永遠の道
「なあ、このままオーディンのところに向かうのもいいけどさ、できればちょっと寄り道しながら向かわないか?」
突然ファルタはそんな発言をした。
「なんでだ?無駄に時間をかけてまでわざわざどこに行くんだ?」
「別に貴重な時間を無駄にする気はねえよ。寄り道したいのにはちゃんと理由がある。まず第一に全員の、主にエルナの体力回復の時間が欲しい。」
「私は大丈夫だよ、このまま進んでも魔力は十分に回復すると思うけど。」
「でも、あくまで回復するのは魔力量だけで身体的疲労と精神的疲労はあんまり回復しないだろ?」
魔力を使用して魔法や神術を使うとき魔力の出力や使い方の工夫にある程度の集中力がいる。ある程度の熟練者なら戦闘中に深く集中しなくとも器用に扱えるようになるがエルナは稀な例外である。
エルナの神術《封神》は呼び出す主が強力であるほど魔力の量や魔力への集中が必要になる。そのためエルナは複数体の主を呼び出すと体に疲れが多く溜まってしまう。基本的に周りに気を配ってあまり疲れている様子をさらさないエルナだが流石に隠しきれなかったらしい。
「気を使ってくれるのはありがたいけど無理をしてほしいわけじゃないからな、それにエルナ以外の二人もある程度は疲労溜まってるだろ?だったら休憩がてら主の部屋をあえて無視するのも悪くないと思う。それに寄り道したい理由はもう一個ある。俺たちが今いるのはどこだ?」
「Aランクダンジョン《ヴァルハラ》....そうか、もしかしたらあるかもしれないのか。」
「そう、高難易度のAランクダンジョンには神物がある可能性がある。このダンジョンがAランクの中でどのくらいの難易度なのかは分からない。けど、もし見つけられたら確実に攻略に役立つ。レイシャはもう持ってるからあんまり意味がないかもしれないけど。」
「いや、仲間が強くなるだけでもボクとしてはありがたいからね。当然協力するよ。」
「なら、二組に別れて行動するか。主の部屋は見つけても基本的には入るなよ。」
そうしてファルタ・エルナ組、ジェイド・レイシャ組に別れて行動することにした。
ーーーーファルタ・エルナ組ーーーー
「まあ神物を探すって言ってもまじで情報ゼロだからそうしようもないんだけどな。」
「....ねえファルタ、さっきの話って全部本心?その....寄り道の理由について。」
「ん?当たり前だろ。実際俺もお前もある程度疲れてるし神物がほしいのもお互い様だろ。別に嘘なんてついてねえよ。」
エルナの発言に疑問を抱くファルタ、実際ファルタの先程の発言に不可解な点はなかったはずだ。何が気になるのかが皆目見当がつかない。
「そう...だよね。じゃあ質問を変える。寄り道をしようとした本当の理由は何?」
エルナの発言を聞いてファルタの動きは止まる。まるで自分の心の中を覗かれているかのような感覚に陥り体に緊張が走る。
「ファルタが嘘をついてないのはわかるよ、でも話してない理由もあるでしょ?私にだけでいいから話してくれない?」
「....お前の洞察力は驚きを超えて怖いよ。まあ、エルナの言う通り俺が寄り道しようとした理由はもう一個別である。」
その一言にエルナは安心と警戒の両方の感情を持つ。
「さっきのフレースヴェルグの胸に変な印があった。その印は俺の兄貴が昔自慢してたシンボルに似てたんだ。確証はないけどもしかしたら兄貴の手がかりがこのダンジョン内にあるかもしれない。これが一番の理由だな。」
「なるほどね、ただ印が似ていただけって可能性は?」
「ないとは言い切れない。ただ、8割ぐらいは同じだと考えてもいいと思う。でも本当に同じかわからない以上無理に協力してほしいなんて思ってない。むしろ元々は一人で探索する予定だったからな、神物探しに集中してくれて全然良いからな。」
「いいよ、じゃあファルタはお兄さんの手がかりを中心に、私は神物を中心に探してなるべくお互いのことも考えながら行こうか。」
お互いの求めるものを協力し合いながら薄暗い通路を進んでいく。周りには魔物の死骸や錆びた武器が無数に落ちている。おそらく先駆者たちの残骸であろう。どれだけ進んでもこれらの死骸がなくなることはない。しかし不自然なことに、このあたりでは部屋どころか分岐点すら見つからない。
「ねえ、この道どこまで続いてるのかな?もう結構歩いたと思うんだけど。」
「確かに....というかここ、さっきも通った気がするな....なんというか....」
まるで、同じ道を何度も繰り返し永遠と進んでいるかのように。
「これ、多分私たち」
「ああ。多分呪い、もしくは何かしらの神術をいつの間にかくらったって考えるのが普通だな。だとするとどこで....?いや、今解決すべきなのはここから出る方法か。」
「呪いだとしたら結構厳しいかもね....私は解呪の術は持ってないし....」
無数に存在する魔法、そして神術者一人ひとりが違う神術を持っているが《呪い》は通常の魔法とは似て非なるものである。呪いは努力で覚えられるものではなく、生まれたときから使えるか否かが定まっている。呪いを使えるものは世界でも一割未満しか存在しない。
呪いはかけられると行動に制限がかけられたり時間経過による効果の発動だったりと様々な種類がありそれらの解呪を行う方法は主に3つ。
1,呪いをかけた者が解呪を行う
2,呪いをかけた者が死ぬ
3,呪いをかけられた者が自身に強力な解呪魔法を行う
1つ目の方法は最も簡単に安全に行える方法である。しかしかけた本人に解呪の意思がなければ行うことができない。2つ目は最も確実性があるため命に関わる呪いの場合は最終手段として用いられる場合がある。3つ目は解呪魔法を使える者が自身や他者の呪いを解くというもの、しかし解呪魔法そのものが習得にかなりの時間が必要であり解呪魔法が使えても強力な呪いは解くことができないためあくまで保険として覚えておくと良いというだけである。
「同じ場所に閉じ込める呪いか?だとすると呪いをかけてるのは誰だ?」
「オーディンがかけてるのが一番最悪なパターンだね。最奥まで行かなきゃ倒せないのに行けないってなるとどうしようもないんだけど。」
「いや、多分その可能性はないな。オーディンは多分何もしてない。というかこれ呪いでもないぞ。」
ファルタの言っていることがいまいち分からないエルナ。
「さっきから妙に視線を感じてたんだけど、これ多分どっかで俺たちを見ながら魔法をかけてる術者がいる。しかもご丁寧に簡単に気づかれないよう魔力探知の妨害魔法まで使ってるっぽいな。」
「なるほどね、となると一応突破はできるわけだ。だとすると術者を見つけるかあっちの魔力がなくなるのを待つかの二択になるわけだけど。」
「こんだけ器用に魔法を扱ってきてなおかつ魔力探知が一切途切れてないとなると、魔力切れを待つのは現実的じゃないな。こうなりゃ手当たり次第で探すとするか。」
ーーーージェイド・レイシャ組ーーーー
「なあレイシャ。」
「いいよジェイド、多分同じこと思ってる。」
二人は息を吸い同時に言う。
「「絶対同じ場所通ってる。」」
ジェイドとレイシャもファルタ・エルナと同様に同じ場所を何度も通っていた。ファルタたちよりも早い段階で魔法をかけられていることに気づいたがお互いに解呪方法を持ち合わせてはいなかった。
(どうするか....術者を倒すのが理想だが俺らじゃ探すの厳しいしな....でもそれしかないか)
「レイシャ、どこか周りに怪しいとこ」
「これ横に穴開ければ出られるんじゃない?」
レイシャが唐突にわけのわからないことを言い出した。このダンジョンの壁が何でできているかは分からないが少なくとも簡単に開けられるほど脆くはないだろう。
「一応壁を叩いた感じ音が反射してるから隣に部屋か道があるのは確かだが....いくらなんでも壁を破るのは無理があるんじゃ...」
「合剛拳力《一点拳》!」
レイシャが勢いよく壁を殴るといとも簡単に壁に穴が空いた。
「お、ここ通れば無限の道からも出られそうだね!よし行こう。」
「....まじでお前の筋力どうなってんの?」
レイシャのふざけた威力の拳に唖然とするジェイドだが、一応解決したのでまあ良しとする。レイシャの開けた穴から勢いよく飛び出す二人、すると二人は宙に浮いていた。それもそのはず、穴の先には床などなく穴しかなかったのだから。
「「あ。」」
二人は当然真下に落ちていく。運がいいことに床はそう低いとこにはなく着地できる程度の高さであった。
「っと、あっぶねー。ここどこだ?かなり広い部屋だが...」
安全に着地して周りを見渡すジェイド、するとそこには一つの人影があった。
「っ!?ジェイド、今すぐ剣を構えて。多分、いる。」
言われてジェイドも状況を理解した。目の前には巨大な槍をもった男が立っていた。
「ハハ、まじかよ...主さんのお出ましってわけか...」
びっくりするほどサボりました。体調不良と私用が重なりすぎた。今後はペースを守っていきたい。




