あきらめなければきっと救いがある
前回のあらすじ
何か強敵が襲来
「『混合迷宮』?要するに2つのダンジョンが合体したってことか?」
「そうだ、おそらく攻略者が急に現れなくなったのはあそこのヘビが主として新しく現れたからだろうな。アイツの名前は......ダンジョン名『フヴェルゲルミルの泉』、主は『ニーズヘッグ』か。道中の魔物や攻略者がゼロってとこからダンジョンのランクはAランク、最悪Sランクの可能性もあるな。」
「マジ?それ俺等だけで戦っていい相手じゃないだろ。少なくともあと他のギルドと協力しなきゃ普通勝ち目がないってことだろ?」
Aランクダンジョンは基本的に複数のギルドでの攻略が必須条件とも言える難易度であり、わずか四人のギルドで勝つのはほぼ不可能と言えるだろう。
「このまま一旦引き下がって他のギルドが協力に来てくれるのを待つのが妥当じゃない?」
「たしかにそれもありだろうな。だが、アイツを倒せるほどの力を持ったギルドがちょうどよく現れると思うか?Aランクに勝てる奴らはCランクのダンジョンにわざわざ来ないだろうな。更に言えば混合迷宮であることを知っているのは現状俺たちだけだ。助けが来る可能性はほぼゼロだ。」
助けが来るのを待つか、潔く戦って負けて死ぬのか。ファルタは考える、自分が選ぶべき選択を。
「どうするよ、団長さんよ。」
「......決まってるだろ、当然、戦って勝って攻略するだけだ!」
「言うと思ったよ。安心しろ、俺たち全員とっくに覚悟できてるからよ。」
選ぶのは3つ目の選択肢、ニーズヘッグと戦い、勝って生き残ること。
「これより我ら『フィンブルヴェト』、ダンジョンの主『ニーズヘッグの討伐を開始する!」
「「「了解!」」」
ファルタたちとニーズヘッグ、お互いに様子を見ていたが、最初に行動したのはエルナだった。
「封神無法、『気高く美しい者』。」
メイリの力は味方の意識や感情を鼓舞することで潜在能力の一部を引き出すことができる。メイリによってファルタたちの動きが俊敏になっていく。
「行くぞジェイド、レイシャ!爆進無法、『紫電一閃』!」
「死神の構え、『地獄鎌』。」
「神物開放、予測無法、『天翔ける拳』!」
3人の一斉攻撃。一点を狙ったファルタの一撃、敵の動きを確実にとらえるジェイドの構え、ほぼ全方位から迫るレイシャの拳、隙はないと言ってもいい。ファルタの一撃がすぐそこまで迫った所でニーズヘッグは奇声をあげた。
「アアア゙ア゙ァァァア゙アアァ!」
「「「「っ!?」」」」
ニーズヘッグの奇声に全員がおののく。そして次の瞬間、ファルタたちはナニか、切断を受けて吹き飛んだ。
(何だ今の?あんだけ隙のない攻撃のどこに攻撃される隙があった?というかアイツに動きそのものがなかった。もし動いていたとしてもジェイドが見切っていたはず。)
隙のない攻撃に攻撃を与える。ニーズヘッグのは動かずに。それを可能にするのは外部からの援護、もしくは......
「ファルタ、アイツの神術が分かった。」
「まじか、というかヘビも神術使うんだな。で、アイツの神術は?」
「あいつはさっき俺たちにノーモーションで攻撃を行った。そんでもっておそらく俺たちを襲ったものはこの部屋のそこら中に落ちてるものだ。」
「何言ってるのジェイド、周りになんか何も落ちてないじゃん。」
「いや.......まさか!?」
周囲の床に落ちているのは戦闘の際の瓦礫、錆びた武器、そして......乾いた赤黒い血痕。
「ああ、あいつはそこら中にこびりついてる攻略者の血を操ってる。多分いま俺たちが出血したやつもすぐあいつに所有権が行くだろうな。」
ニーズヘッグの神術は自信の半径1km以内の生物の血液を自由自在に操る『血操』、大昔に人間に迫害されたことで人に対する憎悪と恐怖が神術となって発現した。そしてニーズヘッグはこう言われた。
『怒りに燃えてうずくまる者』と。
「どうする、あんな攻撃どうやっても躱せないぞ。どこから来るかわかんねえ無差別攻撃にどうやって対処しろってんだよ。」
「ファルタ落ち着いて、私が3人の速度を更に上げる。だから相手の攻撃躱すぐらいには全力で動きながら攻めて。」
「分かった。お前らもそれでいいな?」
ジェイドとレイシャがそれに同意して再び構え直す。
「封神無法『応えるもの』。」
「爆進無法『神速乱切り』!」
「死神の構え『地獄突き』。」
「予測無法『無限の手』!」
四人の合わせ技はニーズヘッグに迫る。先程よりも高速で動く四人には動く血液も当たらない。
(これなら、当たる!)
そして攻撃は見事命中した。ニーズヘッグの体に大きな傷をつけて後退する。高火力の合せ技を当てればさすがのニーズヘッグも討伐される.......はずだった。
「アアアァア゙ァァァア゙アアァ!」(朽チ果テロ)
その奇声を聞いたとき、全員の動きが止まった。なんの能力でもない、ただ四人がその声に恐怖して生存本能が動くことをやめたのである。
(血操無法『ラスト・オブ・ドラゴン』)
ニーズホッグより放たれた咆哮と攻撃はファルタたちに向けて放たれる。しかしファルタたちは恐怖で動けない。ファルタたちに光線のような咆哮が直撃した。
(何だよ今の......避けようがねえじゃねえか。でも乱発されなければいつかは...........は?)
ニーズヘッグの体には確かに致命傷を与えた。しかしその体はすでに傷一つなくなっている。
ニーズヘッグの血を操る神術、誰もが恐れおののく咆哮、そして驚異的な再生能力、これらを兼ね備えたものに打ち勝つには敵の急所に的確に、迅速に、とんでもない威力の攻撃を与えなければならない。
(こりゃまじでやばいな、下手したら全滅だ。ジェイドたちも攻撃もろにくらって動けなさそうだし。となると勝つには俺がソロで攻略しなけりゃいけないってことか。)
ニーズヘッグにソロで打ち勝つ、それが簡単でないことはファルタ自身も良く分かっている。しかしそんなことを考えている暇はない、ならばここで全力の一撃を与えるまでだと。
(あんまり、これは使いたくないんだよな......アイツらが俺に不信感を抱かないことを願うしかないか...)
ファルタは構える、今までとは似て非なる構えで。
「刻限無法、『エイ」
「我が身を望む死の刃よ、獲物の命を絶え裁け、神物開放《選ばれしもの》。」
ファルタが神術を放とうとした寸前、誰かがニーズヘッグに向けて飛び出した。フードを被っており、その手には巨大な鎌が握られている。
「悪いけど、あなたのせいで迷惑してるの。」
声色的女性だろうか。ニーズヘッグにそう言うと謎の人物は巨大な鎌をニーズヘッグに思いっきり振るう。するとニーズヘッグは一撃で飛んでいき倒れた。
(何が起きたんだ?手も足も出なかったニーズヘッグをたった一撃で倒しやがった。それに今神物とか言ったか?レーヴァテインなんて神物はまだ発見されてないはず。)
目の前で起きた状況に理解が追いつかないファルタは問いかける。
「なあ、あんた誰だ?助けてくれたってことは敵じゃないんだろ?あいつを一撃で倒すとかどうやってやったんだ?」
「......別に、私はこのダンジョンを早く攻略したかっただけ、ついでにあなたが助かったなら運が良かったと思えばいい。」
そう言うと彼女は辺りをある程度探索したあと攻略の証だけもらって立ち去ろうとする。
「......ぐっ、痛え、何があった?そうだ、ファルタは?」
するとジェイドが目を覚ましていた。傷こそあるが命に別条はないなさそうだった。
「俺は大丈夫だ、お前こそ無理するなよ。ニーズヘッグはそこの人が倒してくれた。後でお前も感謝しとけよ。」
「......討伐してくれたこと感謝する。でも一体どうやって......ておい!あんたまさか.....死神か?」
「死神?」
「ファルタ知らないのか?攻略者がなかなか現れないダンジョンに忽然と現れて主を討伐して帰る、死神みたいな鎌持ってるからついたそのまま死神って呼ばれてるんだ。その素顔は誰も知らないから普段どこで何をしているのか分かっていない存在だ。」
ジェイドが一生懸命に説明していると、その死神と呼ばれた攻略者はいつの間にかいなくなってた。
「素性不明ね......でもなんか俺、あの声聞いたことある気がすんだよな。」




