意するようにオーディンは頷く。


「貴様の力は認める。だが、今現在の実力ではおそらく道中でつまずくだろうな。そのうちこちら側に来るかもしれんぞ。」


 冗談を交えながら話す辺り重い雰囲気を漂わせておきながら実際はユーモアのある者なのかもしれない。警告を行ったオーディンは限界が近いのか体から生気がなくなっていく。


「そろそろ限界が近いな。ファルタ、我が貴様に言うことがあるとすれば、おそらく今後我のように貴様を執拗に狙う者がでてくるであろう。我に打ち勝ったのだ、兄に会うだけの力を身に着けるのだな。」


「....あぁ、ありがとなオーディン。少しでも兄について知れただけ十分だ。今後も死なないように頑張るさ。」


 オーディンはその言葉を聞いて何かに納得したような表情で眠りにつく。


「では...生き残れよ....ファルタ・レイリオ。」


 力尽きたオーディンはその体を光に変えて成仏していった。その後手元には迷宮(ダンジョン)名《ヴァルハラ》の攻略の証が残されていた。


「.....はあああぁぁぁぁぁ、終わったーーーーー!」


 オーディンとの会話を終えたファルタは全身の疲れが一気に爆発してその場に倒れ込む。


「にしても本当に攻略できるとはな。ありがとな、お前ら。」


「ほんと、ボクたちってやっぱすごい奴らが集結したギルドなんだなーって実感したよ。誰か一人でも欠けてたら負けてたね。」


「でも、やっぱ俺達四人での攻略は無茶だったな。今回の戦いで俺は自分の弱さを実感した。もっと強くならねえとな。」


 今回の戦いで各々が自身の弱さと課題点を見つけ出すことが出来た。


「あと、ありがとなエルナ。俺のためにわざわざ武器作ってくれてさ。何か代償にしてたっぽいけど大丈夫か。」


「うん、今の所は大丈夫。その武器もリサナウトまではいかないかもしれないけど十分耐久力はあると思うからそのまま使ってくれていいよ。ただ、私が今回武器の制作に使った代償はあのとき残ってた魔力全てと今持っていた主の力全て、先に出してたウル、フリーン、ヘルモール、ヴェルンドは多少使えたけど神術を解いたらもう使えなくなっちゃった。他の主の力も全部使えないと思う。だからしばらくは低ランクのダンジョンの攻略をして主の力を集め直すよ。」


「そうか、悪いな、余計なことさせちまって。」


「良いよ別に、戦場でそんな事考えてる暇なんてないしね。それに....」


「それに?」


「ううん、なんでもない。」


(それに、何か私の全部が詰まった武器使ってくれるの嬉しいし。.....この考えはキモいな。)


 お互いが戦後の干渉に浸りながら一人ひとり重い腰を上げ始める。


「そんじゃ、帰るか。」


 四人は立ち上がりダンジョンを出てギルド本部へと報告に向かった。



 


 

これにてオーディン戦ことヴァルハラ篇終了です。次話はオーディンの外伝を短めに書いてから書くと思います。

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